前田公輝主演ミュージカル「ミセン」上演中

韓国で社会現象を起こし、世界初の舞台化となるミュージカル「ミセン」、東京公演が始まった。
本作は、韓国のウェブコミック・WEBTOON(ウェブトゥーン)で大ヒットし、さらにドラマ化され、「ミセンシンドローム」と呼ばれるほどの社会現象を起こした。日本では、2016年よりピッコマにて連載され、同年、フジテレビ系にてリメイクドラマ「HOPE~期待ゼロの新入社員~」が放送。第20回文化庁メディア芸術祭では、マンガ部門 優秀賞を受賞している。原作漫画「未生(ミセン)」韓国のクリエイター陣と創作されるオリジナルミュージカルが日本で世界初演されるのは日本演劇界でも初。
舞台上は碁盤、映像で囲碁の様子が映し出される。石を置く音。主人公・チャン・グレ(前田公輝)はプロになりたかったが、夢破れて知人の紹介である大手企業に就職する、とは言ってもいきなり正社員ではなく、インターンシップ参加から。結果を出さなければ正社員に登用されない。だが、同期のインターンたちはかなり優秀、皆、戦い抜いてここまできたのだった。

よろしく。

配属されたのは営業第3課、パッとしない部署、ここのオ・サンシク課長(橋本じゅん)は、なかなかに熱い男。そばにはキム・ドンシク課長代理(あべこうじ)、もじゃもじゃヘアーがトレードマーク。忙しいオフィスの様子、キャッチーなナンバーが次々と繰り出され、ダンス、マイムで綴られる。「胸に社員証かけて笑おう」と歌う、仕事に情熱と誇りを持ち、やる気が感じられる歌詞。チャン・グレの母(安蘭けい)は息子が大手企業に就職したことを心から喜ぶ。息子のネクタイを結ぶが、その結び方が…そこはご愛嬌。

ネクタイの結び方が変。母親が結んだもの。

チャン・グレはオフィスでコピーをとってくるように言われるがサクッとできない。社会人としてのスキルも学歴もないチャン・グレ。個性的な同期、アン・ヨンイ(清水くるみ)、ハン・ソギュル(内海啓貴)、チャン・ベッキ(糸川耀士郎)、皆、”デキる”風情でなかなかにアグレッシブ。会社あるあるの光景、プレゼンや上司とのやりとり、日常の光景。どこかにいそうな会社の面々、チェ・ヨンフ専務(石川禅)はオ・サンシクに「上を目指せ」と言う。ソン・ジヨン(安蘭けい)は女性社員でもやり手で次長職についている。

やり手な次長。
胡麻をすられてご満悦。
同期、肩組んでビール。

出世のためなら、どんな方法でも構わないと考えるパク・ジョンシク課長(中井智彦)、注目株なだけに取り巻きも多い。仕事帰りは居酒屋でビール、これは韓国でも日本でも変わらない、居酒屋の店長(東山光明)がアゲアゲな雰囲気。そして次第に仕事に、会社に慣れていくチャン・グレ、最初は右往左往していたが、囲碁で培った戦略的な思考方法を仕事に応用するようになり、成果をあげていくようになる、というのが大体の流れ。
チャン・グレが主人公であるが、群像劇的な要素もある。オ・サンシク課長、彼とは真逆なパク・ジョンシク課長、同期たち、女性次長のソン・ジヨン、彼らの感情や考え、行動もしっかり描かれており、見応え十分。休憩をはさんで2幕目からはチャン・グレが本格的にプロジェクトに取り組む姿を中心に。ラスト近くはもちろん、プレゼンシーン。このプレゼン、吉とでるのか凶と出るのか、そこは劇場で!

絶対成功したいプレゼン。
相手は専務。

チャン・グレの母。演じるは安蘭けい。
会社で働く女性にとって次長は輝く星、「頑張ろう」という気持ちに。
母を想い、息子を想う。

チャン・グレ演じる前田公輝、爽やかな好青年といった風情、母を思うシーンはちょっと胸熱、歌唱もしっかり。彼に多大な影響を与えるオ・サンシク課長、橋本じゅんががっちり、特にずっと上の役職のチェ・ヨンフ専務と渡り合うところは課長職にも関わらず、専務としっかり話し合う場面はつい「こんな課長が身近にいたらな」と思わせてくれる、いわば”理想の上司”だ。同期の三人、チャン・グレに協力する場面、「会社にずっといようがいまいが同期は同期」の絆を感じさせてくれる。ビール片手に肩を組み、わいわいと。会社のリアルが描かれているので、会社に勤めている人はもちろん、就職活動中の学生など必見。会社員としての生き方、つまり現代社会において人としてどう行動するか、生きるかを見せてくれる。

身近な場所”会社”、囲碁の勝負の世界と時々フィックスするところは秀逸、タイトルの「ミセン」は「未生」と書くが、ミセン(未生)とは囲碁で、碁盤上にある石が完全には生かされていない状態のことを指す。つまり、ミセン(未生)の石は進め方次第で「ワンセン(完生)=完全に生かされている状態」になる。なかなかに心憎いタイトル、東京公演は11日まで。

あらすじ
主人公のチャン・グレは子供の頃から囲碁のプロ棋士になることを目指し厳しい修練を重ねてきたが、囲碁のプロ棋士になる夢を諦めざるを得なくなり、社会に放り出されてしまう。特別な学歴やスキルがない彼は、働くことに対して強い不安を抱えながらも、知人の紹介で大手貿易会社「ワン・インターナショナル」のインターンシップに参加することとなる。入社早々、グレは厳しい現実に直面する。熾烈な争いを勝ち抜いてきたエリートばかりの同期インターンたち。企業社会での経験が皆無のグレは、明らかに遅れを取っている。エリート街道を歩んできたアン・ヨンイや、地方出身で努力家のハン・ソギュル、学歴もありプライドも高いチャン・ベッキ、といった個性的なメンバーが揃い、それぞれが異なる課題に直面しながらも競い合っている。グレが配属された第3課は会社では日陰の存在。この課を率いるのが、情熱と人間味あふれるオ・サンシク課長。オ課長は、表向きはぶっきらぼうで口が悪いものの、部下たちを思いやり、仕事に対する強い誇りを持つ姿は、「会社員としての生き方」をチャン・グレに教えていく。彼の指導の下、グレは自分の経験や囲碁で培った戦略的思考を仕事に応用し、少しずつ成果を上げていく。インターン生たちもそれぞれの試練を乗り越え、個々の成長だけでなく、互いに支え合いながら成長する重要性を学んでいくことになる。 「ミセン」は、企業を舞台にした物語でありながら、企業内での出来事を通じて社会全体の縮図を描き出している。働くことの意味、人間関係の複雑さや仲間との絆、個々の成長と葛藤がリアルに描かれ、登場人物たちがさまざまな社会的な課題に直面しながら人生を選択していく。企業という社会で繰り広げられる物語は、観客の共感を呼び、働き生きることについて深く考えさせられる。

概要
東京公演
日程・会場:2025年2月6日(木)~2月11日(火祝) めぐろパーシモンホール 大ホール

ツアー公演詳細 公演終了
<大阪公演>
期間:
プレビュー公演=2025年1月10日(金)
本公演=2025年1月11日(土)~14日(火)
会場:新歌舞伎座
主催:新歌舞伎座
お問い合わせ:新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222(11:00~16:00)
URL: https://www.shinkabukiza.co.jp/
<愛知公演>
期間:2025年2月1日(土)~2日(日)
会場:愛知県芸術劇場大ホール
お問い合わせ:中京テレビクリエイション052-588-4477 (平日11:00~17:00)

新作ミュージカル『ミセン』
<キャスト>
チャン・グレ:前田公輝
オ・サンシク課長:橋本じゅん
アン・ヨンイ:清水くるみ
ハン・ソギュル:内海啓貴
チャン・ベッキ:糸川耀士郎
パク・ジョンシク課長:中井智彦
キム・ドンシク課長代理:あべこうじ
居酒屋店長/協力会社社長:東山光明
チェ・ヨンフ専務:石川禅
ソン・ジヨン次長/チャン・グレの母:安蘭けい

伊藤かの子、岡田治己、加賀谷真聡、加藤さや香、工藤彩、熊澤沙穂、田村雄一、俵和也、照井裕隆、永松樹、早川一矢、MAOTO、加藤文華(スウィング)、りんたろう(スウィング)

<スタッフ>
原作著者:ユン・テホ
著作権者:SUPERCOMIX STUDIO
脚本・歌詞:パク・ヘリム
音楽:チェ・ジョンユン
翻訳・訳詞:高橋亜子
演出:オ・ルピナ
振付・ステージング:KAORIalive
音楽監督・編曲:前嶋康明
ボーカルアレンジ:イ・ミンヒ
美術:石原敬
照明:齋藤茂雄
音響:山本浩一
映像:上田大樹
衣裳:尾崎由佳子
ヘアメイク:宮内宏明
声楽指導:長谷川開
演出助手:元吉庸泰
舞台監督:加藤高
下訳:キム・テイ
稽古ピアノ:野口彰子/石川花蓮

主催・企画制作:ホリプロ
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
後援:目黒区

公式HP= https://horipro-stage.jp/stage/misaeng2025/
公式X= https://x.com/misaengmusical
公式Instagram= https://www.instagram.com/misaengmusical/

(C) Yoon, Tae Ho / SUPERCOMIX STUDIO Corp.