
プッチーニ没後100年を記念し、今までオペラを観たことがない方々にもオペラを身近に感じる朗読形式によりわかりやすくしたリーディング・オペラ«op.2»『蝶々夫人』が開幕した。
⾧崎を舞台に没落藩士令嬢の蝶々さんと、アメリカ海軍士官ピンカートンとの悲恋。主演・蝶々夫人役には、柏木ひなた。蝶々さんと結婚するピンカートン役は上原理生。⾧崎に住むアメリカ人達を世話する領事シャープレス役は、宮原浩暢が、そして蝶々夫人を支える女中のスズキ役は、歌舞伎俳優の市川笑三郎が担う。 演出は、中世から現代音楽に至るまで、声楽家としても国内外のオペラ・コンサートや『題名のない音楽会』等の TV 出演など幅広く活躍し多数の受賞歴を持つ、彌勒忠史。
音楽は原作の楽曲に加え、公演のためにアレンジ。多国文化が交わる明治時代の⾧崎の音を、箏(日本)、二胡(中国)、アコーディオン(西洋)の生演奏で表現。代表曲『ある晴れた日に』等の名曲を現代風に歌唱する。
まず、登場するのが市川笑三郎(スズキ(女中))、原作やオペラ『蝶々夫人』誕生の経緯をわかりやすく説明してくれるので「タイトルは知ってるけど、内容はよく知らない」「蝶々夫人って可哀想なんだよね」ぐらいの知識でも大丈夫。ここでしっかりと!それから始まる。

物語はオペラ『蝶々夫人』と同じ。ただし、キャストが4人なので、オペラに詳しい観客は「このキャラがいない」など、細かいところはすぐにわかるはず。有名なアリア、「ある晴れた日に」などよく知られている曲は”お約束”。
このリーディング・オペラ、”朗読”にして登場人物も整理し、物語の輪郭をはっきりさせていることと、生演奏が、アコーディオン、二十五絃箏、二胡。不思議な組み合わせに見えるが、時代設定や雰囲気によくマッチ。特に二十五絃箏は通常の琴(13絃)より絃の数が多いので音に厚みが出る。この3つの楽器が奏でる音色は聞き応えあり。



そしてキャスト、4人ともとにかく歌唱力が高い。柏木ひなたはよく通る高音で蝶々夫人の心境を表現、また、蝶々夫人の年齢設定は15歳、中学3年生か高校1年生、年相応な純真無垢さ、そして武士の娘らしい、凛とした佇まいを体現。そして、ピンカートン演じる上原理生とシャープレスの宮原浩暢、この2人、芸大の声楽科出身、オペラの歌唱はお手のもので、それぞれのソロは聴きどころで圧巻。パワフルで情感豊かな歌声が会場いっぱいに響き渡る。このピンカートンとシャープレス、真逆な男性。ピンカートンは、この結婚も一時の愛だと思い、一方のシャープレスは紹介した少女がこの結婚が永久の縁と堅く信じていることを思い出し、戸惑い、心配する、1幕で「戯れの恋に気を付けろ」を歌唱。


そして八面六臂の活躍を見せるのがスズキ演じる市川笑三郎。スズキの他に演じているキャラクターがあるが、その演じ分けは流石、「イザナギ イザナミ」の歌唱も並み居るミュージカル俳優に負けないくらい!女中のスズキ、主人である蝶々夫人に忠実であり、時にはコミカルに見える瞬間もあり、見逃せないキャラクター。結末は言わずもがな、その悲劇、蝶々夫人の崇高なまでの純粋さ、ピンカートンは己を恥じる。なお、歌われる曲は全部で8曲。


カーテンコールでは4人揃っての「ある晴れた日に」を歌唱。オペラ入門としても、うってつけのリーディング・オペラ。会場も東京はイタリア文化会館ホール、場所が粋、6日まで。その後は横須賀、大阪とまわる。
▼蝶々夫人:柏木ひなた
無事に初日を迎えることができ安心しております。
「蝶々夫人」という作品が大きすぎて迷いに迷いましたが、蝶々さんを演じることができとても光栄です。
座長になってるみたいですが、、、何にもできていない状態なので、
ただとにかく必死にくらいついております。笑
今回はリーディングということで、初めてこの作品に触れられる皆さまにも噛み砕いてわかりやすく物語をお届けできるかなと。
普段ステージで交わることのない豪華な皆さまとの掛け合い、そして音楽や歌もここでしか味わえないものだと思いますのでぜひ楽しんでご観劇いただきたいです。どうぞ最後までよろしくお願いいたします。
▼ピンカートン:上原理生
蝶々夫人と結婚するピンカートン役を演じます。この作品のタイトルを耳にしたことがある人は、たくさんいらっしゃるでしょうけれども、本日生まれるこのリーディング・オペラ『蝶々夫人』は、出演者4人で物語を紡ぎ、音楽はお箏と二胡、アコーディオンという国際色豊かな編成でお届けします。異国情緒あふれる当時の長崎の空気を感じていただけたらと思っております。蝶々さんの健気で一途に愛する姿をより感じていただくために、私は不祥な男に徹しようと思います。お楽しみください。
▼シャープレス:宮原浩暢(LE VELVETS)
初日を迎えることができました。有名なオペラとして憧れの作品で、今回参加することができて嬉しく思っております。アメリカ領事のシャープレスは、蝶々夫人のことを気づかいつつ、同じ国のピンカートンのことも諭しながらサポートする、そんな役柄でございます。音楽がとにかく素晴らしいので、まず耳で、そしてそれぞれからにじみ出てくる表情も楽しんでいただきたいです。心に残る作品を届けるべく準備して参りました。精一杯頑張ります。
▼スズキ:市川笑三郎
このお話をいただいた時から本日まで本当に楽しみにしておりました。ミュージカルの世界で活躍されている方のお歌を身近に聞き、こんな贅沢なことはないと思いながら稽古いたしました。今回私が勤めさていただくスズキ役は、私が生業としております女形をキャスティングいただいたことが、ひとつの見どころなのかなと思っております。女形だからこそできるものや女形の面白さ、衣裳やカツラは着けておりませんが、皆さんに想像していただいたり楽しんでいただけるように努めさせていただこうと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
概要
タイトル:リーディング・オペラ«op.2»『蝶々夫人』
会期会場:
東京:2025年3月4日(火)~3月6日(木) イタリア文化会館ホール
横須賀:2025年3月15日(土)~3月16日(日) ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
大阪:2025年3月21日(金)~3月23日(日) 近鉄アート館
演出:彌勒忠史
出演
蝶々夫人:柏木ひなた
ピンカートン(アメリカ海軍士官):上原理生
シャープレス(領事):宮原浩暢(LE VELVETS)
スズキ(女中):市川笑三郎
企画・製作:アーティストジャパン
問合:03-6820-3500(平日11時~18時)
公式WEBサイト:https://artistjapan.co.jp/
(C) 2025.リーディング・オペラ《op.2》蝶々夫人