「海外戯曲の違和感を解消したい」新宿区シアター風姿花伝にて7月21日〜29日上演。
演劇集団キャラメルボックスに所属、舞台を中心に活動している俳優・翻訳家の小林春世が俳優の佐藤千夏とともに演劇ユニット「ハルナツ」を立ち上げた。文化庁新進芸術家海外研修の研修員として米国ニューヨークで活動していた小林、昨年、帰国し、ユニットを立ち上げるに至った、
記念すべき公演に選んだ演目は劇作家、David Auburn の『Proof』、しかも日本語・英語・バイリンガル(日英ミックス)の3バージョンで上演する。
本作は、アンソニー・ホプキンス、グウィネス・パルトロー主演で 2005 年に映画化されている名作(※)。 2001年には、第55回トニー賞(演劇作品賞)とピュリッツァー賞戯曲部門も受賞。日本でもこれまでに様々な団体が上演、おそらく日本初(ハルナツ調べ)となる3バージョンで同時上演。
主催より
英語やバイリンガルでも上演する1番の理由は、海外戯曲の日本語上演で感じることのある「違和感」を解消したい、ということです。その違和感の正体は、元の言語で現地の方が演じると必ずあるであろう「文化的な 何か」が、日本語になると消えてしまうことなのではないか、と私達は考えました。今回、英語版にも同時に 取り組むことで、台詞の持つ本来の意味や現地の文化にも向き合って演じることになります。その結果、日本 語版の上演でもそれが生かされて表現が変わり、新たに見える景色があるのではないかと考えます。また、私 は現地の文化の調査・研究のため、シカゴとニューヨークまで足を運びました。そして、ご存知の方も多いと 思われる有名な作品ですので、お客様に作品だけではなく私達の「挑戦」自体も楽しんでいただける公演にし たいと考え、バイリンガル上演も行うことにいたしました。
このように私達は、本公演が、翻訳劇の違和感をなくし、日本語バージョンを観ていただいた方にも、米国で 起きている米国人の出来事だと自然と感じていただける公演になることを目指しております。これは、数々の 翻訳劇が上演される日本の演劇界で、意外と無視されてきた問題ではないかと思います。それを解決し、今後 日本で上演される翻訳劇に生かされるような公演にしていきたいと思っております。
あらすじ
アメリカ、シカゴ。天才数学者・ロバートを父親に持ち、同じく数 学を学んで育ったキャサリン。精神を病みながらも数学の証明を続 けようとする父を看病していたが、彼は亡くなってしまう。ロバー トの研究を引き継ごうと、教え子のハルが家を訪れ、妹キャサリン の身を案じる⻑女クレアは、ニューヨークから帰ってくる。やが て、未発表の「証明:proof」が書かれた 1 冊のノートが発見される。すると、キャサリンが打ち明ける。この証明は…。
ハルナツとは
これまで複数回共演してきた小林春世(俳優・翻訳)と佐藤千夏(俳優)が、演劇について談笑し議論し盛り上がる中で、目指す演劇の形や、やりたい作品、挑戦したいことのタイミングが合ったことから、結成されたユニット。今公演が旗揚げ公演。
<小林春世コメント>
数年前までの私は、『Proof』という作品は知っている、おもしろいとは思う、その程度でした。そんな中、文化庁の 研修員として 1 年間、米国ニューヨークで演劇を学ぶ機会をいただきました。演劇スタジオで沢山の戯曲に取り組み ましたが、この『Proof』という作品だけは、どんなにクラスや講師、演出家が変わってもなぜか私は配役され、取 り組むことになりました。役はキャサリンで、どんどんこの作品に魅了され、毎日演じることが楽しみでした。そし て、『Proof』が大好きでキャサリンが dream role の 1 つだと言っていた、友人の佐藤千夏のことを思い出すことが多 くなりました。いつか一緒にやりたいねと連絡するようなこともありました。2021 年 12 月 1 日、「ほんとにやらな い?」と、まだニューヨークにいた私から佐藤に送った LINE でこの企画が動き出しました。 佐藤とやるならば私がクレアだと思いました。クレア役は全く経験していないため、今、新鮮な気持ちでとても楽し みです。
また今回は、私が翻訳も担当します。お仕事としてはまだ 2 作目ですが、研修中に、今後は戯曲翻訳もやっていきた いと考えるようになったため、真剣に取り組んでまいります。ニューヨークで『Proof』を学んだ際に、単語の意味 は分かっても日本人の私にはニュアンスがわからないところはアメリカ人に聞き、研究したりもしました。そのよう な経験をした私だからこそできる翻訳にしたいと思います。
<佐藤千夏コメント>
大学で数学を専攻した後に演劇の世界に入った私にとって『Proof』という作品はどこか特別で、初めて触れたとき から明確に “生きているうちに必ず挑みたい作品”となりました。そして同時に、待っていても役を演じる機会はそう 簡単に回ってくるわけではないから、いつか自分で企画して挑戦しよう、と考えるようになりました。しかし、「い つにしよう」なんて悩んでいるうちに、私がこの作品を知ってから何年もの時が経ってしまっていて。このままでよ いものかと考えていた 2021 年に、当時アメリカで演劇を学んでいた友人の小林春世から、授業で『Proof』に取り組 んでいるというお話を聴きました。そこから、本格的に企画しようと小林が言い出してくれたことをきっかけに、私 たちは動き出すこととなりました。 また、打ち合わせを重ねる中で、「英語版も一緒にやるのはどうかな?」と、気づいたら提案していました。自分で も驚いています。なぜなら私自身、英語を避けるために数学を専攻したといっても過言ではないくらいに英語が苦手だったからです。しかし今回この企画で、皆様と一緒に、英語で書かれた『Proof』を通して作品をつくっていくこ とに、今とてもワクワクしています。私は英語版の中でキャサリンを演じるわけではありませんが、稽古を通して、 大好きな『Proof』という作品を英語で味わいながら、ぎっしり詰まっているエッセンスを感じとった上で、日本語 版のキャサリン役として公演に挑んでいきたいです。 たくさんの人に触れてもらえるような公演にできるよう、全力で臨みます。
※『プルーフ・オブ・マイ・ライフ』(英: Proof)、2005年のアメリカ映画。
ピュリッツァー賞やトニー賞を受賞した舞台劇『プルーフ/証明』の映画化。ジョン・マッデン監督作。出演はグウィネス・パルトロー、アンソニー・ホプキンス、ジェイク・ギレンホール、ホープ・デイヴィス。日本では翌年の2006年公開。
概要
日程・会場:2023年7月21日〜29日 新宿区シアター風姿花伝
スケジュール
7月21日(金)19:00 日本語版
7月22日(土)14:00 日本語版
7月23日(日)12:00 英語版(字幕あり) / 16:00 日本語版
7月24日(月)12:00 日本語版 / 19:00 英語版(字幕あり)
7月25日(火)休演日
7月26日(水)14:00 英語版 / 19:00 日本語版
7月27日(木)14:00 日本語版
7月28日(金)14:00 バイリンガル版 / 19:00 バイリンガル版(※アフタートーク)
7月29日(土)12:00 英語版 / 16:00 日本語版
※英語公演の7月23日(日)12:00 / 7月24日(月)19:00回は、日本語字幕付きでの上演を行います。
作:David Auburn
翻訳:小林春世
演出:田中壮太郎
出演
日本語版
ロバート:高川裕也 / キャサリン:佐藤千夏 / ハル:祁答院雄貴 / クレア:小林春世
英語版&バイリンガル版
ロバート:田中壮太郎 / キャサリン:リサリーサ / ハル:祁答院雄貴 / クレア:小林春世
公式サイト:https://harunatsu.studio.site
公式ツイッター:https://twitter.com/harunatsu_japan
後援:米国大使館