
舞台『シークレットライフ – Secret Life of Humans』がシアタートラムにて開幕。
出演は、主人公“ジェイミー・ブロノフスキー”役に、7 MEN 侍の本髙克樹。“ジェイミー”と出逢う大学講師“エイヴァ”役を山谷花純。そして、ジェイコブ・ブロノフスキーをモデルとした“ブルーノ・ブロノフスキー”役を髙橋洋。“ブルーノ”の同僚“ジョージ”役を須賀貴匡。ブルーノの亡き妻“リタ・ブロノフスキー”役を実咲凜音といった、実力派俳優がキャスティング。
本作は、ジェイコブ・ブロノフスキー著『人間の進歩』と、2014年発刊以来爆発的なムーブメントとなったユヴァル・ノア・ハラリ著「サピエンス全史」からインスピレーションを受け、世界最注目の現代英国劇作家デイビッド・バインによって作り上げられた舞台作品。2017年「エディンバラ演劇祭」にて上演されて以来、大きな話題となり、ロンドン公演、オフブロードウェイ、ドイツでも上演され、人類の歴史と倫理に対する問いかけを提起。
客席から1人の女性が登場、大学教授のエイヴァ(山谷花純)、客席に向かって語りかける「どこから始めましょう」「ここにいるのは人間だけ?」客席は彼女の講義を聞きにきた聴衆という設定、「これは私の最後の講義」という。それからジェイミー(本髙克樹)が登場、舞台上でサラダを食べる、なかなかにキャッチーな出だし。
舞台後方、TV出演しているブルーノ・ブロノフスキー(髙橋洋)、このキャラクターのモデルはジェイコブ・ブロノフスキー(Jacob Bronowski 1908年〜1974年)、BBCの科学ドキュメンタリーの作家であり、科学の解説者、ポーランド出身・ユダヤ系。ブルーノの最後のTV出演、そののち亡くなる。

孫のジェイミー、エイヴァとレストランで食事、自分はブルーノ・ブロノフスキーの孫だと明かし、驚くエイヴァ。そしてブルーノの秘密の部屋があると打ち明け、二人はその秘密の部屋に入り、残されている手紙や文書を見つけて…という流れ。

時間軸は行ったりきたり、時には過去と現在が同時に舞台上に。現代に生きるジェイミーとエイヴァは残された書類を紐解き、そこで浮かび上がる様々な衝撃的な事実。「1943年…」戦時中の資料、場面が展開、ブルーノ・ブロノフスキーと同僚のジョージ(須賀貴匡)の会話、「国家機密に関わる」と告げられるブルーノ。

今年は日本で万博が開催される、1970年の万博のキャッチフレーズは『人類の進歩と調和』。だが、人類は本当に進歩したのか?そんな根源的な疑問を観客に投げかける。「未来への恐怖が人類を変えた」という言葉も出てくる。コロナ禍が始まったばかりのころ、店頭からマスクが消えた、先々の不安で買いだめに走った結果、身近な事例では、そんなこともあった。食料への不安、「小麦は私たちを縛り続ける」とも言う。戦争はなぜ起こるのか、戦争に勝たなければ未来が不安、そういう『不安』『恐怖』が根元にあるのでは?と我々は気付かされる。

現代に生きるジェイミーとエイヴァは、次々と出てくる驚きの事実にたじろぎつつも、自分たちはこれからどうあるべきか、ということに向き合う。とりわけ、ジェイミーにとっては祖父だ。史実でも、ブロノフスキーは第二次世界大戦中はオペレーションズ・リサーチ研究に従事していた。そしてドイツ攻撃の有効性を調べて、さらには日本の爆撃をより効果的にするため、数学的統計学的部隊(ユニット)の長となった。
爆撃戦略に対する数学的アプローチ、ステージに映し出される、その”功績”が示される。それでどのくらいの人類がこの世を去ったのか、調べれば、調べるほど、その重みに耐えきれない気持ちになってくる。一方で私生活では愛妻家、妻・リタ(実咲凜音)とは夫婦仲はよかったし、ここでもそれが描かれている。
人類の歴史は過ちの繰り返し、ジェイコブ・ブロノフスキーは多くの命を奪う爆発物に加担したわけだが、その罪の意識に苛まれていたという。一方で彼の著書『人間の進歩』、人類の起源から現代文明まで,人間の手が何を作り,頭脳が何を考え出したか,その創造と探究の大長征を展望。豊富な話題と人間讃歌にみちた科学技術史、文化史。ラスト近く、ブルーノは「慈愛と寛容が不可欠」という。
たどり着いた結論なのだろうか、観客の数だけ解釈があるこの作品。人類の未来はどこへいくのか、そんな想いに駆られるノンストップの1時間45分。
ゲネプロ後に簡単な会見が行われた。
本髙克樹「ジェイミーは、祖父・ブルーノの秘密を知って、今後どう生きていくかという役どころです。このお話をいただいたときは今とは違う7 MEN 侍にいました。ちょうど、稽古が始まる前の日にB&ZAIに所属することが発表されまして…僕としても、新しいグループでの第1歩、今後どう生きていくか…自分としてもきっかけの舞台になると思います。僕が大学院で学んでいる分野がブルーノと同じくオペレーションズ・リサーチで、今回は演者としてだけではなく、オペレーションズ・リサーチの監修にも携わりました。将来的には『自分で舞台を作りたい』という目標をずっと掲げていたので、そこに向けた1歩にもなるのかなと期待を込めています。そして完全に私事ですが、稽古が始まるタイミングでオペレーションズ・リサーチの英語論文を完成させまして、それがちょうど昨日、国際ジャーナルに採択されて論文が掲載されるということを知りました。いろいろな運命が重なり合って、今、この場にいるんだと実感しています」
山谷花純 「3月の頭ぐらいにこの舞台のお話を頂きまして、まさか舞台の仕事をするなんて…目まぐるしく、かけ足で、今日まで走ってきました。ぶっちゃけ、ギリギリです。お芝居には正解がないですし、この作品自体、答えを出すことは必要ないと思っています。最後の最後まで諦めずにエヴァンと一緒に戦っていけたら」
須賀貴匡「この作品は難しいように感じるかもしれません。色々と難しい用語がたくさん出てきますが、ざっくりと言えば”普遍的な人類愛の話”だと思っています。優秀な座長と優秀な俳優さんたちに日々刺激されながら、ここまで作ってきたつもりです。最後までしっかりと皆様にお届けできるように、日々これからも成長できるように」
実咲凜音「私はストレートプレイが初めてで、いつもミュージカルで音楽がある状況が多かったので、稽古が始まった当初は何の音もない中で喋っていると不安になってしまうこともありましたが、今回の作品を通して、言葉を届ける大切さや、言葉の強さというものを、改めて学ばさせていただいていると実感しております。今回のキャストの皆さんは本当に穏やかです。物語的に難しい部分、疑問点もたくさんありましたが、稽古をする中でみんなで一緒に解決しながら作ってまいりました。スタッフの方々も含めて作ってきたのを強く感じています。かっちゃん(本髙克樹のこと)が今日、大きな椅子を持ってきました。楽屋に椅子を持ってきた俳優さんを初めて見ました(”楽屋で寝るためのリラックスチェア”と本髙克樹)。千秋楽まで、日々、成長していきたいです」
髙橋洋「今日の夜から初日です。落ち着いて出来るかな、どんなお客さんが入ってくださるのかなと、いつもと同じ感覚でリラックスして演じているつもりだったのですが、先ほどワイングラスを割ってしまい…力が入っているんだなと反省しました。僕はブルーノ役として、結構難しいことを話していますが、かっちゃんは本当に理解してるみたいですが、僕自身は本当に分からなくて…観ている方も分からないからとストップせずに、とばしながらも物語と一緒に前に進んでいただければ」
最後に公演PR。
本髙克樹「すごく壮大でありながらも、繊細なテーマを扱っています。少しでも皆さんに理解していただけるよう、スタッフさんと協力して作りました。人間の進歩、僕らが前進しているところを皆さんに見て感じていただけたらと…僕らカンパニーも最後まで誰1人欠けることなく、健康に気を付けて頑張っていきたいです」
あらすじ
イギリスの統計学者で、「人間の進歩」の著者であるブルーノ・ブロノフスキー。
孫のジェイミーはある日、大学教授のエイヴァと出逢う。ジェイミーはエイヴァとの初めてのデートで、自分の祖父ブルーノ・ブロノフスキーには秘密の部屋が存在することを打ち明ける。その夜、二人は秘密の部屋の扉を開け、歴史を遡ることに・・・
しかし、そこに隠されてきたものは戦争の傷跡であったー
統計学者であった祖父が加担していた戦争の真実、それは爆弾の効果を最大化すること。
真実を知ったジェイミーは、未来にどう向き合うのか。
人間は過ちを繰り返しても進歩できるのかを追求する歴史ミステリー。
概要
舞台『シークレットライフ – Secret Life of Humans』
日程・会場:
東京
2025年3月28日(金)~4月13日(日)シアタートラム
大阪
2025年4月18日(金)~20日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
作:デイビッド・バイン
翻訳:小田島創志
演出:大河内直子
出演:本髙克樹 山谷花純 須賀貴匡 ・ 実咲凜音 髙橋洋 ほか
主催・企画・製作:エイベックス・ライヴ・クリエイティヴ
後援:ブリティッシュ・カウンシル
公式サイト https://secret-life.jp
公式SNS(X) @secretlife_jp