
ウィーン・フォルクスオーパー&ウィーン国立バレエ団との共同制作東京二期会オペラ『イオランタ/くるみ割り人形』が開幕。
チャイコフスキーの名作『くるみ割り人形』と『イオランタ』が、ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督ロッテ・デ・ベアの手により、一つの物語として再構築され、オペラとバレエが見事に融合。舞台芸術の常識を超えた革新的な舞台。
『イオランタ』はチャイコフスキーが作曲した全1幕のオペラ。作品番号は69。チャイコフスキーにとっては最後のオペラ作品。また『くるみ割り人形』はチャイコフスキーが手掛けた最後のバレエ音楽、1892年にサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で初演。
「見ること」「夢を見ること」「生きること」という普遍的なテーマが、観客の知性と感性に深く語りかけていく。
東京でのプレミエを皮切りに、愛知、大分と全国3都市で公演。日本語字幕付原語(ロシア語)の上演となる。

舞台は八百屋、最初の曲はそれぞれの序曲から。ヒロインのイオランタは白い衣装、目が見えない、彼女の頭の中は楽しい空想でいっぱい、カラフルな衣装に身を包んだダンサー陣が舞い、踊る。観ている方もワクワクするような景色が繰り広げられる。


イオランタの父である王は、彼女が目が見えないことを不自由に感じさせないように心を砕いている。過保護な父、どこか身につまされるような感覚になる観客もいるかもしれない。王に仕える面々もイオランタに気を使いまくり。
基本的にはストーリー展開は『イオランタ』。登場人物たちの服装が現代的、王のルネは仕立ての良いスーツ、許嫁のロベルトと友人のヴォーデモン伯爵はラフな格好。医者のエブン=ハキアは白衣を着ている。そして、『くるみ割り人形』の楽曲は基本的にヒロインの空想シーンで使われる。その空想シーンだが、これが衣装も振り付けも独創的。年末に観劇する『くるみ割り人形』とは趣きを異にする。つまり、『くるみ割り人形』の楽曲を使って、ヒロインの空想シーンをクリエイト、しかも『イオランタ』とある意味、シンクロさせているので、”二重”、ここの発想の視点が新しい。
常識に捉われない振り付け、設定、心模様を描写、1幕ラスト近くの「金平糖の精と王子のパ・ド・ドゥ」が秀逸、美しく、品のいい色合いのダンサー陣の衣装、その光景をイオランタとヴォーデモンが見ている風景は愛に満ちている。

夢の世界(『くるみ割り人形』)と現実の世界(『イオランタ』)が交錯し、2幕のラストのフィナーレへ。「ゴッドフリート、お前を助けに来たぞ」治療が成功し、イオランタは目が見えるようになり、ハッピーエンド、ここのシーンのコーラスは圧巻。『イオランタ』も『くるみ割り人形』、1892年12月18日マリインスキー劇場において初演。そこもなかなか興味深い。公演は東京は21日まで。その後は愛知、大分にて公演。
会見レポ
概要
日程・会場:
東京:2025年7月18日〜21日 東京文化会館大ホール
愛知:2025年7月26日 愛知県芸術劇場大ホール
大分:2025年8月2日 Iichiko総合文化センター iichikoグランシアター
指揮【東京】:マキシム・パスカル
指揮【愛知・大分】:川瀬賢太郎(名古屋フィルハーモニー交響楽団 音楽監督)
演出:ロッテ・デ・ベア(ウィーン・フォルクスオーパー芸術監督)
振付:アンドレイ・カイダノフスキー
出演:東京シティ・バレエ団ダンサー オペラキャスト(イオランタ役ほか)
主 催:公益財団法人東京二期会
主 催【愛知】:愛知県芸術劇場(愛知県文化振興事業団)
共 催:公益財団法人 東京シティ・バレエ団
共 催【愛知・大分】:公益財団法人名古屋フィルハーモニー交響楽団
共 催【大分】:iichiko総合文化センター[公益財団法人大分県芸術文化スポーツ振興財団]
公式サイト:https://nikikai.jp
写真提供:公益財団法人東京二期会
撮影:寺司正彦