チェーホフ『三人姉妹』の翻案を通して、日韓の歴史を見つめる話題作。3年ぶり待望の再演となる。
日韓国際共同制作を重ねてきた、ソン・ギウンと多田淳之介が再タッグ! 冷静かつ鋭い観察眼で、植民地支配下の朝鮮半島に生きる人々を描く。
長塚圭史芸術監督のもと、3年目となる2023-2024メインシーズンのシーズンタイトルは「貌(かたち)」。
長塚は、このシーズンタイトルについて、『目に見える「かたち」、触れて確かめる「かたち」、聞こえてくる「かたち」もあるかもしれません。(中略)あくまで「かたち」に過ぎないのに。けれど抗い難く「かたち」に囚われるのが人間です。』と話す。
メインシーズン「貌」では、多彩なラインアップを通して、さまざまな角度から「貌」を見つめていく。
メインシーズン「貌」11月末より上演するのは、当劇場と、演出家・多田淳之介が主宰する<東京デスロッ ク>との共同製作により、2020年12月に初演し好評を博した『外地の三人姉妹』。
演出を手掛けるのは、古典から現代戯曲、ダンス、パフォーマンス作品まで幅広く手がけ、現代社会に於ける当事者性をアクチュアルに問い続ける多田淳之介。翻案・脚本は韓国の劇団<第12言語演劇スタジオ>芸術監督で、平田オリザ氏や野田秀樹氏ら日本の劇作家・演出家と数々の作品を共にし、日韓の現代 演劇の架け橋として活躍するソン・ギウン。
二人はこれまでも数々の作品で日韓共同制作を重ねてきました。なかでも、2013年にチェーホフの『かもめ』を日本統治下の朝鮮を舞台に翻案し、日韓共同製作にて上演した『가모메 カルメギ』(翻案・脚本:ソ ン・ギウン/演出:多田淳之介)は、韓国で最も歴史と権威のある東亜演劇賞において「作品賞」「演出賞」 「視聴覚デザイン賞」の3賞を受賞。演出の多田は50年の賞歴で初の外国人演出家による正賞受賞となり、 KAAT神奈川芸術劇場での日本公演でも大きな反響を呼んだ。
2020年、再びタッグを組んだ二人が挑んだのは、チェーホフの三大戯曲に数えられ人気の高い『三人姉妹』。その翻案、『外地の三人姉妹』では、舞台をロシア帝政末期の田舎町から1930年代の朝鮮北部に置き換え、日本軍の亡くなった将校の娘たち三姉妹は「モスクワへ」ではなく、生まれ育った「東京へ」望郷の想いを募らせる。日本語・韓国語に加え、エスペラント語・英語・ドイツ語が飛び交う舞台上で、時代に翻弄される人々を日韓俳優陣の競演で描き大きな話題に。
3年ぶりとなる再演では、小劇場を中心に活躍し多田淳之介からの信頼も厚い日本側キャストに加え、舞台・映像とジャンルを問わず幅広く活躍し、『焼肉ドラゴン』などの日韓共同作品にも出演経験のある佐藤誓が新たに参加。
韓国側キャストには、劇団SCOTへの在籍経験もあり、ディズニープラスで配信中のドラマ「カジノ」への出演など、ミュージカル・演劇・映画・ドラマと多彩な経験を持つイ・ソンウォン、舞台を中心に活躍し ながらも近年、映画「悪の偶像」など映像作品にも進出しているアン・タジョンの二人を再び迎えます。 また今回、ソン・ギウンはより多角的な視点を意識し戯曲を改訂。さらに慎重で興味深い作品へブラッシュアップ。
作者の冷静かつ鋭い観察眼による歴史観で名作『三人姉妹』を蘇らせ、全く新しい「貌(かたち)」を持って 現れる『外地の三人姉妹』。
創作の過程で、異なる視点や立場から日韓の歴史の「貌(かたち)」、そして現 在を見つめるという作業を重ね、一方に偏らない表現を追求してきたソン・ギウンと多田淳之介。二人が協働するこのプロジェクトは、シーズンタイトル「貌(かたち)」の思考を深める大きな刺激に。
あらすじ
1930 年代、朝鮮半島の北部にある日本軍が駐屯している都市、亡くなった将校の息子と三人姉妹が住んでいる 屋敷。息子は朝鮮の女性と結婚し、姉妹はいつか故郷である東京に戻ることを夢見ている。戦争へ向かう帝国軍人達の描く未来像、交差する朝鮮人の想い、姉妹達の日本への望郷の想いとは……。
概要
日程・会場:2023年11月29日(水)~12月10日(日) KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ
原作:アントン・チェーホフ『三人姉妹』
翻案・脚本:ソン・ギウン
演出:多田淳之介
翻訳:石川樹里
出演: 伊東沙保 李そじん 亀島一徳 原田つむぎ アン・タジョン 夏目慎也
佐藤誓 大竹直 田中佑弥 波佐谷聡 松﨑義邦
イ・ソンウォン 佐山和泉 鄭亜美
問合: 0570-015-415(10:00‐18:00) https://www.kaat.jp
主催・企画制作:KAAT 神奈川芸術劇場
企画協力:東京デスロック、第 12 言語演劇スタジオ
共催:YPAM 実行委員会
後援:駐日韓国大使館 韓国文化院、公益財団法人 日韓文化交流基金