あまりにも有名なブロードウェイ・ミュージカル「コーラスライン」(A Chorus Line)。マイケル・ベネットの原案・振付・演出、マーヴィン・ハムリッシュの音楽によるこの作品、初演は1975年7月25日のことで1990年の4月28日までロングラン、当時ではもちろん最長記録だ。そしてトニー賞では最優秀ミュージカル賞を始め、なんと9部門で受賞、まさに最高のミュージカルといえよう。また「コーラスライン」とは稽古で舞台上に引かれるラインのこと。役名のないキャストたちは、このラインから前に出ないように、というライン。メインキャストとは違うのだ、と思い知らされるラインなのである。
日本では劇団四季が上演権を得て1979年から断続的に上演されており、同劇団の重要なレパートリーになっている。またブロードウェイでは2006年にリバイバル上演。現在の同作の演出・振付・再構成は初演時にオリジナルキャストとして出演していたバーヨーク・リー。演じた役は中国系のコニー(Connie Wong)。背が低いがために未だに子役しかこない、という役所だが、キャリアスタートは1951年の「王様と私」に5歳で出演してから、まさにブロードウェイの申し子のような人物である。
出だしはオーディションシーンから始まる。皆、いわゆる稽古着、ピアノの音と声が響く。「Again,step,kick,kick・・・・・・」それに合わせて踊る。振付は初見、それでもパッとできる者もいれば、間違える者もいる。次々と課題が与えられる。名前ではなく番号で呼ばれる。それが厳しさを物語っている。「 Lets do the whole combination facing away from the mirror,from the top 5-6-7-8!」そこで全員が鏡を背中にして踊る、否応なしにテンションが上がり、胸が熱くなる瞬間だ。「I really need・・・・・・」と歌う。仕事が欲しい、舞台の。オーデション、何人が合格するのか、自分はどのくらい可能性があるのか、受かりたい、受かるのか不安でたまらない気持ちを歌う「I Hope I get it」。そして番号が呼ばれる、呼ばれなかった者はバッグを持って足早に立ち去る。そして残った者は17人、『コーラスライン』に並び、モノクロの顔写真を顔に持ってくる。ビジュアル的に印象的な瞬間だ。ザックは「履歴書に書かれていないことを話して欲しい、君自身のことを」と言い、戸惑いながらも皆、自分のことを話し始める・・・・・・。
初演から実に40年以上が経過している作品だが、古びたり、色褪せないのは、そこに真実があるからだ。番号で呼ばれていた彼らだが、そのバックボーンは様々で、17人17色、ダンスに目覚めたきっかけを話す者、家庭環境に恵まれなかった者やゲイであることに気づいたことを話す者、思春期のことを話す者、それぞれのストーリーは極めて個性的で、それがキャッチーな楽曲で綴られる。ほとんど音楽が途切れない印象、オーディション受験者にザックの元恋人、キャシーがいる。かつてブロードウェイで脚光を浴びたが、今は仕事がない。ザックはキャシーに言う「君はコーラスラインに戻れない」と。しかし、キャシーは「私はダンサー、チャンスをちょうだい!」と。ここの「Nothing」のナンバーは気迫に満ちた場面、かつてスターだった彼女の心からの叫びを表現している。ザックは深く心を動かされるが、それは観客である我々も同じこと。ここの場面が終わった瞬間、大きな拍手が起こった。そして再び、審査が始まるが、キャシーはかつてスターだったので、皆より目立ってしまい、ザックに注意される。さらにザックはキャシーに言う「あのようになりたいのか?」キャシーは「皆、特別で素晴らしい」と切り返す。この言葉には真実がある。
そしていよいよ最後の選考、受かる者がいれば落ちる者もいる、それが現実だ。そんな折、ポールが怪我をする。ザックは皆に問う「もしも踊れなくなったらどうする?」と。メンバーの一人が言う「あきらめない」と。そして「What I Did for Love」のナンバーに入る。自分がやってきたこと、これからやろうとしていること、全てにおいて「悔いはない」という熱い思いを歌い上げる。歌唱力がないと歌えないナンバー、この曲には「コーラスライン」の全てが詰まっている、と言っても決して言い過ぎではない。
そしてラストの「One」、皆、ゴールドの衣装にゴールドのシルクハット、一人、また一人、登場する。そして全員が出てきての群舞、このフォーメーション、だんだんと一つになっていくさまはまさに『コーラスライン』、まばゆいばかりの輝き、そしてダイナミック、個性も人種も生い立ちもバラバラな彼らが一体化する、この作品の真骨頂、この先、いつまでも上演され続けることであろう。
ちなみに最後の最後の場面は撮影OK、電光掲示板にOKが出たらスマホを!
【公演概要】
公 演 名: LION presents ブロードウェイミュージカル『コーラスライン』 来日公演 2018
( 生演奏 / 英語上演 / 日本語字幕あり)
日 程: 2018 年 8 月 15 日(水)~ 26 日(日) 東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11F)
チケット:S席¥13,000 A席¥11,000 B席¥9,000
2018 年 8 月 29 日(水)神奈川県民ホール大ホール
チケット:S席¥12,000 A席¥10,000 B席¥8,000
2018 年 9 月 5 日(水)~ 9 日(日)東京国際フォーラム ホール C
チケット:S席¥13,000 A席¥11,000 B席¥9,000
※全席指定・税込 ※未就学児入場不可
お問い合わせ: キョードー東京0570-550-799 (平日11:00~18:00 / 土日祝10:00~18:00)
10名様以上の団体販売お問い合わせ キョードー東京 03-3407-8155 (平日10時~18時)
主催:TBS/キョードー東京/ぴあ
特別協賛:ライオン株式会社
後援:アメリカ大使館/BS-TBS/TBSラジオ
地方公演 :
[ 浜松 公演] 2018 年 8 月 30 日(木)アクトシティ浜松 大ホール
チケット:S席¥12,000 A席¥9,000 B席¥6,500
お問合せ: テレビ静岡 事業部 054-261-7011 (平日9:30-17:00)
[大阪公演] 2018 年 8 月 31 日(金)~ 9 月 2 日(日)オリックス劇場
チケット:S席¥12,000 A席¥8,000 B席¥6,000
お問合せ: キョードーインフォメーション 0570-200-888(10:00-18:00)
公 式 WEB サイト: http://www.ACL2018.jp
文:Hiromi Koh
撮影:岩村美佳