葵わかな主演 白井晃演出「セツアンの善人」もうすぐ開幕

葵わかな主演 白井晃演出「セツアンの善人」が16日より開幕する。
初日に先駆けて公演の一部が披露された。公開されたのは1幕の第6場。タバコ店、未亡人のシン(あめくみちこ)とシュイ・タ(葵わかな・二役)が話をしているところにヤン・スン(木村達成)がやってくる。

男装衣装、上着に肩パットが入っており、半仮面もかなりのインパクト、歌唱シーンもあるが、ミュージカルのような歌唱場面ではない。また、葵わかながシェン・テとして登場するのだが、この早替わりは見どころポイントの一つ。

チェックの赤いスカート、赤いバンダナが印象的かつキュート。人々が集まり、シェン・テの歌唱。そしてペットボトルが飛び交う。およそ15分弱の短い時間だったが、雰囲気は十分に伝わる。貧困と不正義に満ちた社会で善良であり続けることの難しさを描いた寓意劇「セツアンの善人」、現代でも十分に説得力のあるブレヒトの名作。

フォトコールのあとに簡単な会見が行われた。
挨拶から。

白井晃「ブレヒトの作品は、パブリックシアターでは2本目になります。いい作品です。」

撮影:細野晋司

葵わかな「すごく挑戦的な作品です。お客様に観ていただいてどんなリアクションがかえってくるのか、どんな感想が出てくるのか楽しみです。お客様が入って完成する作品、一生懸命頑張ります」

木村達成「初日が迎えられること、嬉しく思います」

そして質問、ブレヒトの作品を上演するに当たって白井晃は「社会を描いた作品、この世の中で生きていくのに善人ではいられない…生きていくしかない、80年前に上演された作品ですが…今の社会を描いている、エンターテイメントとしても作りながらも(テーマを)お届けできる作品だと思います」また演じる役柄について葵わかなは「演じるシェン・テは神様から善人と認められる、すごくいい人で、まわりに流されるキャラクター。もう一人は架空のいとこでシュイ・タ。シェン・テが絶対にできないことをやります」木村達成が演じるには失業中のパイロット・ヤン・スン。「パイロットになることを目指しているキャラクター」また2役やることについて葵わかなは「男性を演じるのは初めてです。歩き方一つとっても違うので、難しいなと。声色も、キャラクターの違いも。歌もミュージカルの歌とは違う、色々教えていただきました。けいこ場の最後の方になって”これかな?”っていうのが見つかってきて。演じ分けも、歌い分けも難しい」また、脚が「(稽古場で)自然に広がる」と語り、さらに「体のつくり、歩き方、姿勢1つとっても違う」と男性役の難しさを語る。また、カンパニーについては「年齢差のあるカンパニー」とコメント。また白井晃は葵わかなを「一つ一つ、積み重ねていって…俳優の鏡。真面目、という人格が充満している、役に真摯に向き合い、昇華してくれる、木村くんは役者として大きくなったなと」と二人についてコメント。

最後にPR。
葵わかな「明日、初日を迎えます。80年前に書かれた作品ですが現代の社会に、皆さんにも届く作品になっています。今も変わらずに流れ続ける人々の願い、疑問がふんだんに詰め込まれています。キャラクターや音楽の力を借りて、皆様のそばにお届けできるように頑張りたい。ぜひ、楽しんで帰っていただけたら」と締めて会見は終了した。

物語
善人を探し出すという目的でアジアの都市とおぼしきセツアンの貧民窟に降り立った3人の神様たち(ラサール石井、小宮孝泰、松澤一之)は、水売りのワン(渡部豪太)に一夜の宿を貸してほしいと頼む。ワンは街中を走り回って神様を泊めてくれる家を探したが、その日暮らしの街の人々は、そんな余裕はないと断る。ようやく部屋を提供したのは、貧しい娼婦シェン・テ(葵わかな)だった。その心根に感動した神様たちは彼女を善人と認め、大金を与えて去っていった。それを元手にシェン・テは娼婦を辞めてタバコ屋を始めるが、店には知人たちが居座り始め、元来お人好しの彼女は彼らの世話までやくことになってしまう。ある日、シェン・テは、首を括ろうとしていたヤン・スン(木村達成)という失業中の元パイロットの青年を助け、彼に一目惚れをしてしまう。その日からシェン・テはヤンが復職できるように奔走し、金銭的援助もしはじめるのだが、その一方で、人助けを続けることに疲れ始めていた彼女は、冷酷にビジネスに徹する架空の従兄、シュイ・タ(葵わかな・二役)を作り出し、自らその従兄に変装をして、邪魔者を一掃するという計画を思いつく……

概要
東京
2024年10月16日(水)〜11月4日(月・振休)世田谷パブリックシアター
兵庫
2024年11月9日(土)~2024年11月10日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール

スタッフ
作:ベルトルト・ブレヒト
音楽:パウル・デッサウ
翻訳:酒寄進一
上演台本・演出:白井晃
訳詞・音楽監督:国広和毅

出演
葵わかな / 木村達成 / 渡部豪太 / 七瀬なつみ / あめくみちこ / 栗田桃子 / 粟野史浩 / 枝元萌 / 斉藤悠 / 小柳友 / 大場みなみ / 小日向春平 / 佐々木春香 / 小林勝也 / 松澤一之 / 小宮孝泰 / ラサール石井
演奏:磯部舞子(東京公演) / 島津由美 / 熊谷太輔 / 加藤優美(兵庫公演)

公式サイト:https://setagaya-pt.jp/stage/16042/