勅使川原三郎(演出)×鈴木優人(指揮) 新国立劇場公演 バロック・オペラ『オルフェオとエウリディーチェ』開幕

地上に戻るまで決して振り向いてはならないとの条件のもと、亡くなった妻を連れ戻しに詩人オルフェウスが冥界へ降りて行く、ギリシャ神話のオルフェウス伝説をもとにした、グルックの代表作。
バロック・オペラの中でも上演頻度の高い人気作を、深い美意識で世界に名を馳せる舞踊家勅使川原三郎の演出、新時代のバロック奏者、指揮者として八面六臂の活躍を見せる鈴木優人の指揮で新制作。
オルフェオ役は、「カウンターテナーの王者」と評され、艶やかな声を武器に世界各地を飛び回るローレンス・ザッゾ。エウリディーチェ にドイツで活躍するソプラノのヴァルダ・ウィルソン、愛の神アモーレに軽やかな美声と演技で魅了するソプラノ三宅理恵が出演する ほか、アレクサンドル・リアブコ、佐東利穂子ら勅使川原の信頼厚い選りすぐりのダンサーが出演。

大野和士芸術監督のラインアップの大きな柱、バロック・オペラから、音楽と演劇の融合を目指した“オペラの改革者”グルックの代表作『オルフェオとエウリディーチェ』、グルックは多くの作曲家が取り上げているギリシャ神話のオルフェウス伝説を題材に、バロック・オペラに特徴的な歌手の技巧を顕示するための装飾を抑え、オーケストラの役割を充実させて、劇的緊張に富んだオペラを完成させ、その演劇的な面白さにより、バロック・オペラの中でも群を抜いて今日の上演頻度の高い人気作に。
バロック・オペラのシリーズは第1弾として 2020年4月に上演を予定していた『ジュリオ・チェーザレ』が惜しくも公演中止となったため、本作品が初の公演実現。
演出・振付・美術・衣裳・照明は、深い美意識で世界中にその名を轟かす振付家・ダンサー・演出家の勅使川原三郎。指揮は新時代のバロック奏者として、そして指揮者としてもプロデューサーとしてもマルチに活躍する鈴木優人が新国立劇場の指揮台へ初めて立つことに。

舞台上の美術、シンプルで象徴的なしつらえ。中央に丸い舞台、コーラス。丸い舞台の中央、エウリディーチェの墓前でオルフェオが悲しみの歌を。第1幕は、簡単に言えば「この世」。オルフェオが嘆いていると、そこへ愛の神アモーレが現れる。オルフェオは妻を取り戻すために「あの世」に向かうのだが、選りすぐりのダンサー、しなやかでゆっくりと踊る。花は百合。ポスタービジュアルにも使われているが、百合全般の花言葉は「純粋」「無垢」「威厳」。この百合の花が様々に変化して舞台を彩っている。アモーレはオルフェオに「オルフェオの歌で地獄の番人を慰めること」「地上に連れ戻すまでは決して彼女の顔を見てはならない、振り返れば彼女は永遠に失われる」と。

そして2幕は舞台は一転してダークに。「あの世」、洞窟、得意の歌、オルフェオは古代ギリシャの吟遊詩人、どんな心も揺さぶる力を持っているという。復讐の女神たちの心を動かして黄泉への道が。明るくなり、楽園に。第2幕第2場の「精霊の踊り」の間奏曲は特に有名なメロディー、大勢のダンサーは出てこないが、超絶技巧のダンサーのアートなダンスは見どころ。そして3幕へとつながっていく。

とにかく、ローレンス・ザッゾの歌声、「カウンターテナーの王者」と言われるだけあって、歌だけでも十分に心揺さぶられる。そこへ、ダンサー陣の卓越したダンス、バレエ、コンテンポラリー、独創的でファンタジックなダンスが一際目を引く。そして舞台美術、百合の花が照明によって刻々と変化するところは見どころ。また、丸い舞台も変わっていく。3幕では照明で黒い影と光、コントラストが美しい場面があり、百合の花も黄金色になったり。3幕のローレンス・ザッゾとヴァルダ・ウィルソン、カウンターテナー、ソプラノ、この二重唱は聴き惚れてしまう。

そしてオルフェオとエウリディーチェの距離感、エウリディーチェが近づくと、はっとして離れるオルフェオ、苦悩しながら、距離をとるが、それを「冷たい」「つれない」と感じてしまうエウリディーチェ、丸い舞台の上で歌いながらの演技、時には背中あわせになったり。自分を見てくれない夫・オルフェオに対して疑心暗鬼になる、それを察して心苦しいオルフェオ、思わず見てしまい、崩れ落ちるエウリディーチェ。この場面で歌われるのが、オペラの歴史の中でも有名なアリア。脈をとっても脈がない彼女、今度こそ本当に失われてしまったエウリディーチェ。この哀しみに満ちた場面のアリア「エウリディーチェを失って」、ラスト近くのクライマックス、豊かでドラマチョックな歌唱。

元のギリシャ神話では、この後オルフェオには過酷な運命が待ち受けていたが、当時のオペラのお約束は”ハッピーエンド”。悲しみのあまりオルフェオが自殺しようとしたところに愛の神がふたたび登場、エウリディーチェを甦らせる、2人の喜びの歌、ここではダンスはもちろん、新国立劇場合唱団の歌声で終幕。シンプルな物語なので、オペラ初心者にも十分、楽しめる演目。勅使川原三郎らしいステージング、そして鈴木優人指揮、贅沢な時間を過ごしてみては。

<「オルフェオとエウリディーチェ」あらすじ>
【第1幕】亡き妻エウリディーチェの墓前で、何とか生き返らせようと祈りを捧げるオルフェオの前に、愛の神アモーレが現れる。アモー レはエウリディーチェの復活の可能性を示唆し、全能の神ゼウスの命令として、「オルフェオの歌で地獄の番人を慰めること」「地上に連れ戻すまでは決して彼女の顔を見てはならない、振り返れば彼女は永遠に失われる」と伝える。
【第2幕】冥界の入口には死霊や復讐の女神が待っている。オルフェオは歌で復讐の女神を慰める。エリゼの園で妖精たちと歌っているエウリディーチェを発見したオルフェオは妻の手を取り、彼女を観ないようにして地上へ向かう。
【第3幕】地上へ向かう暗い途上で、エウリディーチェは夫が自分を見ようとしないことに不安を募らせる。「なぜ私を見ないのか」と詰問する妻とゼウスの命令との間で煩悶するオルフェオは、ついに振り返って妻を見てしまう。その瞬間エウリディーチェは絶命する。絶望したオルフェオが自ら命を絶とうとするとアモーレが現れ、「真の愛が示された」とエウリディーチェに命を吹き込む。オルフェオとエウリディーチェは神に感謝する。

概要
日程・会場:2022年5月19日(木)19:00/21日(土)14:00/22日(日)14:00   新国立劇場 オペラパレス
前売開始:2022年4月16日(土)
指揮:鈴木優人
演出・振付・美術・衣裳・照明:勅使川原三郎
アーティスティック・コラボレーター:佐東利穂子
舞台監督:髙橋尚史
エウリディーチェ:ヴァルダ・ウィルソン
オルフェオ:ローレンス・ザッゾ
アモーレ:三宅理恵
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
芸術監督:大野和士
公式HP:https://www.nntt.jac.go.jp/opera/orfeo-ed-euridice/
撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場