2020年2月、シリーズ第35弾として上演された『ヘンリー八世』は、 世界的な大流行となった新型コロナウィルス感染症の感染拡大の余波を受け、 終盤の公演が中止となった。 2年半の時を経て、 再演を誓ったキャスト・スタッフがふたたび集結した。
本作では、 華やかな英国王宮を舞台に王をめぐるスキャンダルと、 その裏に交錯する欲望と謀略、 熾烈な地位争いが描かれる。
初演を踏まえ、 ただの再演ではなく深化した新たな『ヘンリー八世』。 演出の吉田鋼太郎は繊細に深く人間関係を描き、 濃密な人間ドラマに磨きをかける。 吉田は「相手の台詞を受けて返す」という芝居の基本を改めて見直し、 キャラクターの個性が際立つ新たな表現に挑んだ。 歴史劇ながら現代社会にも読み替えられる人間模様は見応え満載だ。
初演時の客席をふんだんに使った演出は感染対策の一環として変更せざるをえなくなったが、 舞台の上を巧みに使い観客を物語へ誘う。 特に物語の終盤の演出は圧巻だ。 演出だけでなくセットや音楽、 振付など随所に新たな変更が見られる。
「英国王室史上、 最もスキャンダラスな王」と言われるヘンリー八世を演じるのは阿部 寛。 圧倒的な存在感で最強の王として君臨する。 今回は厳しく鋭い眼差しの最強かつ最凶の王の姿と、 一方で苦悩や孤独も抱く姿を、 力強く綿密に演じる。 目覚ましい活躍をみせる金子大地が演じるのは王の信頼厚き大司教トマス・クランマー。 初演が初舞台だった金子が、 聖職者として人々に語りかける言葉を、 一言一言丁寧にまっすぐ伝える。 期せずしてチャールズ3世国王の議会演説やロイヤル・シェイクスピア・カンパニーのエリザベス2世への追悼文でも引用されたクランマーの台詞は今の時代だからこそより観る者の心に響く。 そして宮本裕子、 山谷花純、 谷田歩、 河内大和など個性豊かな実力派キャストが作品に彩りを添え、 深く緊迫した人間関係と思わず笑ってしまうシーンなど芝居に緩急をつけ、 より作品を楽しませる。
コメント
演出・枢機卿ウルジー:吉田鋼太郎
無事に初日が開きました。 2年前に新型コロナウィルス感染症の感染拡大で中止になった『ヘンリー八世』。 2年半準備をして新しいものに生まれ変わっております。 前回よりも更にパワフルになり繊細になり深くなった阿部 寛ヘンリー王。 それに伴い周りを固める俳優たちも前回よりも重みと深さを増しております。 そして先日エリザベス二世女王が崩御されましたがこの芝居のラストシーンはエリザベス一世が誕生するところで終わりとなります。 そういうところも含めまして、 今観ると色々な考えや思い、 コロナ禍や戦争が起きている今の世の中に対しての皆様のいろいろな気持ちを反映する芝居になっているのではないかと思います。 いずれにせよ、 シェイクスピアはエンターテイメント。 どなたがご覧になっても大変楽しめる作品になっていると思います。 是非劇場にお越しください。ヘンリー八世:阿部 寛
2年半前に新型コロナウィルス感染症で中断になった思いも込めて、 さらに素晴らしいものにしようと鋼太郎さんを中心に全員でより深い稽古に励んできました。
磨きのかかった『ヘンリー八世』をぜひ楽しみにしてください。
トマス・クランマー:金子大地
初演は僕自身初舞台で鋼太郎さんに舞台という扉を開けていただいたとても大切な思い入れのある作品でだったので、 中止となってしまい、 忘れられない初舞台となりました。
こうやってまた皆さんと集まって2年半越しにヘンリー八世が上演できることがすごく幸せです。 前回ご覧になった方もご覧になっていない方もグレードアップした『ヘンリー八世』を楽しんでいただきたいです。 期待して観にいらしてください。
あらすじ
舞台は16世紀の英国王宮。 ヘンリー八世 ( 阿部 寛) の寵愛を受け、 出世のために策略をめぐらす高慢な枢機卿ウルジーは王侯貴族たちの非難の的になっている。 ある晩、 ウルジーが催す晩餐会で王は王妃キャサリンに仕える女官アン・ブリンに心を奪われる。 王は王妃との結婚を無効にしようと離婚裁判を起こすが、 宗教や複雑な国際問題が絡み、 歴史的な問題へと展開していく——
概要
彩の国シェイクスピア・シリーズ『ヘンリー八世』
期間会場:
埼玉:2022年9月16日(金)~9月25日(日) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
愛知:2022年9月30日(金)~10月2日(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール
大阪:2022年10月6日(木)~9日(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
北九州:2022年10月14日(金)~16日(日) 北九州芸術劇場 大ホール
宮城:2022年10月22日(土)~24日(月) 名取市文化会館
スタッフ:
演出・彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督 吉田鋼太郎
作 W.シェイクスピア
翻訳 松岡和子
美術 秋山光洋
照明 原田保
音響 角張正雄
衣裳 西原梨恵
ヘアメイク 佐藤裕子
音楽 サミエル
振付 前田清実
演出助手 市村直孝 井上尊晶
舞台監督 小林清隆
キャスト
ヘンリー八世:阿部 寛
枢機卿ウルジー:吉田鋼太郎
トマス・クランマー:金子大地
キャサリン:宮本裕子
アン・ブリン:山谷花純
バッキンガム公爵:谷田 歩
ノーフォーク公爵:河内大和
大石継太 間宮啓行 廣田高志 工藤俊作 櫻井章喜 塚本幸男 飯田邦博 二反田雅澄
杉本凌士 水口テツ 佐々木誠 松本こうせい 大河原啓介 鈴木彰紀 齋藤慎平 松尾竜兵
石井 咲 古庄美和 山田美波 坂田周子 沢海陽子 悠木つかさ
演奏:サミエル
上演時間:1幕90分、 休憩15分、 2幕95分、計約3時間20分
当日券情報
埼玉公演は当日の開演1時間30分前まで下記にて販売。劇場窓口での当日券販売なし。https://www.saf.or.jp/arthall/information/detail/95348/
公式HP= https://horipro-stage.jp/stage/henry82022/
撮影:渡部孝弘