シェイクスピアの名作「ロミオとジュリエット」をエネルギーあふれる現代の才能を結集させ新たな舞台「ロミオ&ジュリエット」として上演。ピュアな恋人たちのロマンス、若者たちのやり場の ない情熱や葛藤を、芝居とダンスを融合 させた芸術性豊かなムーブメントで現代的、かつ幻想的に魅せる。
ロミオ役には、ダンス&ボーカルグループ THE RAMPAGEのパフォーマー長谷川慎。近年、俳優としての活躍もめざましく、高い身体能力と繊細な演技を武器に新時代のロミオへと挑む。ジュリエット役は、ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』のヒロイン・マリア役も記憶に新しい、北乃きい。まっすぐで清らかなジュリエットに期待。
演出は、シェイクスピアを生んだ英国からアレクサンドラ・ラター。『もののけ姫』の舞台化は、ロンドンと東京での上演で高い評価を得た。
フードを目深に被った集団が登場、不穏な出来事が起こりそうな旋律。物語の設定を語る集団、2つの名家、争っている。そして登場人物の紹介、文字が映し出される。この街、ヴェローナを支配するエスカラス(松村雄基)はこの両家が争っていることを憂いていた。彼らに対して最後の通告、「申し渡す…命が惜しければ、立ち去れ」、そう、もし何かあれば…崖っぷちな両家。
そんな状況にも関わらず、ロミオ(長谷川慎)たちは嬉しそうに恋バナ。
ロミオはロザラインへの片思いに胸を焦がしていた。気晴らしに、友人達とキャピュレット家のパーティに忍び込むことに。一方のキャピュレット家、一人娘であるジュリエット(北乃きい)が可愛くて仕方がないキャピュレット(若杉宏二)、良い家柄の男性を婿に、と思い、パリス(小松準弥)との縁談を進めており、母であるキャピュレット夫人(紺野まひる)も娘の幸せな結婚を望んでいるが、本人は結婚自体が乗り気でない様子。それぞれの状況がきっちり描かれている。そして運命の出会い、パーティでジュリエットを見つけたロミオ、ソッコーで一目惚れ、すぐさま、ジュリエットに接近するも、キャピュレット家の一人娘とはつゆ知らず、もちろんジュリエットも、このまっすぐな青年がモンタギュー家の一人息子とは知らず、2人は恋に落ちる。そして、知る、実は家同士が争っていることを。
有名すぎるくらいの物語、その後の展開も結末も先刻承知。ジェットコースターのごとくに物語は怒涛の展開。それでも見入ってしまうのは、戯曲の力。そして、ここでは14世紀のヴェローナではない。服装を見てもわかるが、現代的な衣装、ロミオとその仲間たちはちょっと不良っぽい服装、ジュリエットはロックな、黒を基調とした服装、パリスはきちっとスーツを着こなし、それぞれの家の両親も節度ある服装だ。ジュリエットの乳母(野口かおる)はお手伝いさん風な衣装、ロレンス神父(山崎樹範)だけが、いかにも「ロミジュリ」的な神父さんの出立ちだ。
様々な演出で上演されてきたこの「ロミオ&ジュリエット」、映像演出とコロスの使い方がアート。演出を担うアレクサンドラ・ラターはイギリスの気鋭の若手劇団、Whole Hog Theatreのメンバー、2013年にアニメーション映画「もののけ姫」を元にした舞台「Princess MONONOKE~もののけ姫~」で来日公演を行ったが、そのアーティスティックな表現が話題になった。また、昨年はミュージカル『ドロシー』でパペットデザイン・ディレクションを行っている。またアンサンブルの活躍、舞台転換のみならず、不安な感情を表現したり、状況を身体の動きで見せるなど、そういったところはアレクサンドラ・ラターの真骨頂。また、ロミオとジュリエットが結ばれるシーンは布と映像で幻想的な場面に仕上げた。
また俳優陣の活躍、ロミオは恋する若い男性、それを表情豊かに長谷川慎が表現、感情が爆発するシーンなどは振り切った演技で魅せる。ジュリエットは、大方の観客が抱いているジュリエットとは真逆で、自分の意志をしっかり持った現代風の女の子、それを北乃きいが熱くエモーショナルに演じ、受け身ではないまさに”ロック”なジュリエット。出番は少ないが、エスカラスの松村雄基、圧倒的な支配者として君臨する。テンション高いジュリエットの乳母、人の良さそうなお兄さんおじさんなロレンス神父、適材適所で、力のある俳優陣が脇を固める。有名すぎるバルコニーのシーンや1幕の幕切れの悲劇の殺人シーンなど見どころ満載。
2幕は最悪の悲しみへと全てが向かっていく、わかっているだけに切ない2幕。
改めて争いは何も生まないことを教えてくれる悲劇。
ちなみに、シェイクスピアが「ロミオとジュリエット」を書いた1590年頃はペストが流行っていた時期、大事な手紙がロミオに届かなかったのはそこから着想を得たのではないか、といわれている。
公開稽古前に会見が行われた。
ロミオ役の長谷川慎は「ロミオは恋をする男の子、恋して人生が狂う物語です。ジュリエットに出会ってジュリエット一筋、周りが見えなくなるくらいに人生狂う、狂って愛するまっすぐな男です…良くも悪くも周りが見えていない」とキャラクターについて語った。ジュリエット役の北乃きいは「すごくロックなキャラクター、シンガーソングライター、芯が強い、今までに見たことのないジュリエットを」と意気込んだ。ティボルト役の中尾暢樹は「ロミオをぶっ倒したい(笑)」と笑わせた。パリス役の小松準弥、「ジュリエットの婚約者です。なぜ、ジュリエットと結婚したいのか、に注目してもらえたら」と語る。パリスの気持ちに注目。ベンヴォーリオの石川凌雅は「ベンヴォーリオは常に争いに巻き込まれる…一番ベストなことを考える男です」とコメント。マキューシオ役の京典和玖は「マキューシオは繊細」とキャラクターを分析。キャピュレット役の若杉宏二は「ジュリエットの父です。見どころは観てのお楽しみ、愛が詰まった物語です」と語り、キャピュレット夫人の紺野まひるは「2023年に上演することの意味を。心を尽くして」とコメント、舞台上では品の良い母親を演じた。モンタギュー役の鈴木省吾は「ロミオの父です。妻への思い、ロミオへの思い素敵な父親を」とコメント、出番は少なめだが、印象的な父親役を演じていた。また、その妻であるモンタギュー夫人役の美羽あさひは「ロミオの母です。ロミオと直接絡むことはほとんどないのですが、息子との関係性など観ていただければ」、エスカラス役の松村雄基は「ヴェローナを牛耳っています。慈悲深いイメージですが、本当はダークなところがいっぱいある、と言われて、僕のダークな部分を存分に出して奥深い、人間味溢れるエスカラスを演じたい」とコメント。ロレンス神父役の山崎樹範は「2人の兄のような存在です。それはさておき、アンサンブルのシーン、シーンとシーンの間の転換が見どころです」と語ったが、ただ道具を動かしているだけでなく、物語の空気を表現、ここは見どころ。ジュリエットの乳母役の野口かおるは「若い2人の背中を押す役です。人間がやる物語、と思って見ていただけたら」とコメント。上演台本・演出のアレクサンドラ・ラターは「世界でたくさん上演されている作品…愛の物語です」と流暢な日本語で。また台本について長谷川慎が「シェイクスピアってめちゃめちゃ難しい…台本が英語と日本語で書かれていて、例えば「あ」と書いてあったら、3、4パターンあって、そのうちの「このパターンの『あ』」と…自分の中に落とし込みながらやってきました」と語る。英語と日本語と併記してある台本は、なかなかない。北乃きいは「日本語がわからない方が観てもわかるようにムーブメント化している、新しい演出だな、と…稽古場は毎日幸せでした」としみじみ。最後に「2023年にやるのは意味のあること…楽しみにしてください」と観客へのメッセージ。
概要
日程・会場:2023年1月28日(土)~2月12日(日) Bunkamura シアターコクーン
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
上演台本・演出:アレクサンドラ・ラター(Whole Hog Theatre)
出演(配役)
ロミオ:長谷川 慎 (THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)
ジュリエット:北乃きい
ティボルト:中尾暢樹
パリス:小松準弥
ベンヴォーリオ:石川凌雅
マキューシオ:京典和玖
キャピュレット:若杉宏二
キャピュレット夫人:紺野まひる
モンタギュー:鈴木省吾
モンタギュー夫人:美羽あさひ
ジュリエットの乳母:野口かおる
エスカラス:松村雄基
ロレンス神父:山崎樹範 他
主催:LDH JAPAN ネルケプランニング S-SIZE
公式サイト:https://RandJ2023.com/
(C)ロミオ&ジュリエット製作委員会