
彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.2『マクベス』が開幕。
24年5月にスタートした、吉田鋼太郎が芸術監督を務める【彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd】、数々のシェイクスピア作品を出演してきた吉田鋼太郎が、“どんな人にも楽しんでほしい”とする新シリーズ。シェイクスピア作品が伝える人間の普遍性とその新たな魅力を広く届けることを目指し、第二弾となる『マクベス』。『ハムレット』、『オセロー』、『リア王』と並ぶシェイクスピアの四大悲劇。実在のスコットランド王マクベス(在位1040年–1057年)をモデルにしている。
雷鳴が轟く、3人の魔女、有名なセリフ「きれいは汚い、汚いはきれい」、マクベスに対して「万歳、コーダーの領主」「万歳、いずれ王になるお方」と呼びかけ、バンクォーには「王にはなれないが、子孫が王になる」と予言。そこへ使者が現れて、武勲によりマクベスはコーダーの領主に任ぜられたと伝える。


物語は周知の通り、様々な、そして世界中のカンパニーで数えきれないほど上演されている『マクベス』、魔女はここでは吉田鋼太郎始め、男優が演じており、その声、最初は手に生首、かなり強烈。一度見たら忘れられない風貌。

マクベス、魔女の予言を聞き、すぐに領主となった途端に政治的野心が芽生える、”もしかしたら”という期待、魔女の予言を妻に伝える、この妻・マクベス夫人も夫に負けず劣らず、いや、夫以上、マクベスはどこか小心でしかも罪悪感もあり、そんな彼を叱咤激励する。


自分の行動に常に不安がつきまとうマクベス、演じるは藤原竜也、心の内面を細かく表現し、次第に狂気に冒されていく様を好演、ラストの戦いシーンは必見。マクベス夫人の土屋太鳳、立ち姿が美しいだけでなく、夫を叱咤激励するキツい性格のキャラクターだが、キツさだけでなく、マクベスを包み込む包容力もあり、マクベスが頼りにするのも頷ける。



マクベスと共に魔女の予言を聞くバンクォー役に河内大和、殺された後、マクベスの前に現れるが、これがかなり怖い、不気味、マクベスが震え上がるのも頷ける。妻子を殺されマクベスに復讐心を燃やすマクダフ役に廣瀬友祐、凛々しく、舞台映えする長身(184cm)、殺陣が美しく迫力。そして後半、復讐に燃える怒りを剣にぶつける。ダンカンの息子で後に王となるマルカム役に井上祐貴、凛々しく、後半は王になるべく、マクベスと対峙する。



物語を彩る音楽、東儀秀樹が担うのだが、エレキギターを使ったロック調の戦闘曲、これがかっこいい楽曲、物語の激しさをさらに強調させる。雅楽師なので、笙の音を響かせる楽曲がたおやかでしっとりと聴かせる。
シェイクスピアの名作、解釈は様々で観る人によって捉え方や感じ方は変わる、また、これを上演する側の解釈も、また然り、凄惨なシーンをマイルドにすることなく振り切った表現、そしてセットもシンプルに。後ろの背景の城はモノトーン、これが作品の奥深さを感じさせる。埼玉公演は25日まで、その後、全国を回り、大阪で千秋楽、6月30日、長丁場の公演、シェイクスピア初心者はもちろん、『マクベス』はいろんなカンパニーで観たという方もぜひ。
コメント
藤原竜也(マクベス役)
舞台「マクベス」とうとう初日を迎えます。鋼太郎さんによる大胆かつ緻密な演出のもと、素晴らしい仲間たちと共に厳しい稽古期間を乗り越えてきました。私にとっても挑戦の 1 作となります。劇場で皆様に観ていただけること楽しみにしております。全身全霊で「マクベス」に挑みたいと思います。
土屋太鳳(マクベス夫人役)
舞台「マクベス」初日…この日、私はマクベス夫人の心を通して何を見ることが出来るのか、まだ想像も出来ません。ただ言えるのは、稽古の全てが宝物でした。こんなんじゃダメだと打ちのめされながら、同時に、生まれてきてよかったと思える日々。心から感謝しております。マクベス夫人が何を願い、誰を愛したのか、解釈は様々あると思います。観て下さる方々、ぜひ感想含め、教えて下さい。千穐楽まで、よろしくお願いいたします。
河内大和(バンクォー役)
こんなに初日が待ち遠しいシェイクスピア作品はありません!稽古では、生きた人間としてそこに存在し、シェイクスピアの言葉を人間として喋ることに徹底的に向き合ってきました。鋼太郎さんの演出は、400年前のグローブ座を思い起こさせるような、ドキドキとワクワクに溢れていて、僕自身よく知っていると思っていたマクベスが、新作のように目の前に広がっていきます。想像力に満ち溢れたマクベスを、どうぞお楽しみ下さい!
廣瀬友祐(マクダフ役)
マクダフ役を努めます廣瀬友祐です。あっという間の稽古期間でした。今は開幕に向けて静かではありながらも熱い高揚を感じております。始まれば終わります。怒涛です。この出逢いに感謝し、全身全霊で最後まで向き合いたいと思います。劇場でお待ちしております。
井上祐貴(マルカム役)
いよいよ初日を迎えようとしています。遂に始まるんだなというワクワクと、これで大丈夫なのだろうかという不安が同時に押し寄せてきています。自分だからこそ演じられるマルカムを、少しづつですが見つけられてきている感覚があります。開幕後も日々色々なものを吸収し、まずは埼玉公演の 1 ヶ月を、全力で楽しみたいと思います。
たかお鷹(ダンカン王役)
実に楽しい稽古だった。と言うのも出演者全員が驚く程素直だったからだ。演出家の言う事を素直に聞き、素直に演じていた。我が劇団の先輩である杉村春子の言葉を思い出した。役者は素直のプロなのよ!かなりひねた後期高齢者の僕には心地よい刺激になった。このメンバーで創る芝居はもっともっとよくなると思う。本番の幕が開いても自分に合格点をつけずに芝居に向き合いたいと思う。
吉田鋼太郎(演出・上演台本、魔女役)
藤原竜也くんがついにマクベスを演じる。その演出を、この新しいシェイクスピア・シリーズで実現できることに改めて喜びを感じています。『マクベス』という難物にどう挑むのか、4ヶ月前には暗中模索していましたが才能豊かな俳優とスタッフによって光を見出すことができました。この作品は現代の私たちに何を呼びかけるのか。7週間の稽古で我々が見つけたものを、劇場で皆さんにもお届けすることができれば大変嬉しいです。どうぞ、お楽しみください。
主な配役
藤原竜也・・・マクベス(スコットランドの将軍)
土屋太鳳・・・マクベス夫人
河内大和・・・バンクォー(スコットランドの将軍)
廣瀬友祐・・・マクダフ(スコットランドの貴族)
井上祐貴・・・マルカム(ダンカンの王子)
たかお鷹・・・ダンカン(スコットランド王)
吉田鋼太郎・・・魔女 ほか
物語
マクベス(藤原竜也)とバンクォー(河内大和)は荒野で三人の魔女(吉田鋼太郎ほか)と出会い、魔女たちはマクベスがコーダーの領主となり、国王となることと、バンクォーの子孫が王となることを予言する。夫からの手紙で予言について知ったマクベス夫人(土屋太鳳)は、野望を遂げさせようと決意。 マクベスはダンカン王(たかお鷹)を暗殺し、王座を手にするが、すぐさま良心の呵責に苛まれていく。不吉な予言に不安と怒りに駆られ、マクベスはさらに残忍な行為を重ね、気丈だったはずのマクベス夫人は罪悪感と血の幻影に悶え苦しみ錯乱状態に陥っていく。マクベスへの復讐をたぎらせるマクダフ(廣瀬友祐)とマルカム(井上祐貴)の軍勢が攻め入り、荒唐無稽な予言は現実のものとなっていく――。
概要
埼玉公演
期間:2025年5月8日(木)~25日(日)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
主催:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団
制作:公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団/ホリプロ
WEB:https://horipro-stage.jp/stage/macbeth2025/
撮影:宮川舞子