「OH!マイママ」が3月7日より新宿・シアターサンモールにて開幕する。
「OH!マイママ」は2009年に東京で初演した作品。
主催より
初演は1993年ですが、しかし作品の良さは笑いだけではない、と考えて2009年版は、演出は勿論のこと、新翻訳で臨みました。そこで演出家が稽古前に考えたのは、性同一性障害についてでした。多くの書籍や資料を読み、改めてこの障害の本質や、周りからの視点を考えたのです。一言では言えませんが、弱者を傷付けないという優しさと、物語にある家族や夫婦の愛情をリンクさせること、背景となる時代も感じさせての演出が重要と方向は決まりました。
主人公は、違和感の中で生きる事、苦しみといえるレベルの、自身も含めた周りとの葛藤。しかし作者はこれをコメディとして書いている訳で、重いそして大切なメッセージが込められながらも、大衆性を重んじた作風の魅力も引き出す、ということで始まりました。そこを翻訳者とも確かめながら、上演台本は作られました。そして結果として、大きな成果を生み出すことが出来たのです。
2009年に性同一性障害についての理解は始まり始めたと言えますが、現在まで大きく社会が認めるようにはなりませんでした。この理解は、多様性を認める事、少数である他者を尊重する事、が重要です。いま民主主義の基本が後退しているという現状が、性同一性障害への理解を前進どころか、後退させています。
劇団として、前回の創作メンバー(スタッフ)はそのままに、俳優をNLTのコメディ路線第二世代で上演できるなら、と再演を決定しました。1993年から2009年の上演も「新しい酒は新しい革袋に盛れ」と、大きく刷新しましたが、今回も本質は変えずに新たな挑戦を行う、ことわざ通りの試みです。
<稽古の様子>
あらすじ
この秘密だけは決して人には喋らないでください!
フランスの国会議員アルベールの妻マリィは、25年前に謎の失踪。
一人息子のルイは、アルベールとマリィの幼なじみマチルドが面倒を見てきた。
アルベールは、息子の結婚が決まったのを機に、自分もマチルドとの結婚を決め、親子で同じ日に結婚式を挙げることに。一家が幸せいっぱいのある日、アメリカの陸軍大佐フランクがアルベールを訪ねてやってきた。国連の人権委員としての訪問のはずが、フランクの話題と視線は政治の話などそっちのけ。何やらいわくありげに25年前に失踪した妻の話をほのめかし、アルベールを動揺させる。しかしフランクが一番気になっているのは、アルベールではなく、息子ルイのこと?挙句に結婚にまで口を出し始めて……一体フランクとは何者なのか…?
フランクの正体は、25年前に失踪したマリィだったのです!当時、外務省に務めていたマリィは国家の秘密を知り、やむをえず国外へ身を隠さねばならなくなってしまいました。名前と顔を変えるなら、性別も変えてしまおう……と、マリィは女性からフランクという男性に性転換したのでした。それを知ったアルベールは大パニック。この秘密だけは決してルイに知られてはならない!知られたら全ては破滅だ。七転八倒の大騒動!!こんなに笑えるのにどうしてこんなに切ないの?
現代ブールヴァールコメディの自信作!「OH!マイママ、瞼の母は今どこに」
キャスト・キャラクター紹介
フランク・J・ハーダー:海宝弘之
アメリカ合衆国陸軍大佐
国連の人権委員としてユネスコに派遣されている。
大きな秘密を握り(?)アルベール宅を訪問する・・・。
マチルド・ラスブリー:安奈ゆかり
アルベールの婚約者
アルベールとアルベールの失踪した妻・マリィとは
高校時代からの友人。
昔からずっとアルベールを慕っていた。
アルベール・ラマール:渡辺力
フランス国会議員
与党から野党に政権交代の憂き目にあう。
支持率を気にしていて、息子ルイと自身の結婚式を
同日に挙げ、話題づくりを企む。
ルイ・ラマール:小泉駿也
アルベールの一人息子
婚約者との結婚を控え浮かれ気分。
建築家としての人生を歩み始めたが、
婚約者に大物不動産デベロッパーの娘を選ぶというちゃっかり者。
ジャサント:吉越千帆
スウェーデンからの留学生
ラマール家の“お手伝い”をすることで
部屋と食事を出してもらっている、
ハウスキーパーを兼ねたホームステイ。
2009年上演
博品館劇場『OH!マイママ』
寄せられたアンケートの感想文(抜粋)
・とてもよくできたお芝居でした。フランス的な自由な話。結末もオシャレでした。皆さんとても上手に演じられていて、大佐が女性っぽさを上手に出していてうまいです。音楽も効果的でした。(40代 男性)
・すごく良かったです。喜劇を観るのは初めてですが、とてもおもしろかった。笑うところはたくさんありますが、ただ笑わせるだけでなく、ストーリーの軸がぶれずに進んで、最後はホロリとさせられました。役者の演技、間やタイミングがばっちりでした。(30代 女性)
・じわじわとわき出る笑い。楽しかった。活動的でテンポがいい。親友がパパと誤解される一部の終わりは感動場面。俳優さんの目がイキていてよかった。さすが目力。NLTのお芝居はいつも楽しませてくれて、明るい気分で帰れます。元気になり感謝。
・ストーリーの展開が次にどうなるのか予測がつかず、笑いの中で次第に流れに引き寄せられました。愛と笑いの中で、家族の大切さを温かく感じることができました。(50代 男性)
・とても幸せな気分になれました。性別の問題は色々と難しいものではあるけれど、この劇のように幸せになれたらいいな。大佐、素敵でした。時々見せる女性らしい仕草がまたよかったです。(20代 女性)
・おもしろかったです。本がよくできているから、無理な話が無理なく見せられ大笑いしました。たった5人でこれだけ楽しませてもらえるって!皆さん素晴らしかったです。
・抱腹絶倒とはこのこと!しかもホロリとさせる人の世の情の世界が全スタッフ・キャストに支えられて描き出されている。安心して舞台に集中できる。(70代 男性)
概要
原題 : LA BERLUE OU LE MASCULIN SINGULIER
『一時的幻暈あるいは男性単数〔奇妙な男性〕』
作者: jean-Jacques BRICAIRE - Maurice LASAYGUES
ジーンジャック・ブリケール&モーリス・ラセイグ
日程・会場:2024年3月6日(水)~10日(日) シアターサンモール
スタッフ
訳:佐藤康
演出:釜紹人
美術:西川成美
照明:成瀬裕一
音響:小林 史
衣裳:倉岡智一
舞台監督:竹内一貴
制作:小川浩 中山百夏
問い合わせ
NLT:TEL:03-5363-6048(平日11:00~17:00)