ロンドンコメディ『Run For Your Wife』(1983年)、イギリスの人気劇作家レイ・クーニー原作、日本でも多数上演されてきた傑作。7月12日より池袋のあうるすぽっとにて開幕。
重婚生活を送るタクシードライバーが事故に巻き込まれ、ピンチに陥り、苦し紛れにウソにウソを重ね大騒動となってしまう爆笑コメディ、今も根強いファンに支持されている映画「大丈夫日記」(チョウ・ユンファ主演)は、これを基にして造られたもの。
演出は自らも出演する山本一慶。
出だしはフランク・シナトラの「恋と結婚」の曲が流れる。上手下手で実は異なる家、インテリアや全体の雰囲気がそれを伝える。可愛らしいピンクを基調にした方はメアリー・スミス(舞羽美海)が住み、ブルーを基調にした方はバーバラ・スミス(十碧れいや)。出だしは夫・ジョン(山本一慶)が帰ってこないので警察に電話をしているシーンから。
この作品、日本では何度も上演されているので、過去に何度か観た、という方も多いはず。つまりオチも展開も、登場するキャラクターも「みーんな知ってます」という前提で観劇しても十分に面白い。本当に細かいところまで計算され尽くしている脚本、レイ・クーニーらしい可笑しさと緻密さが詰まっている戯曲。タイトルになっている”Run For Your Wife”は”Run For Your Life”の駄洒落。意味は「命がけで走れ」、まさに主人公のジョン・スミスは命がけ、重婚がバレたら絶体絶命、タクシー運転手という職業を利用して「うまいことやってる」のだが、思いがけない事故に遭遇し、綱渡りな生活に綻びが生じる。その場しのぎの嘘をつきまくり、スタンリー・ガードナーに金を貸してるのを利用して彼にも嘘をつかせる、妻たち、警察をも欺こうとする。
こういう言い方をすると、もう悪人な空気感を感じてしまうが、なぜかこの男、憎めない。右往左往するスミスを観客は「困ったやつだ」と思いつつなぜか応援したくなるから不思議だ。スリリングで抱腹絶倒な展開、このトンデモ主人公を山本一慶が大汗かいて熱演、しかも演出にも挑戦。
細かい笑いの部分をさらに増幅させて観客を笑いの渦に。可愛らしいメアリーは舞羽美海が演じるが、後半のヒステリー状態はもう笑うしかないし、大人の色気を漂わせるバーバラは十碧れいや。
舞羽美海は元宝塚歌劇団雪組トップ娘役で十碧れいやは元宝塚歌劇団星組の男役スター、このキャスティング、セリフをよーく聞けば「納得」。
このストーリーの中で一番の貧乏くじを引くのがスタンリー・ガードナー、石田隼の困り顔が気楽に観ている観客にとってはなかなかのツボ。
警察関係者のお二人、トラウトン警部とポーターハウス警部、この二人のキャラクターも対照的、トラウトン警部はかなりの堅物で笑わないキャラ、一方のポーターハウス警部は愛嬌があって、仕事中だというのに微笑ましい行動に(笑)。
さらにこのドタバタに華を添える(笑)ボビー・フランクリン、嘘はつかないが、ここぞという時に現れて、その派手さで彼らを更なる窮地に陥れる。
さて、この主人公の名前ジョン・スミス、ジョンもスミスもありふれた名前なので、よく偽名に使われるのだとか。
名前からしてキャラクターを表現しているので、ここは原作者の”さすが”なところ。この騒動、落ち着くところに行き着くのだが、そのオチも笑えるので、そこは劇場で!
ゲネプロ前に簡単な挨拶があった。登壇したのは出演者全員。
コロナ禍で中止になったが、今年、”リベンジ”。
山本一慶は「明日、無事に幕が開きます」と挨拶。見どころについては「2幕の後半が緊張感があって楽しいので」とコメント。こんがらがった嘘、嘘、嘘が大きなうねりとなってジョンを襲うので!また「ビジュアル的に、衣裳的に”やらかしてくれるところ”」も見どころだそう。どういう風に”やらかす”のか、この作品を知らない方は、この”やらかし”をチェック。舞羽美海は「(前回は)本番迎える前にコロナ禍で」、今回は本当にリベンジ。「お客様が入って完成する作品」と語る。いわゆる”笑劇”のジャンルである本作、客席の笑い声も重要な要素。見どころについては「生活感の違い」メアリーが住んでいる家とバーバラが住んでいる家、観葉植物や壁にかかっている絵など、その細かい違いは確認したいポイント。トラウトン警部役の松井勇歩は「とにかく笑っていただきたい」とコメント(トラウトン警部は笑わない)、見どころは「ガードナーが一番大変」ジョンに散々振り回されるガードナー、多分、彼の人生にとって最悪な日な感じ(笑)。そのジョンに酷い目に遭わされるガードナーを演じる石田隼、「家がふたつに分割されているのが面白い、対比のバランス、『こういう関係』っていうのが細かくなってて面白いなと」そのセットをフルに使ってのドタバタ劇は見どころ。十碧れいやは「3度(公演)無くなって、4度目の正直が嬉しい!楽しんでいただけるように。見どころはジョンの汗!全身でジョンを演ってる山本さん!」、ゲネプロでも大汗。ポーターハウス警部のピクニックは「集中しすぎちゃって自分のことで精一杯!話がジェットコースターのようです。見どころは小澤さん!このタイプの役はやったことがないので、お楽しみに!」とコメント。小澤亮太は「会話のキャッチボール、(見どころは)このドタバタにどう対処するのか」とコメント。笑劇の傑作中の傑作、未体験の方はぜひ、観て笑って免疫力をアップ!最後に山本一慶「演出もやってますが、皆さんの力があったからこそ駆け抜けられる。馬鹿馬鹿しく、笑って笑顔で帰って欲しい、ただ笑って欲しいです」と締めて会見は終了した。
イントロダクション
平凡なタクシー運転手のジョン・スミス(山本一慶)は、人には言えない秘密があった。
実は優柔不断な性格から二重結婚をしていたのだ!
早番と遅番を使い分けた綿密なスケジュールで、二人の妻(舞羽美海、十碧れいや)と
楽しい重婚生活を送るジョン。
しかしある日アクシデントによってスケジュールが狂い秘密が発覚しそうに!
必死に隠そうと上の階の住人(石田隼、小澤亮太)や
警部達(ピクニック、松井勇歩)を巻き込んでウソにウソを重ねる
抱腹絶倒の大騒動を描きます。
概要
ロンドンコメディ『Run For Your Wife』
日程会場:2023年7月12日(水)~19日(水)あうるすぽっと
作:レイ・クーニー
訳:小田島雄志/小田島恒志
監修:菅原道則
演出:山本一慶
出演:
山本一慶(ジョン・スミス)
舞羽美海(メアリー・スミス)
十碧れいや(バーバラ・スミス)
松井勇歩(トラウトン警部)
ピクニック(ポーターハウス警部)
石田隼(スタンリー・ガードナー)
小澤亮太(ボビー・フランクリン)
新聞記者役・日替出演
12(水) 14:00 KIMERU、12(水) 18:30谷水力、13(木)18:30安井一真、14(金)18:30松田岳、
15(土)12:00鯨井康介、15(土)16:30鈴木裕樹、16(日)12:00髙木俊、16(日)16:30松村泰一郎、
17(月)12:00橋本真一、18(火)14:00竹中凌平、18(火)18:30りゅうと、19(水)14:00宇野結也
料金:7,700円(税込み、全席指定)
企画・製作:アーティストジャパン
問合:03-6820-3500
公式サイト:https://artistjapan.co.jp
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