尾上松也, 吉岡里帆, 和田琢磨, 渡辺えり 出演「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」2本立て上演中

テネシー・ウィリアムズの自伝的作品「ガラスの動物園」と、別役実が同作の後日譚として執筆した二人芝居「消えなさいローラ」を2本立てで上演。演出は渡辺えり。11月4日より紀伊國屋ホールにて開幕。その後は山形、大阪をまわる。

「ガラスの動物園」はテネシー・ウィリアムズの代表作の一つで1944年に初演。「消えなさいローラ」は、不条理劇の第一人者・別役実の書いた2人芝居。
配役は、「ガラス――」のトム役が尾上松也、アマンダ役は渡辺えり、ローラ役は吉岡里帆、ローラが恋心を抱いていたジム役は和田琢磨。「消えなさい――」の「男」役を松也、「女」役を渡辺、吉岡、和田の3人が日替わりで演じる。

本公演では、テネシー・ウィリアムズの自伝的作品「ガラスの動物園」と、別役実が同作の後日譚として執筆した二人芝居「消えなさいローラ」を2本立てで上演。「ガラスの動物園」がきっかけで演劇を志したという渡辺えりが演出を手がける。

『ガラスの動物園』の物語の進行役でもあり、閉塞感を感じながら現状からの脱却を夢見る文学青年の弟・トムを演じるのは尾上松也。2020年に渡辺と『消えなさいローラ』で共演、絶大なる信頼を得て、再びのタッグ。極度に内気でガラス細工の動物たちと古いレコードだけを心のよりどころとする姉・ローラ役は吉岡里帆。高校時代にローラが恋心を抱いていた人物であり、一家の夕食に招かれてやってくる青年・ジムは和田琢磨が演じる。渡辺えりは、自身が生涯で一度は演じてみたかったという、華やかな過去の想い出の中で生き、自分の考えが正しいと信じて疑わない口うるさい母・アマンダを演じる。

『消えなさいローラ』では、家を飛び出して行ったトムを母とともに待ち続けるローラ役を吉岡、和田、渡辺の三名が日替わりで。彼女を突然訪ねる葬儀屋と名乗る“男”役の松也を相手に二人芝居を繰り広げる。

『ガラスの動物園』は繰り返し上演される名作。トム(尾上松也)は物語の進行も行う。1930年代のセントルイス。大恐慌が発生し、アメリカのみならず、世界が閉塞感に覆われた時代。口喧しい母(渡辺えり)、このやかましさ、トムはうんざり、その表現の仕方がちょっとユーモラスで客席から笑いが起きる。

ローラ(吉岡里帆)は内気な上に足が不自由。そのことが彼女をさらに内向きに。ガラス細工の動物を集めて、その世界に浸っている時が安らげる時間。子供達が心配な母、夫は家出、婚期が遅れているローラに結婚相手を、と思い、トムに同僚を連れて来るように頼むが…。

儚い夢を追い求めるアマンダ、抱いている夢と裏腹な、惨めな現実にうんざりする息子・トム、自分の世界に閉じこもる娘・ローラ。そこへトムの同僚のジム(和田琢磨)、ローラを励ます言葉の数々、感動するローラ、だが、ジムには許嫁がいた。落胆するローラに気付きもせずに「愛を知って生まれ変わった」などという。彼にとって大切なのは自分、自己陶酔気味、ローラへの励ましに愛はなかった。『ガラスの動物園』、人の心はガラス細工のように脆く、壊れやすく、儚い。不幸の連鎖、そしてどうにか”家族”になっていた3人を繋いでいた糸は切れてしまう。


トムの回想という形で綴られる物語、原作者の自伝的な要素が強い作品だが、普遍的な内容に昇華、日本での初演は5年後の1949年、北村喜八の訳・演出だったそう。初演から70年以上経っているが、世界中で上演されている。

休憩を挟んで「消えなさいローラ」、「ガラスの動物園」の後日譚のような内容。

部屋は同じだが、散らかっており、荒れている。ローラ(吉岡里帆 和田琢磨 渡辺えり)は家出した弟・トムを待っている。そこへ葬儀屋(尾上松也)がやってくる。ローラは、この葬儀屋が来たときは「自分の母親」になりきって対応、誰も死んでないと言い張って葬儀屋を追い出すも「帽子忘れた」と言って葬儀屋が戻ってきたときはローラとして対応する。

会話の妙、客席から笑いが頻繁に起こる。軸は「母親は死んだのかどうか」であるが、この葬儀屋も胡散臭い、本当に葬儀屋なのか??果たして生きてるのか死んでるのか、ラスト近くで葬儀屋が衝撃の事実をローラに告げる。

ゲネプロは尾上松也&渡辺えり、2020年に劇団300でこのペアで上演、息のあったやりとり。上演時間は1時間ほどで気軽に観劇できる作品。
この2本だて、生演奏、これがエモーショナル、コントラバス、ヴァイオリン、バンドネオンというシンプルな構成だが、奥行きを感じさせるメロディが世界観をより立体的に見せる。「消えなさいローラ」のローラ役が日替わり、これは面白い試み。東京は21日まで紀伊國屋ホール、その後は山形、大阪と回る。ユニークな2本だて、いっぺんに両方観劇できるまたとない機会だ。

概要
COCOON PRODUCTION 2023「ガラスの動物園」「消えなさいローラ」
日程・会場:2023年11月4日〜11月21日 紀伊國屋ホール
作:テネシー・ウィリアムズ(ガラスの動物園)、別役実(消えなさいローラ)
翻訳:田島博
演出:渡辺えり
出演者:尾上松也 吉岡里帆 和田琢磨 渡辺えり
ミュージシャン:川本悠自(コントラバス) 会田桃子(ヴァイオリン) 鈴木崇朗(バンドネオン)
地方公演
山形:2023年11月23日(木・祝) やまぎん県民ホール
大阪:2023年11月25日(土)・26日(日) 松下IMPホール
問合:03-3477-3244(10:00~18:00) www.bunkamura.co.jp
企画・製作=Bunkamura

公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/23_Glass_Laula/

撮影:細野晋司