オペラ×バレエ『イオランタ/くるみ割り人形』会見レポ

ウィーン・フォルクスオーパー&ウィーン国立バレエ団との共同制作東京二期会オペラ『イオランタ/くるみ割り人形』が18日、開幕。
公演に先駆けて取材会が行われた。
チャイコフスキーの名作『くるみ割り人形』と『イオランタ』が、ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督ロッテ・デ・ベアの手により、一つの物語として再構築され、オペラとバレエが見事に融合。舞台芸術の常識を超えた革新的な舞台。
『イオランタ』はチャイコフスキーが作曲した全1幕のオペラ。作品番号は69。チャイコフスキーにとっては最後のオペラ作品。また『くるみ割り人形』はチャイコフスキーが手掛けた最後のバレエ音楽、1892年にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で初演。
「見ること」「夢を見ること」「生きること」という普遍的なテーマが、観客の知性と感性に深く語りかけていく。
東京でのプレミエを皮切りに、愛知、大分と全国3都市で公演。日本語字幕付原語(ロシア語)の上演となる。
都内で取材会が行われた。
登壇したのは、マキシム・パスカル(指揮)、ロッテ・デ・ベア(演出/ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督)、アンドレイ・カイダノフスキー(振付)、川瀬賢太郎(指揮/愛知・大分公演、名古屋フィルハーモニー交響楽団音楽監督)。

まずは演出を担うロッテ・デ・ベアから作品のきっかけやコンセプトの説明から。
ロッテ・デ・ベア「『イオランタ』は非常にやりたかった作品、音楽、物語両方とも、です。イオランタは目が見えない、盲目です。そして、どの作品と一緒にしようか考えた時、『くるみ割り人形』が、初演がほぼ同時、『くるみ割り人形』は子供の頃にみたとてもノスタルジックな作品、これを『イオランタ』と繋げるのは重要なことと考えました。最終的に彼女は目が見えるようになりますが、それは成長して大人になること。私にとってウィーン・フォルクスオーパーの初めてのプロダクション、バレエとしっかりと親密になってコラボすることがこれから多くなる、二つの異なる団体がコラボする、様々な年齢の観客全員に届くように。御伽噺だけでなく、心理描写もあります。それが非常に良いと思っています」

東京公演での指揮を担うマキシム・パスカル、まずは日本語で「おはようございます」と挨拶。チャイコフスキーの音楽的アプローチの話に。
マキシム・パスカル「この二つの作品の出会いはいいインスピレーションだと思います。チャイコフスキーの音楽の描かれ方、彼が最初にバレエ、ダンサーのために、バレエに注目して作曲、彼がいなかったら20世紀のストラビンスキーの『春の祭典』やドビッシーの音楽などはうまれてこなかったと思います、作曲のインスピレーション、深層心理や感情からダイレクトにインスピレーション、着想してかいたのだと思います。残された資料から見ると、オペラ、シンフォニー、バレエ、かき分けることにより、違う形態からアイディアを生み出している、また『イオランタ』と『くるみ割り人形』は同時期に作曲しています。表、裏、というんでしょうか、2つのストーリーが組み込まれることは良いと思います」

そしてアンドレイ・カイダノフスキーから創作のポイントなど。
アンドレイ・カイダノフスキー「このプロダクションのアプローチを受けた時は非常に理解しやすかった、理にかなっている、と思いました。目が見えない子供…子供自体、寝るときに聞くお話から子供が.どんなことも多分想像できる世界があると思うので、そういうのが非常にわかりやすかったです。先ほどのお話しと重なりますが、チャイコフスキーの音楽やはりダンサーのため、そして感情から書かれているので、非常に振り付けがしやすい。簡単とまでは言いませんが。非常にアイディアが生まれやすいので、毎日、充実しております。決してチャイコフスキーの音楽がシンプルというわけではなく、たくさんの情報量を与えてくれるのです」

愛知・大分公演で指揮をする川瀬賢太郎、「Hello My name is Kentarou」とおどけて挨拶し、「日本語で(笑)」
川瀬賢太郎「どのジェネレーションが観てもわかりやすい物語、バレエファンそれから、オペラのファンと両方のファンの方が見ても楽しめる。作品だと思います。どれも素晴らしいそして何より二期会の歌手の皆さんがすごく頑張っています。本当に多くのジェネレーションの皆さんに、そしてバレエしか興味がない、そういう方にこそぜひ見ていただきたい舞台だなというふうに思っております。名古屋フィルハーモニー交響楽団とオペラは何回かこれまでやってますけど、自分のオーケストラ名古屋フィルとピットに入る今回が初めてなんですね。そういったところも含めて今回の名古屋公演そして大分公演というのは個人的非常に楽しみにしております」

それから質疑応答、チャイコフスキーの中にある文化の多様性というものに対する考えについての質問についてマキシム・パスカルは「彼の音楽の構造、形状についてですが、フランス、オーストリア、特にバレエの部分は、オーストリアのワルツから割とダイレクトにインスピレーションを得て書かれています。オーストリアのワルツ、オペラに関しては、場所設定がフランスのプロヴァンスであることもありフランスオペラという影響が多く出ている。と思います。歌唱についてはイタリアのベルカントの作品に近いものがあると思います」とコメント。

また、『イオランタ』と『くるみ割り人形』をなぜ、一緒にしたのかの質問が出た。

ロッテ・デ・ベア「イオランタは目が見えないことを知らずに王様にずっと守られて幸せに暮らしていたのですが、医者が訪れて『受け入れることをしなければ、変われない』と…。大人になることを受け入れる、そうすると周りが見える、最終的には決意して、子供時代に別れを告げて大人時代を受け入れる、ざっくりいうとそういうお話しです。目が見えないなりに想像する、イマジネーションの世界っていうものが描かれていないところを『くるみ割り人形』で…華やかでお花やお菓子がたくさん踊っている、そういう世界をイオランタが見ていると…。今のこの世界を受け入れるのではなくてもっと良い世界を作る。もっと良い世界を子供時代の思い出じゃないですけども、そういうふうに…もっといいものにしようということです」

また、ストーリーなどについて

アンドレイ・カイダノフスキー「大枠としてはイオランタの物語です。『くるみ割り人形』はシーンのための音楽ではありますが、イオランタの感情として使います。また、踊りはコンテンポラリーなんですが、19世紀の音楽ですので、ノスタルジーというものも忘れてはいけない。クラシックである音楽ということは忘れてはいけないと意識して作り上げたものです。八百屋で演出することを決めまして、様式の中で制限のある作品にはしたくない、そういう作品を作りたかったという背景もございます」とのこと。

ここで時間となり、会見は終了した。

概要
日程・会場:
東京:2025年7月18日〜21日 東京文化会館大ホール
愛知:2025年7月26日 愛知県芸術劇場大ホール
大分:2025年8月2日 Iichiko総合文化センター iichikoグランシアター

指揮【東京】:マキシム・パスカル
指揮【愛知・大分】:川瀬賢太郎(名古屋フィルハーモニー交響楽団 音楽監督)
演出:ロッテ・デ・ベア(ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督)
振付:アンドレイ・カイダノフスキー
出演:東京シティ・バレエ団ダンサー  オペラキャスト(イオランタ役ほか)
主 催:公益財団法人東京二期会
主 催【愛知】:愛知県芸術劇場(愛知県文化振興事業団)
共 催:公益財団法人 東京シティ・バレエ団
共 催【愛知・大分】:公益財団法人名古屋フィルハーモニー交響楽団
共 催【大分】:iichiko総合文化センター[公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団]

公式サイト:https://nikikai.jp