新国立劇場バレエ団が『シェイクスピア・ダブルビル』、シェイクスピアの戯曲をもとにした2作品を新制作にて上演。
日程は2023年4月29日(土・祝)~5月6日(土)新国立劇場 オペラパレスにて。
シェイクスピアの戯曲をもとにした作品を新制作にて、二本立てでおくる本公演。英国バレエの巨匠・アシュトンの英国の雰囲気漂う『夏の夜の夢』、そして国際的に目覚ましく活躍している演出家ウィル・タケットが新国立劇場のために創る『マクベス』のダブルビルという、伝統と革新の二作品を上演する。
『夏の夜の夢』<新制作>は、英国バレエの巨匠フレデリック・アシュトンによる、シェイクスピアの戯曲をもとにしたバレエ。まるで絵本の世界から飛び出したような森と妖精たちの世界が、細やかな足捌きで表現されるステップや英国らしい豊かなマイムによって華麗に描かれる。妖精パックが引き起こす人間たちの騒動のようなコミカルなシーン、妖精の女王タイターニアと王オベロンによる美しいパ・ド・ドゥなども見どころ。2022年1月の『ニューイヤー・バレエ』で上演予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により公演中止となり、今回の上演となった。
そして、『マクベス』<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>は、オリヴィエ賞など数多くの賞を受賞し、世界的に活躍しているウィル・タケットを迎え、新国立劇場バレエ団から世界に発信するオリジナルバレエを上演。題材として選ばれたのはシェイクスピア劇の中でも予言、野心、疑念、陰謀、錯乱と極限へと追い込まれていく登場人物の心理を重厚に描いた『マクベス』。スコットランドの作曲家、ジェラルディン・ミュシャによって作曲された同名作品にインスピレーションを得て、オペラや映画でも幾度となく題材として取り上げられてきたこの物語が、タケットの手で新たに生まれ変わる。近年日本でも、バレエ、オペラ、ミュージカル、演劇といった舞台芸術を織り込んだ演出で好評を得たタケットが新国立劇場バレエ団とどのような舞台を創りだすのか、期待が高まる。
一足先に『マクベス』が取材陣向けに稽古の様子を披露。マクベス役は福岡雄大、マクベス夫人は米沢 唯。
ウィル・タケットは、イギリスのロイヤルバレエのメンバーとして25年以上活躍。稽古でも自ら手振り身振りで動きをつける。『マクベス』といえば、暗く、また凄惨な場面が連想されるが、披露されたのはマクベス夫人のソロとマクベスとマクベス夫人のパ・ド・ドゥ。シェイクスピア作品は膨大な台詞があるイメージだが、バレエなので言葉はない。全てをバレエで表現。流麗なダンス、ステップ、特にパ・ド・ドゥでは、二人は夫婦であるが、強い関係性をダンスで見せる。
「バレエでは、“ここにあるもの”が見えてこないと物語がお客様に伝わりません」とウィル・タケット。続けて「マクベスとマクベス夫人のパ・ド・ドゥでは、物語をわかりやすくするため、魔女の精霊役が王冠を彼らのもとに運んできます」と語り、「シェイクスピア作品をバレエ演目にするためには、ストーリーを一部カットする必要があり、『マクベス』をよくご存知の方にはどこをカットしたかおわかりになるかと思います……先に謝っておきます。すみません」と挨拶。
さらにウィル・タケットは「ここにくる前にシェイクスピアをやってたので体が慣れていた」と語る。今、上演中(31日まで)の『カスパー』は膨大なセリフ量、シェイクスピアはもちろん、多様な作品を手掛けているウィル・タケットだからこその発言。
また「『マクベス』は他のカンパニーでもバレエになっているのか」という質問が出た。「今回初めてバレエ化するので、やらせてもらうのは初めて。おそらくロシアではやったことがあるのでは?と思いますが、ただ知る限りではないです」とコメント。さらに「シェイクスピアの作品ということであれば『ハムレット』や『テンペスト』、一緒に上演される『夏の夜の夢』、しかし『マクベス』はなかったように思います。イギリスでもやったことがないです」と語った。
米沢 唯は「福岡さんがしっかり作っていらっしゃるので、私はただただ振り回されているだけ」とコメント、「最終的には雄大さんと対等に」と意気込みを。
福岡雄大は「昨日、振付がだいぶ変わって振付のことしか考えていなかったです(笑)。夫婦関係、人間性…力関係…マクベスはいろんな葛藤があるので、振付も本番までに、うまく表現できるように本番まで持っていけるように」とコメント。
ウィル・タケットは「この夫婦関係というのは、二人と稽古を始める時に話したのですが、この夫婦関係には明らかにヒエラルキーがあり、夫人は階級的に上の位、マクベスは結婚できたのは、兵士として有能であるから、そういう地位をもらっている、生まれた階級としては明らかに夫人の方が上であるということ。この二人が結婚して惹かれあっているのか、例えば『ロミオとジュリエット』、ジュリエットは14歳、ロミオは16歳、二人の初恋を描いてますが『マクベス』は、この夫婦は年齢的にも上の年代として描かれていて、体、肉体関係もある、それをもって惹かれあっている関係、ロマンチックにならないように…その関係性があるというのをダンスで描く、やりやすいことですが、この夫婦関係をダンスの中で示していくのは非常に難しく、夫婦が再会するシーンというのは、戦いから帰ってきたマクベス、戦闘の雰囲気のまま、帰ってきて、それをおそらく夫人はセクシーに、体の関係を持ちたい、魅力的に見えると思っている…こういったものをパワフルに描きたい。そういった夫婦の関係、シェイクスピアのバレエで描かれる、オペラでは少しありますが、シェイクスピアの中でも珍しいと思っています」とコメント。
さらに「上演時間が1時間がいいのかどうかは、まさしく観客に判断していただくところ。『マクベス』、例えば人が二人、話しているシーンですとか、かなり多いので、これをカットしたりしましたが、付け足したシーンですとか、今日の場面はマクベス夫人という人物を知ってもらうために、のシーンとして考えていますので、編集といいましょうか、作るようにしています」
福岡雄大は「まず、『マクベス』という作品、大きいし、新しく作品を生み出すこと…僕にとってはチャレンジです。他の作品もそうですが、いつでもチャレンジです」とコメント。米沢 唯は「チャレンジ、という点では私もそうですが、この作品に関していえば、さっきもおっしゃってましたが、ロマンチックにならないように、大きな課題です。夢見る少女っていうのはかなり演ってて、こういう女性、これに近くなるようにチャレンジ、人生をかけて演じたいと思います」
ウィル・タケットは、もう一つの作品について「『夏の夜の夢』、振付は大変素晴らしいです。とてもとても美しくってそれこそ親しみやすい作品です。この『夏の夜の夢』は作品そのものが妖精のような、魔法のような雰囲気を持っています。『マクベス』、この二つが同時に観られるというのが、このカンパニーの公演の大きな見どころの一つになるかな?と。『マクベス』は人がたくさん死ぬシーンがあります。マクベスもマクベス夫人も凄惨な死に方をします。こういったいつものバレエのイメージを持っているとしたら、この作品はこういったイメージを壊す作品になると思っています。ダブルビルとして2作品観られる…私としては『マクベス』のストーリーをわかりやすく伝わるようにするのが私の仕事。これをやっている最中です。バレエとしてだけでなく、一つの演劇体験としてお客様に届けばいいなと。
福岡雄大は「ウィルさん、いてくださる、強いなと。バレエダンサーですが、一人のバレエダンサーとして。強い作品だと思います。自然に、芝居を見てるような…僕には見えるので…この作品は芝居に見えますが、バレエ好きな方でも芝居が好きな方でも観られる作品です」とコメント。米沢唯は「二人が喋ったので私が喋ることが(笑)、『夏の夜の夢』はキラキラふわふわ、美しいもので『マクベス』の方は人間模様、男女の関係もいつの時代も変わらないもの。どの方も共感していただけると思います。刺さる何かがある舞台になればいいなと思います」とコメント。
ここで時間となり、会見は終了した。
公演概要
2022/2023 シーズン
新国立劇場バレエ団『シェイクスピア・ダブルビル』
夏の夜の夢<新制作>/マクベス<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>
Shakespeare Double Bill ‐The Dream / Macbeth
日程:2023年4月29日(土・祝)~5月6日(土)
会場:新国立劇場 オペラパレス
予定上演時間:約2時間(休憩含む)
※『マクベス』の一部に、流血表現がございます。
スタッフ:
『夏の夜の夢』
【振付】フレデリック・アシュトン
【音楽】フェリックス・メンデルスゾーン
【編曲】ジョン・ランチベリー
【美術・衣裳】デヴィッド・ウォーカー
【照明】ジョン・B・リード
『マクベス』
【振付】ウィル・タケット
【音楽】ジェラルディン・ミュシャ
【編曲】マーティン・イェーツ
【美術・衣裳】コリン・リッチモンド
【照明】佐藤 啓
キャスト:
『夏の夜の夢』
【タイターニア】柴山紗帆(29日、2日、4日、6日)、池田理沙子(30日、3日、5日)
【オベロン】渡邊峻郁(29日、2日、4日、6日)、速水渉悟(30日、3日、5日)
『マクベス』
【マクベス】福岡雄大(29日、2日、4日、6日)、奥村康祐(30日、3日、5日)
【マクベス夫人】米沢 唯(29日、2日、4日、6日)、小野絢子(30日、3日、5日)
【指揮】マーティン・イェーツ
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【合唱】東京少年少女合唱隊
公演情報公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/shakespeare-double-bill/
オフィシャル撮影(リハーサルシーン):阿部章仁