ドビュッシーの傑作『ペレアス とメリザンド』開幕 メリザンドがみる夢、幻想、幻。

大野和士芸術監督4年目の2021/2022 シーズンの締めくくりに、大野の注力するフランス・オペラからドビュッシーの傑作『ペレアスとメリザンド』が登場。
ドビュッシー唯一のオペラ『ペレアスとメリザンド』は、閉鎖的な城の愛憎の日々の物語が、神秘的、象徴的に、緊張感のうちに綴られるフランス印象主義の傑作。エクサンプロヴァンス音楽祭で初演され、極めて今日的な演出と世界的話題となった、英国の鬼才ケイティ・ミッチェル。演劇大国イギリスで演劇、オペラの演出で活躍し、独自の感性と論理がもたらすリアリティが高く評価される演出家。ミッチェルの『ペレアスとメリザンド』は、近年最も尖ったオペラが上演されることで注目されるエクサンプロヴァンス音楽祭で2016年に初演。
このプロダクションでは、中世の架空の城を舞台とした象徴的な物語が、ある一家へやって来た女性の密室の夢想となって、現代的なドラマに。ミッチェルは原作の象徴的なイメージを活かした神秘的な空気を基調としながら、現代的な女性観とリアリズムに基づく鮮やかな解釈を提示する。
大野和士芸術監督自らが指揮する『ペレアスとメリザンド』には、新世代を代表するテノール、ベルナール・リヒター、フランス音楽の旗手として活躍し、世界中でメリザンドを歌っているカレン・ヴルシュ、パリ・オペラ座やメトロポリタン歌劇場、英国ロイヤルオペラで活躍するバリトン、ロラン・ナウリら、『ペレアスとメリザンド』の世界随一の歌い手であり、大野と共演を重ねる信頼厚い歌手たちが世界から集結。浜田理恵、妻屋秀和らの日本人歌手も大野和士自信のキャスティング。今望みうる世界最高の布陣による『ペレアスとメリザンド』は、音楽ファン必聴の公演。

セットは現代的でリビングのような空間、また、プールサイドのような場面、そして象徴的かつ不思議な雰囲気を醸し出す螺旋階段。元々は中世の架空の王国の城が舞台だが、ここではある一家へやって来た女性メリザンドの夢想という形をとった現代的なドラマになっている。よって服装もスーツやシャツなど現代的。この物語のヒロイン・メリザンド、どこからやってきたのか、不思議な存在、ここではメリザンドの分身が登場するが、メリザンドをどこか客観的に眺めている節もあり、この存在が興味深い。通常、オペラ作品は、原作が戯曲でも、ある程度オペラ様に台本改訂をするものですが、この「ペレアスとメリザンド」は、メーテルリングの原作にほぼ忠実。それでいて、現代的なドラマに仕立てており、また、螺旋階段が登場するシーン、妖しくもあり、幻想的。

語るような流れ、リアルな場面も。物語の中心となるのはペレアス・メリザンド・ゴローの三角関係、また第3幕で指輪を井戸に落とすのだが、ここではプールサイドのような場所になっている。場面転換は”横移動”でスムーズ。 ライトモチーフを多用し、象徴的な表現に寄り添うような演出。貴重な公演、7月2日より。

<「ペレアスとメリザンド」あらすじ>
【第1幕】狩の途中で道に迷ったゴローは、水辺で泣く女性メリザンドを見つけ連れて帰る。半年後、ゴローは異父弟ペレアスへ、祖父 の老王アルケルから結婚の許しを得て欲しいという手紙を送る。王はゴローの新しい妻を迎え入れることとする。城にやって来たメリザンドとペレアスが出会い、二人は彼女の乗ってきた船が去る光景を見つめ言葉を交わす。 ペレアスは庭園の「盲人の泉」にメリザンドを誘い、その力について語る。メリザンドはゴローからの結婚指輪を泉に落としてしまう。その瞬間、ゴローは森で落馬し深手を負っていた。居室で夫を介抱するうち、メリザンドはこの 城では心が休まらないと訴える。その時妻の手に指輪がないと気付いたゴローに激しく追及され、メリザンドはゴ ローの息子イニョルドに貝を拾っているうち失くしたと嘘をつく。ゴローの命令で、メリザンドはペレアスを伴い、恐怖に震えながら海辺の洞窟へ赴く。 月光の晩、寝室でメリザンドが髪を梳くと、通りかかったペレアスはその長い髪に陶然となる。そこへゴローが来て、二人の振る舞いを責める。翌日、ゴローはペレアスを地下に連れて行き、身重のメリザンドを刺激しないよう 言い渡す。ゴローはイニョルドに、ペレアスとメリザンドの様子について詰問し、母の寝室を覗くよう強要する。

【第2幕】アルケルとメリザンドが語る部屋へ、嫉妬心に駆られたゴローが来て、妻の髪を掴んで引き倒す。夜、いよいよ旅立つというペレアスに請われ、メリザンドは泉に赴く。月光の下で二人はついに愛を告白し、口づけを交わす。そこへゴローが現れ、ペレアスは殺される。 逃げ延びたメリザンドは女の子を産み落とし、死の床にあった。ゴローは妻に許しを請い ながらも、弟との関係を執拗に問い始める。メリザンドから真実が語られることはない。アルケルがゴローを制し、赤子をメリザンドに抱かせようと渡す。メリザンドが息を引き取り、 皆取り残される。

概要
【公演日程】 2022年7月2日(土)14:00/6日(水)18:30/9日(土)14:00/13日(水)14:00/17日(日)14:00
【会場】新国立劇場 オペラパレス
指揮:大野和士
演出:ケイティ・ミッチェル
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
芸術監督:大野和士
共同制作:エクサンプロヴァンス音楽祭、ポーランド国立歌劇場
公演情報WEBサイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/pelleas-melisande/
舞台撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場