
これはホラーか、コメディか?全編に”気味悪さ”をまとった、異色の家族劇
A24製作により映画化もされたスティーヴン・キャラムのヒット作、待望の日本初演が6月に開幕。
劇作家・脚本家として活躍するスティーヴン・キャラムのヒット作、『ザ・ヒューマンズ─人間たち』。マンハッタンの老朽化したアパートを舞台に、感謝祭を祝うために集まったある家族の会話から、貧困、老い、病気、愛の喪失への不安、宗教をめぐる対立などが浮かびあがる一夜の物語。だんだんと吐露されていく彼らが感じている様々な不安。人間の抱える人生の大きな不安を描くこの物語の世界は、現在のアメリカの縮図であり、それは私たち日本の現在とも重なっていく。
2014年アメリカン・シアター・カンパニー製作によりシカゴで初演され、15年ラウンドアバウト・シアター・カンパニー製作によりニューヨーク、オフ・ブロードウェイで上演、16年にはキャラムのブロードウェイ・デビュー作となり、再びピュリッツァー賞演劇部門最終候補、トニー賞、ニューヨーク演劇批評家協会賞の最優秀プレイ、オビー賞劇作賞を受賞し、続いて21年、キャラム自身が監督を務め、映画化も。製作・配給を手がけたのは、「ムーンライト」「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」などアカデミー賞受賞作を連発している「A24(エートゥエンティフォー)」。リチャード・ジェンキンス、エイミー・シューマー、ビーニー・フェルドスタイン、スティーヴン・ユァンらが出演し、高い評価を得ている秀作。
そしてこの度、演出に、22年に上演した『ロビー・ヒーロー』の記憶も新しい、劇団KAKUTA主宰の桑原裕子を再び迎え、この新国立劇場にて日本初演。
キャスティングには、観客が自分自身を重ねることができる当事者性を重要視したという桑原。ブレイク家の長女で、ガールフレンドと別れたばかりの弁護士エイミーには山崎静代。作曲家を目指す次女のブリジットには、オーディションを経て出演が決定した青山美郷、その恋人・リチャードには細川 岳、認知症により車椅子生活をおくる祖母モモには稲川実代子、母ディアドラには増子倭文江、そして悪夢にうなされ不眠が続く父エリックを平田 満という多彩なキャストが集まった。
家族ドラマというジャンルに、気味悪さ、恐怖という予想外の要素を混ぜ込んだ異色作。「こういう展開、こういう作品だろう」という、観客の予想を超え続ける緊張感のある展開に加え、家族間の一筋縄ではいかない関係性、ユーモア、そして深い愛、期待を裏切らない作品であることは間違いない。
あらすじ
眠れぬ夜を過ごしているエリック(平田 満)は、感謝祭の日、フィラデルフィア郊外から、妻ディアドラ(増子倭文江)と認知症の母モモ(稲川実代子)を連れ、次女のブリジット(青山美郷)とそのボーイフレンド、リチャード(細川岳)が住むマンハッタンのアパートを訪れる。そこに長女エイミー(山崎静代)も合流し、皆で夕食を共にする。雑多なチャイナタウンにある老朽化したアパートでは、階上の住人の奇怪な物音や、階下のランドリールームの轟音がして、祝日だというのに落ち着かない。そんな中始まった食事会では、次第にそれぞれがいま抱える人生の不安や悩みを語り出し、だんだんと陰鬱な雰囲気を帯びてくる。その時、部屋の照明が消え、不気味な出来事が次々起こり……。
概要
日程・会場:2025年6月12日(木)~29日(日)新国立劇場 小劇場
作:スティーヴン・キャラム
翻訳:広田敦郎
演出:桑原裕子
美術:田中敏恵
芸術監督:小川絵梨子
主催:新国立劇場
キャスト:山崎静代、青山美郷、細川 岳、稲川実代子、増子倭文江、平田 満
公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/play/the-humans/
全国公演
[愛知公演] 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
2025年7月5日(土)13:00開演、6日(日)13:00開演
[大阪公演] 茨木市文化・子育て複合施設 おにクル ゴウダホール(大ホール)
2025年7月19日(土)14:00開演