
望海風斗主演、偉大なオペラ歌手マリア・カラスを題材にした『マスタークラス』が開幕。
2017~2021年、宝塚歌劇団雪組のトップスターとして活躍し、歌・演技・ダンス三拍子揃った実力と類まれなる表現力で稀代の人気と存在感を誇るミュージカルスター望海風斗がストレートプレイに初挑戦。
1995年ブロードウェイで誕生した本作は、日本では黒柳徹子主演による1996年の初演、1999年の再演以来、26年ぶりの上演。
客席前列に観客を入れてのゲネプロ。マリア・カラス(望海風斗)が登場、ここはジュリアード音楽院、という設定。「拍手はやめて…レッスンなんだから…ここは劇場ではありません」と客席に語りかける。「じゃあ、始めましょうか、みんな来てます?音楽に集中するんです」マスタークラス、専門分野のエキスパートが参加者に対して高度な知識や技術を教授する特別なセッションを指す。ここは普通の音楽院ではない、ジュリアード音楽院、世界でも有数の音楽学校だから当然と言えば当然、観客はクラスを受講する生徒に見立てているわけだ。マリア・カラスは自分に厳しかった、努力を怠らない、「センスを磨けばなんとかなるんです」と。サナダムシを利用して106kg あった体重を約1年で 55kg まで減量したという話はあまりにも有名、人並み以上の努力をする人物。マリア・カラスの講義ではあるが、マリア・カラスの音楽に対する哲学、情熱が痛いほど伝わる。ユーモアを交えつつ、的確だが辛辣な言葉で、芸術に向き合う術を惜しみなく若者たちに伝えようとするマリア・カラス。生徒の歌声を聴く、過去の輝かしい舞台や想い出がよみがえってくるマリア・カラス、光もあれば影もある。
波瀾万丈の人生、貧しいギリシア移民の娘としてニューヨークに生まれ、長きにわたる厳格な訓練、天賦の才能、常に120%の実力を出し続け、得意とした「劇的」な「ベルカント」唱法を続けた結果、声の寿命を縮めてしまった。ドラマティクな見せ場をつくり、観衆を圧倒し、熱狂させた。舞台上でも、その割れんばかりの拍手の音が流れる。圧倒的、20世紀を代表するオペラ歌手、この舞台のみならず、映画『私はマリア・カラス』もあり、21世紀になっても、マリア・カラスはまだまだその”存在”は失われていない。
休憩を挟んで2幕、講義は続く。途中で照明が変わり、マリア・カラスとギリシアの海運王との恋愛、もちろん、マリア・カラス視点で表現される。生涯愛し続けたオナシス、だが、交際中にオナシスはジャクリーン・ケネディと結婚。オペラ界での名声、栄誉、それと裏腹な恋、筆舌に尽くしがたい苦しみ、悲しみを望海風斗が全身全霊で慟哭する。
緩急つけた構成の戯曲、客席からは時折、笑いも起こる。共演の俳優陣、ジュリアード音楽院でマリア・カラスに教わるという設定なので、皆、すこぶる歌が上手い!池松日佳瑠は『ライオン・キング』でヤング・ナラ、ナラを演じていたし、林真悠美は藤原歌劇団正団員・日本オペラ協会会員(ソプラノ)、有本康人はオペラ歌手で藤原歌劇団。石井雅登はミュージカル作品に多数出演、講義中のピアノ伴奏は谷本喜基、伴奏者(コレペティ)役。
ちなみにコレペティとはオペラ歌手と1対1になり、新しい公演のための曲を教える教師役になる人を指す。そんなところにも注目すると舞台は俄然、面白くなる。公演は23日まで、世田谷パブリックシアターにて。
イントロダクション
「20世紀最高峰のオペラ歌手」と言われたマリア・カラスは、才能に奢らず、努力をし続け、技術もさることながら表現力豊かな力強いソプラノで多くの人々を魅了するとともに、後世の歌手に大きな影響を与えました。そんな彼女が引退後にアメリカのジュリアード音楽院の学生に向けて、特別講義を行います。授業を通して彼女にとっての音楽とは何か、そして人生とは何かを明らかにする物語。
概要
舞台「マスタークラス」
日程・会場:
東京
2025年3月14日(金)~3月23日(日) 世田谷パブリックシアター
長野
3月29日(土)~3月30日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
愛知
4月5日(土)・4月6日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT
大阪
4月12日(土)~4月20日(日) 大阪・サンケイホールブリーゼ
作:テレンス・マクナリー
翻訳:黒田絵美子
演出:森新太郎
出演:望海風斗
池松日佳瑠、林真悠美、有本康人、石井雅登
谷本喜基
スウィング:岡田美優、中田翔真