新演出版 ミュージカル 『タイタニック』いよいよ10月1日 開幕!

ーー史実に基づいた壮大な歴史劇、人間たちを浮き彫りにしたヒューマン・ドラマ、それがミュージカル『タイタニック』の魅力ーー

本作 ミュージカル『タイタニック』は、ピーター・ストーン原作、『NINE』『グランドホテル』『ファントム』など数々のヒットミュージカルを手がけたモーリー・イェストンの音楽・作詞によって、1997年にブロードウェイにて初演。誰もが知る、英国客船タイタニック号沈没事故を基に、その緻密なドラマ性と洗練された歌詞・楽曲は高い評価を受け、1997年度トニー賞、最優秀ミュージカル作品賞、最優秀ミュージカル脚本賞、最優秀作詞作曲賞、最優秀ミュージカル装置デザイン賞、最優秀編曲賞の5部門受賞の快挙を果たした名作。
この作品は、同じくイェストンの作曲のミュージカル『グランドホテル』と同様に、特段「主役」というものを設定せず人物それぞれの物語が並行して進む群集劇。日本では『タイタニック』と聞けば大抵の方々はジェームズ・キャメロン監督の大ヒット映画を思い出すであろう。しかし、あれはタイタニック号の沈没という歴史上の出来事をベースに作り上げたフィクション。一方、ミュージカル『タイタニック』は史実に基づいて物語が作られており、登場人物はすべて実在の人物、あるいはそれをベースに作られた人間たちであり、壮大な歴史劇となっていると言っても過言ではない。。
オリジナル・ブロードウェイ(以下BW)版では、『船』そのものが主役であるという解釈のもとの演出。多額の費用をかけて豪華客船を再現し、実際に一等客と二等客と三等客それぞれの甲板が大掛かりな機構の中で上下するという巨大な装置が目玉のひとつであり、ある意味で視覚的に訴えるスペクタクル・ミュージカルであったと言える。

タイタニック号沈没後100年を迎えた2013年。

ロンドン版として上演された本作は、演出家トム・サザーランドの「船の悲劇ではなく、実際にそこに生きた人々の物語である」という考えにより、新たに解釈し直されたものでした。新演出版『タイタニック』は、それぞれの『人間・人々』や『人生』に焦点を当てよう、という意図のもとに、台本への変更も細かく行いながら再構成が成された。
たとえば冒頭、もともとの台本では設計者アンドリュースがタイタニックの偉大さを語るシーン、それは沈没事故の責任を問う裁判の場面に変更され、被告席に立つイスメイがタイタニックに託した人類の夢を語るという形に。また、オリジナルBW版のために作曲されたにも拘らずカットになっていた美しいデュエット『この手をあなたに』が追加され、キャロラインとチャールズの物語にも更に光が当たるようになっている。
舞台美術に関しても、装置を絢爛・大掛かりに作ってしまうことで『船』そのものに必要以上に観客の注意が向いてしてしまうことを避けるために徹底的に削ぎ落とし、基本的に舞台奥のバルコニーと可動式の階段のみ、というシンプルなものにしている。
さらに、BW版の台本では30人程だったキャスト数を20人に減らしている。これにより一人の役者が演じる人物の数が多くなり、例えば一人のキャストが一等客から三等客まですべてを早替えをしながら演じ分けていくことに。これは「タイタニック号の沈没は階級社会の終焉である」という演出家の解釈に基づいたシステムで、「着ている服が違うだけで、一等客も三等客も、中身は皆同じ一人の人間なのだ」というメッセージが込められている。
また、沈没事故そのものに対しても、この新バージョンでは新解釈に基づいてアプローチ。たとえば、タイタニック号の船長と設計士とオーナーが氷山衝突事故及び沈没の責任の所在を問う場面。一日も早くアメリカに到着するためにより高速な走行を促したオーナー(イスメイ)が悪いのか?オーナーの要求を断らず速度アップの判断を下し、乗組員から送られてきた氷山の警告を無碍にした船長(スミス船長)が悪いのか?氷山との衝突で開いた穴から水が入ったことで沈むような設計にした設計士(アンドリュース)が悪いのか?これまで一般的に、あるいはBW版の中でもイスメイに非があると解釈されてきた。しかしトムは、この事故の後で船舶の安全基準が飛躍的に向上されたことに着目。イスメイその人も人類の発展に少なからず関わった人間として見つめ直し、『誰かに非があるのではなく、それぞれが自分のできるベストを尽くした結果、偶然が重なって起こった悲劇である』と事件全体を捉え直す。前述の冒頭のナンバーの変更も、この新解釈に基づいたもの。これによりイスメイも、自らの未来への希望をタイタニック号に託した他の乗客たちと同じ『人間』として描き出され、紋切り型の「悪役」というイメージから脱することに。このロンドン版を観劇したイスメイの子孫である方々は、このバージョンで打ち出された新たなイスメイ像に感銘を受け、トムに感謝の言葉を述べたそう。
キャストには、初演に続き、加藤和樹、藤岡正明、戸井勝海、津田英佑、上口耕平、小野田龍之介、栗原英雄、安寿ミラ、佐山陽規が同役で出演。鈴木壮麻と菊地美香は初演とは別の役に挑戦。相葉裕樹、木内建人、百名ヒロキ、吉田広大、小南満佑子、屋比久知奈、豊原江理佳が新キャストとして加わる。

実力派キャストによって、豪華客船タイタニック号を舞台に、乗船していたひとりひとりの人生、そこに溢れていた希望、願い、夢、そしてやがて訪れた悲劇や別れなど、現代にも通じる普遍的なテーマを流麗な音楽に乗せて丁寧に描き出す。2013年ロンドンで産声を上げ、2015年に日本版初演を果たした本作は、ヒューマンドラマに新たな光を当て「生きること、死すること」を再認識させ、観客を歴史の深淵に誘う。一度は観ておきたい作品だ。

【概要】

ミュージカル『タイタニック』

原作:ピーター・ストーン
音楽・作詞:モーリー・イェストン
演出: トム・サザーランド

出演:
加藤和樹 石川禅 藤岡正明 戸井勝海 相葉裕樹 津田英佑 渡辺大輔
上口耕平 小野田龍之介 木内健人 百名ヒロキ 吉田広大 栗原英雄
霧矢大夢 菊地美香 小南満佑子 屋比久知奈 豊原江理佳
安寿ミラ 佐山陽規 鈴木壮麻
日程・場所:
2018年10月1日~13日/東京・日本青年館ホール
2018年10月17日~22日/大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

企画・制作・主催:梅田芸術劇場

公式HP:http://www.umegei.com/titanic-musical/