舞台『エウリディケ』が白井晃の演出で、2月4日、世田谷パブリックシアターにて開幕する。
2007年にニューヨークで上演され、ニューヨークタイムズ誌では 「神秘的で素晴らしい前衛的な作品」とも評された、アメリカの人気劇作家 サラ・ルールによる戯曲『エウリディケ』日本初演。日本における「古事記」の神話とも類似した、世界的に普遍な物語を、現代に置き換える新たな視点で描く。
主演のエウリディケ役には、2021年にテレビドラマで俳優デビューした水嶋凜。エウリディケの夫・オルフェ役を和田雅成が演じる。また、エウリディケを見初め、自らのものにしようと暗躍する地下の国の王に崎山つばさ。不慮の出来事により死者の国に来てしまった エウリディケを大きな愛で導く父を栗原英雄が演じ、櫻井章喜、有川マコト、斉藤悠が脇を固める。
演出は世田谷パブリックシアターの芸術監督の白井晃。ピアノ演奏は、『オーランドー』(2017年)でも音楽を担当した林正樹。また、作曲家、サウンド・クリエイターとしても活躍する藤本一馬がギターを演奏。
ピアノの調べ、ギターの音色、楽しそうな若い2人の男女、男性の名はオルフェ(和田雅成)、女性はエウリディケ(水嶋凜)。水玉のワンピースが可愛らしいエウリディケ、短パン姿のオルフェ、彼の頭の中は音楽でいっぱい、エウリディケを愛することで更なる音楽が湧き上がる。オルフェはエウリディケに指輪を彼女の指に通す、「忘れないように」。そして「僕らの人生が音楽で溢れるように!」もちろん結婚の約束を交わす。エウリディケの父(栗原英雄)、仕立ての良いスーツを着ている。「家にまた愛される人が…油断しない、目を離さない、いつも人のために…助けること、それが最高に生きる喜び」と…深い言葉。
そして純白のドレスに身を包んだエウリディケ、ひとり。パーティの場ではない、そこに井戸。そんな彼女を見つける黒いコートの男(崎山つばさ)、危険な香りのする風貌、しかも自分はモテると思い込んでいる感のある、自信たっぷりな。イケイケな感じを漂わせて彼女を見初めてくどく、戸惑うエウリディケ。一方、オルフェはエウリディケを探す、不安げな様子。エウリディケ大好きだった父親の手紙を渡してもらえるという言葉に釣られて高い部屋に。手紙を取り戻すものの、なんと転落死。倒れている彼女を発見するオルフェ。畳みかけるような展開、エウリディケは死者の国に。
石が登場、大きい石(櫻井章喜)、小さい石(有川マコト)、うるさい石(斉藤悠)、カラフルでちょっと可愛い衣装、「彼女は死んだ」「見て!彼女が死の世界にやってくる!!」バランスボールに乗ったり弄んだり、わちゃわちゃ感が楽しく、しかも個性的。死の世界にやってきたエウリディケ、思い出せない、「オ…」石たちに聞いてみたり。そこへエウリディケの父、「お前の父親だ…名前もつけた」と。優しそうな父親、一方、彼女を失ってかなしみにくれるオルフェ。
亡き妻への曲を作る、そして、万に一つの可能性にかけて手紙を…それがなんと死の世界に届く!父と手紙のおかげで思い出していく記憶。「オルフェ!」「きっと思い出す」と父。娘・エウリディケと楽しく踊る、「I Got Rhythm」劇団四季のミュージカルを観ていたなら思い出す、栗原英雄、在団中はベラ・ザングラー役、ここはちょっと笑いが。そして石たちが「うるさい!」と一喝(笑)。
ここの王様(崎山つばさ)、なぜか三輪車、派手な服装、さっきまで怪しさ満点な男だった崎山つばさが、別の意味で怪しさ満点なキングに(笑)。一方のオルフェは死者の国に行く決心を固める。
よく知られているオルフェの神話、数多く映画化、演劇化されている。有名なのはジャン・コクトーの戯曲「オルフェ」(1926),映画「オルフェ」(1950),映画「オルフェの遺言」(1960)の「オルフェ三部作」。今回の作品『エウリディケ』は現代的、台詞が詩的で美しく、作品世界をより美しいものにしてくれる。常に音楽、神話ではオルフェは竪琴の名手で、ここでは作曲家。そして「死」、この厳然たる「死」が作品の根底に横たわる。そして父は娘より一足先に死の世界にいる。それぞれの”想い”、相手を想う心、オルフェはもちろん、エウリディケ、エウリディケの父、死がそこに横たわっても、その想いは一層強くなる。美しく、切なさと温かさ、「生と死」上演時間はノンストップのおよそ1時間半、東京は18日まで。その後、24、25日は大阪。
ゲネプロ終了後に会見が行われた。
役どころについて
水嶋凜「このまま演じ続けていたらすごくおてんばな子になりそうと思ってます。感情も豊かで、言いたい時に言いたいことを言って、すごく素直。いろんな意味ですごく真っすぐな子になっちゃいそう。日常では全然ならないですけど、ここにいる間だけは真っすぐになっています」
和田雅成「音楽を愛してエウリディケを愛して、稽古場からもそうですけど、幸せな日々を過ごしています。オルフェに助けてもらう部分がすごく多かったなと。いろんなことに夢中になること、刺激的だなと教えていただきました」
栗原英雄「子供はいないんですけど、演じるに当たって水嶋さんと一緒にやって自分の中の父性があることを確認できました。いろんな現場に行くんですけど、年上になっていくので、若い人と一緒にいると、つい父親的な目でみてしまうところもあります。精一杯娘を想いたいと。すごく天真爛漫で軽く抜けてるところもあって、いい意味ですよ(笑)、素敵でキラキラしているし、嫉妬を覚えます(笑)」
崎山つばさ「ゲネプロやって反応をいただけて、気づきもあって、もうちょっと色々できるなと。やっていて、まだまだ見つけられない部分が多いなっていうのが正直な感想です。ギリギリまで白井さんにご指導をいただいて、まだまだそういうところもあると思います。自分なりにブラッシュアップしてできればと思います」
白井晃「皆さん、すごく頑張って下さった、上々の出来栄えだったなと思っています。12月上旬からお稽古させてもらってまして、台本だけだと難解な作品でもあるので、意味合いをお伝えしながら、共有しながらやってきました。若いっていいなと。すごく伸び代があって、2ヶ月、お二人とも、つばさ君もさらに成長している感じがありましたし、その〜若いっていいなって(笑)どんどん伸びてってくれるからどんどん稽古したくなる、明日もしようかなって(笑)(「明日、本番前ですか?!」と水島凛)」
基礎からやったそうで、それも朝早く!水嶋凜はそれを受けて「朝練です!本当に基礎的なところから、表現の幅をとにかく、こう…ぐっと広げて…」和田雅成が「稽古1時間前ぐらいから」と。ここで白井晃が「朝、と言っても昼ですけどね」と(笑)。また白井晃は「(栗原英雄)すごく信頼のできる俳優さん。この稽古場の守護神のように、非常にリードしていただいた、感謝しております、素晴らしい父親を演じています」稽古場でも”お父さん”ぶりを発揮した栗原英雄!親子の絆も深まった!栗原英雄は「余談ですが、お母さん(斉藤由貴)と夫婦役をやったことがある」と共演があったことを明かした。「なので、娘!」と栗原英雄(そうだったのかー)。水島凛は「(母とは)最近はあまりしゃべっていないです。別に仲が悪いとかじゃないです(笑)、絶対(観に)来ると思います」
また白井演出がお初の和田雅成「基礎の部分からやっていただいて、稽古終盤の方で白井さんが稽古場で30分ほど話をしてくださって、その時にいただいた言葉とか、想いとか、この時間は僕にとってすごくよかった、内側に入りすぎた部分もあったのですが、共演の方々に助けていただいたり、白井さんのこの作品にかける想いが誰よりも強くって、それに負けないように絶対についていこうって思って。そういうところをたくさん教えていただきました」と語った。さらに「ノートにダメ出しとか書き出すんですけど、数えたら36ページ、いっぱい書き込んだなーと思って。それだけ言葉をいただけた、僕にとってはプラスでしかないので、36ページ分、しっかり生きようと思います」と締め括った。崎山つばさは「一番、嬉しかったのは、『サンソン〜』の時は『崎山くん』だったんです。今回『つばさ』になってて、なんかちょっと嬉しかった(「そういえばそうだね」と白井晃)」、それを受けて「人見知りなんで…『水嶋さん』とか『和田くん』とか…下の名前で呼ぶのに2、3ヶ月かかるんです」と白井晃。
崎山つばさの役どころはかつてやったことのないタイプのキャラ「新境地っていうか…ない部分を白井さんに引き出していただいて、三輪車に乗って…世田谷パブリックシアターっていう場所で三輪車に乗れる男はいない、風きって気持ちよかったです(笑)」
最後に水嶋凛が「サポートしていただきながら、みんなで頑張った作品です。白井さんと皆さんで一から作り上げた作品だと思います。ぜひ観てほしいです」
物語
音楽家であるオルフェは、エウリディケと愛し合い結婚を約束する。結婚式当日、怪しげな男に見初められてしまったエウリディケは、亡くなった父からの手紙を渡してもらえるという言葉につられ、彼が住むとても高い場所の部屋に行ってしまう。手紙を取り戻し彼の誘惑から逃れたエウリディケだったが、はずみで階段から足を踏みはずし、転び落ちて死んでしまう。死者の国で父親と再会したエウリディケは、父親からの愛によって「忘却の川」で消し去られた様々な記憶やオルフェと愛し合った日々の記憶を取り戻す。
一方、オルフェはエウリディケを探し続け、とうとう地獄の門までたどり着く。自らの歌によってエウリディケを取り戻せる可能性を掴んだオルフェだったが、地下の国の王から「振り返って決して彼女を見てはいけない」という約束をさせられる。そして・・・。
概要
タイトル:舞台『エウリディケ』
日程会場:
東京:2024年2月4日~18日 世田谷パブリックシアター
大阪:2024年2月24日・25日 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
出演:水嶋凜 和田雅成 櫻井章喜 有川マコト 斉藤悠 崎山つばさ 栗原英雄
作:サラ・ルール
演出:白井晃
翻訳:小宮山 智津子
音楽:林正樹 演奏:林正樹(ピアノ) 藤本一馬(ギター)
チケット:全席指定 12,000円
東京公演主催:ミックスゾーン、エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
大阪公演主催:リバティ・コンサーツ
企画・製作:ミックスゾーン
問合:
(東京)https://supportform.jp/event(平日10:00~17:00)
(大阪)0570-200-888 (平日・土曜11:00~18:00 ※日祝休み)