数々の演劇賞を受賞したブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』が`24年3月に豪華キャストで日本初演。日生劇場60周年イヤーの締めくくりを飾る。`01年の同時多発テロの裏で起きた実話を基にしたストーリー。
物語はスピーディーに展開する、キャスト全員が登場、歌、歌、歌。街の説明など淀みなく進行。そして『その日』、アメリカで事件が起こったという。そして一瞬にして飛行機内、乗客、客室乗務員がいる。街はてんてこまい、おおわらわ。急にいろんなものが必要になる。トイレットペーパーは?紙おむつは?飛行機の乗客は不安でいっぱい、どこへいくのかわからない状況。
ここで聖書の有名な言葉、「思い煩うことなかれ」。最初、乗客たちはテロのことを知らなかった、「NYで事故があった」と聞かされていた。だが、もちろんすぐに本当のことがわかる。見知らぬところに連れて行かれる、それだけですごいストレスだ。カナダのニューファンドランド島の住民と飛行機でやってきた見知らぬ人々。登場する人たちの”物語”と”人間関係”、そして思わぬ出会いもあり、次第にアウェイの人々と島の住民が打ち解けていき、楽しい時間を過ごすようになってくる。
習慣、宗教、人種、男女、生い立ち、皆違う。そこを乗り越えてこの難局をどうにかしなければならない。心配なのは家族、電話、インターネットを使えるようにし、どうにか連絡をとるアウェイな人々。また、着替えもできず、島の人々は服を寄付したり、人間捨てたもんじゃないなと、ほっこりとした気持ちに。途切れない歌、音楽、また、息子は消防士という中年女性、NYで起こったのは事故ではなくテロ、息子の安否が心配。
この思わぬ事態に町長もてんてこまいだが、それでも人々をまとめる。そうこうしてるうちに飛行機が飛び立てるようになるも、いつ自分たちの飛行機が飛べるかわからない、そして知らせを受けたら即、の状況、ストレスフルだが、この状況にも終わりが見えてくる。
気のいい島の人々、皆無事に飛び立つ…とここで話が終わりと思いきや、後日談も。これが温かい話、世話になったお礼ということで寄付やら食べ物やらを送ってくるように。つまり、”交流”。そして皆、このかけがえのない日々を思い出す。2011年9月11日、ちょうど10年、なんと当時の乗客が島に戻ってくる。
人と人の繋がり、心と心が結ばれる。楽しいシーン、気持ちが優しくなれるシーン、ちょっと笑っちゃうようなシーン、そんな温かいシーンの連続。また、楽器に注目、ギター、ペニー・ホイッスル、アコーディオン、バウロン、フィドル、独特な音楽を編み出す。ペニー・ホイッスル)は、アイルランド語ではファドーグ (feadóg) またはファドーグ・スターン (feadóg stáin) と呼ぶ。バウロンはアイルランド音楽に用いられるアイルランドのフレームドラム、フィドルは弓を用いて演奏する擦弦楽器、特にヴァイオリンを指す名称。「ヴァイオリン」という言葉がイタリア語から派生した言葉であるのに対し、「フィドル」は英語。よってメロディはエスニックなテイストで心地よく温かい。
ゲネプロの前に会見が行われた。
クリストファー・アシュリー「9年間、この作品を作ってから、大きな分断、そして大きな戦争が起こったりします。戦争があったりする中でこの作品、優しさであったり、他人に対して寛容な思いを持つ、そういう作品を広めるのは幸せなこと。この作品は実在の人間、つまり、今も生きている方々の話、そういう作品を届けるのは初めてですが、この作品にとても協力してくださっている…。みなさんとご一緒、本当に楽しい思いをしています…この人たちが好きすぎて(一同、笑)、今後のキャリアの中で、この人たち以外と仕事したくない。バンドの皆様、音楽も大事なので。感謝の気持ちでいっぱいです」
安蘭けい「約6ヶ月、稽古をして、明日初日、信じられない、密度の濃い稽古をしてきたので、素晴らしい初日になるだろうなと。とても素晴らしい言葉を言ってくださって、このキャストでしかできないことをお届けできたらと思っています、素晴らしい初日に」
石川禅「この半年間、本当に高い高いハードルを…実在した人物というのはあるけど、今も実在している人物、方々、本当に高いハードル」
どこかにいそうな人物が登場する作品は数多あるが、実在、しかも今も実在の人物が登場する作品は滅多にない。
浦井健治「始まるってことは終わっちゃう、寂しい。毎日、みんなで一緒に考えてて…やってこれたことが幸せ」
加藤和樹「稽古が始まる前からドキドキしてたんです(ミューカル界の主演級が集まってるので)。稽古を重ねてみんなが同じ時間を共有して、失敗も笑いに変えている感覚、一つのカンパニー、ファミリー、長い稽古期間で培ってきたものを舞台上で出して!」
咲妃みゆ「愛おしい日々でした。人間としてずっと心に持っていたい大切なもの。感謝しています。見所は綺麗な舞台セットです」
シルビア・グラブ「先ほど初めて照明とセットと通してきました。上を見る瞬間、めちゃ涙出てきました…最高でした。ぜひ劇場へ」
田代万里生「衣装がご覧の通り、ナチュラルです。普段着なのか衣装なのかわかりませんが(笑)。こういう作品は初めてです」
橋本さとし「町長役の橋本さとしです(名前を言っただけでなぜか共演陣の笑いが)…いっぱい稽古してやっと辿り着いた。稽古を経て劇場に入りました」
濱田めぐみ「アメリカン航空初の女性パイロットということで、機長の衣装です。稽古場にいる時から、このメンバーで…8時間ずっと一緒にいたので、ファミリーで…そのまんまステージに上がってみんなで近くでお芝居するんです。不安になっても『家族がいる』この感覚の中、稽古場で過ごしてきた半年、チームワークが垣間見れると思いますし、お客様も一員になってくださる、楽しみです。最後まで怪我なく走り抜けたいです」
森 公美子「眼鏡をかけた時はハンナです。外した時は島民です。すごい稽古して膝が死ぬかと(笑)、楽しい稽古場で、なんと7キロ痩せました(ドヨメキが)『カム フロム アウェイ ダイエット』。ドキュメント見たり9・11の映像を見たり、たくさん勉強させていただきました。私が実際にいる方に近い体型で、ハンナ、体型だけは似ています。
柚希礼音「このミュージカルは演じない…今までたくさん演じてきましたが、本当に演じずにやることがテーマ。何度も何度もそれを言われて、これがめちゃめちゃ難しかったです。すごいキャストの皆様が家族のように『こうしたらいい、ああしたらいい』とみんなが自分のことのように教えてくれるんです。作品も温かいのですが、キャストのみなさんも温かくて、ほかほかしながら、まずは明日、お客様に温かい物語を心から届けたいと思っております」
吉原光夫「ミュージカル界のオールスターが、この作品をどう届けるか、まだ始まってないので…」
また稽古中のエピソードとして差し入れの話題に
森 公美子は「誰かが稽古中、必ず何か差し入れするのが習慣になった。自分でも『あれ? こんな過酷なことをやっているのに全然、やせない。そろそろ、食べるのやめようかな?』と思ったら、やせてきた」とコメント。差し入れられたメニュー、通常の舞台の差し入れとは次元が…「ケンタッキーフライドチキンですよ。マックもあったし…普通だったら、おせんべい、お菓子が置いてあるのに、それには驚きました」リッチというかハイカロリーな差し入れ!
最後にクリストファー・アシュリーが「素晴らしいキャスト、ぜひいらしてください」と挨拶。
最後にすっかり恒例と化した橋本町長による締めのパフォーマンスでどっと笑いが。楽しく笑いが絶えない会見は終了した。
<製作発表会レポ>
<稽古場取材会レポ>
物語
9月11日
あの日、世界が停止した。
9月12日
ある小さな町で起きた奇跡の物語。
この物語は私たちに、世界に希望を与えた。
2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロ事件の発生。アメリカの領空が急遽閉鎖された。目的地を失った38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員たち。行き場のない38機の飛行機は、カナダのニューファンドランド島のガンダー国際空港に降り立つ。
カナダの小さな町。わずか1万人の人口は一夜にして約2倍となった。人種も出身も様々な人々はこの地でどんな5日間を過ごし、飛びたつのか―
概要
<東京公演>
期間:2024年3月7日(木)~29日(金)
会場:日生劇場
主催・企画制作:ホリプロ
※大阪、愛知、福岡、熊本、群馬公演あり
<キャスト>(五十音順)
安蘭けい
石川 禅
浦井健治
加藤和樹
咲妃みゆ
シルビア・グラブ
田代万里生
橋本さとし
濱田めぐみ
森 公美子
柚希礼音
吉原光夫
スタンバイ:
上條 駿、栗山絵美、湊 陽奈、安福 毅
<スタッフ>
脚本・音楽・歌詞:アイリーン・サンコフ/デイヴィッド・ヘイン
演出:クリストファー・アシュリー
ミュージカルステージング:ケリー・ディヴァイン
翻訳:常田景子
訳詞:高橋亜子
■レジデントチーム
音楽監督:甲斐正人
演出補:田中麻衣子
振付補:青木美保
美術補:石原 敬
照明:日下靖順
音響:山本浩一
衣裳:阿部朱美
ヘアメイク:鎌田直樹
ステージマネージャー/プロダクションマネージャー:徳永泰子
テクニカルディレクター:清水重光
演出助手:西 祐子
音楽監督助手/キーボードコンダクター:竹内 聡
歌唱指導:やまぐちあきこ
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/comefromaway2024/