
横内正主演舞台ウィリアム‧シェイクスピア作『リア王』が三越劇場にて開幕した。
台本訳は文化功労者であり英文学者 演劇評論家の小田島雄志の翻訳作品(白水社刊)を使用し、横内正が上演台本‧演出する。2016公演「リア王」を始め、「MACBETH」「⼗⼆夜 Twelfth Night」を含め ”横内 正×シェイクスピア” はこれで8作目。
ストーリー自体はあまりにも有名で説明不要、シェイクスピアの4大悲劇の一つとして知られているし、世界中の、いや日本のどこかで必ず上演されているのでは?と思うくらいメジャーな作品だ。
年老いたブリテンのリア王(横内正)が引退するにあたって、孝行なものに領地を与えると言い、甘い言葉でヨイショする長女・ゴネリル(一色采子)と次女・リーガン(大沢逸美)に領地を与え、素直な3女・コーディーリア(敷村珠夕)には領地を与えないどころか、追放する、という極端な行動に出たのがそもそもの悲劇の始まり。しかも忠実なケント伯爵(瀬田吉史)の忠言にも耳を貸さない。追放されたコーディーリアは持参金もなく、それでもフランス王は彼女を妃として迎える。






このリアの一連の行動を見ている観客は思うだろう「老害ってやつ?」と。遠いイギリスの昔の話ではあるが、ここに描かれていることはいつの時代も変わらない。財産欲しさに狡猾な手段に出る、策略をめぐらして誰かを陥れる、逆にどこまでも”いい人”すぎて損ばかりする人etc.そして主人公のリア王、登場した当初は権力者であり、富もある。だが、後半は全く真逆な姿になる。娘2人に裏切られ、権力はおろか、富もなく、しかも杖をついている、人を呪い、世を恨み、荒野を放浪する(今風で言えばホームレス)。



そしてサイドストーリーも見逃せない。グロスター伯爵の次男で庶子であるエドマンド、野心家であり、権力を握るために様々な策を巡らす。だが、シンプルな悪党でもない。自分の置かれた立場、庶子、いわゆる私生児であり、次男、父の財産は長男であるエドガーが受け継ぐ、当然、面白くない。兄エドガーを裏切り、父の地位を手に入れると決心、兄との戦いをよりもっともらしくでっち上げるため、自らの腕を傷付けることなどなんでもない。しかもゴネリルとリーガンに近づく。




しかも、この姉妹、エドマンドに”本気モード”、だが、エドマンドの方は?「恋は盲目」という言葉が浮かんでくる。父であるグロスターも陥れ、哀れなグロスターは両目を抉られてしまう。もう、「これでもか」な悪党ぶり。


2幕以降は怒涛のごとくな悲劇の連続。グロスターを拷問し両目をくり抜いているところをみた従者ルーカス(蒼木 龍)が耐えられなくなり、剣をとってコーンウォールに致命傷を与えるが、リーガンによって刺し殺される。悲劇、悲劇、殺人、殺人の連続な2幕。父を助けるべく、立ち上がった末娘・コーディーリア、フランス軍とともにやってくるも…残念な結果以上にダメ押しの悲劇な結果。




濃すぎるほどの人間ドラマ、本質、そしていつの世も変わらない人間の愚かさや崇高さ、途中休憩をはさんでの2時間55分、名言、心に刺さるセリフも多数。横内正始め、芝居巧者が集まったクオリティの高い舞台。ロビーではパンフレットはもちろん、台本も販売、この公演のDVDの販売も決まったそう。プロマイド、出演者数が半端なく多いので、迷うくらい!公演は8日まで。

プレビュー公演後、簡単な会見が行われた。登壇したのは、横内 正(リア王)、三浦浩一(道化)一色采子(ゴネリル)、大沢逸美(リーガン)、敷村珠夕(コーディーリア)、大鶴義丹(オーバルニ公爵)、中丸新将(グロスター伯爵)、そして田村亮の代役の瀬田吉史(ケント伯爵)。
横内 正(リア王)「この暑い最中、ずっと稽古をやってまいりましたけど、やっと今日初日を迎えることができました。おかげさまで十分充実したものが出来上がったのではないかと…もう6回目の公演ですが、毎回新鮮な気持ちで取り組んでいます。素敵な俳優さんたちに囲まれて、この歳、まだまだ頑張っていられるのは皆さんのおかげだと思います。1人でも多くの皆様に来ていただきたいです」
一色采子(ゴネリル)「おかげさまで初日の幕を開けることができました。シェイクスピアはやっていてとても面白いです。やっぱり日常とちょっと違う。いつも理性で蓋をされている感情の蓋を開けまして、思い切り罵詈雑言を大きな声で言えるというのを楽しんでおります。大先輩たち、それからすごくエネルギッシュな若い方たち、皆さんに刺激されながらやっております。多くの方にご覧いただけたらと思っております」
大沢逸美(リーガン)「私はかれこれもう40年前に一応アイドル歌手としてデビューしたんですけども、今日はそのデビュー当時の同期がちょうどこのプレビュー公演を見に来てくれまして。おかげさまでプレビュー公演といえども、お客様も温かい雰囲気を出してくださったので思いっ切り悪い女を演じることができました、とても気持ちいいです!本当にやってみたらわかります、気持ちいいです!私は昨年に引き続き、リーガンを演じさせていただきました。本当に幸せな夏を今年も過ごさせていただいております。岩谷健之さんもアイドル歌手としてデビューしてたまたま夫婦役なんですけども、ちょっとアイドル同士のポーズみたいなものもありますので、ぜひ楽しみに見に来ていただけたらなと思います」
敷村珠夕(コーディーリア)「お稽古、気づいたら終わり、今日からついに開幕、シェイクスピアの作品に挑戦させていただくのは初めてなんですけども錚々たる先輩方とお芝居をできるという環境をかみしめて、千秋楽まで丁寧に進んでいけたらなと思っております」
中丸新将(グロスター伯爵)「初めて横内さんの『リア王』に参加させていただきました。横井さんのパワーに圧倒されました。僕なんか、横内さんより八つ下なんですが、とにかく引き継いでいくことだけで精一杯でした。両目をくり抜かれるグロスター伯爵ですが、もうやりがいのある役ですね。こんな役は多分、生涯で最後かもわかりません」
大鶴義丹(オーバルニ公爵)「2年目で同じ役を連続してやったんですけども2回目なのですが、シェイクスピアやっぱりなかなか難しく、稽古がうまくいったなと思うとき、でも何かやっぱり物足りないんじゃないかなと。なんか稽古をいくつもいくつやっても何か前に進んでないような気がするような。すごく大きな謎に立ち向かうような1ヶ月の稽古でした。今日やっとたどり着けたんですけど、まだまだこれから始まります。本当に頑張っていきたいと思います」
三浦浩一(道化)「ずっとシェイクスピアのお芝居は避けてきた役者ですが、昨年出させていただいてそのときは違う役だったんですが、でもそのときに、これだけ長いこと世界中で愛されているシェイクスピアの作品の深さとか面白さとかを知ったわけです。最初はもう伸び伸びと自由にやればいいと勝手に思ってのですが、もう的確な…横内さんから細かいアドバイスをいただいて、ただただ明るいだけじゃなくていろんな部分を出せる役所、努力しました。今日やっと自分の中ではちょっとできたかなと思ってます。皆さんぜひ劇場にいらしてください」
瀬田吉史(ケント伯爵)「田村亮さんの代役としてケント伯爵をやらせていただきます。接待慶人です。横内さんからすごくきめ細かく指導していただいて…複雑な思いもあるんですが、やるからには一生懸命やっていければ」

瀬田吉史は田村亮との”ご縁”について「学生演劇の延長で小劇団をやってて、何度か見に来てくれた友人が『本気でやりたいんだったら義理の兄を紹介するよ』ということで、紹介していただいたのが田村亮さん。彼は亮さんの奥さんの弟さんだったんです。全然知らなくて…そこからのご縁です」と語った。
また横内正は「自分の年齢がどんどん高まるにしたがって、この『リア王』という作品に対する愛着がまた深まってきた、実年齢に近いからかな。若い頃にこの役をやる方たちが大変多いと思いますけど、僕の年齢でこのリアルに取り組むのは意外と少ない。毎回ご一緒する機会がある方は多いんですけれども、毎回新しい方に参加していただいて、そういう人たちとまたお芝居に取り組む、そういう新鮮な喜び楽しみもあります。それが『リア王』をずっと毎年続けられている一つの要因ではないかなと思いますね。見る方もそれぞれの思いの中でご覧になればいいんで、こうあるべきだっていう演出的なものを、僕は押し付けないです。毎回毎回新しい発見もあるし、そこでまた新たな喜びもまた感じられます」とコメント。
最後に横内正は「まだこれが終着駅だと思ってません。また来年も再来年も続くんではないかなと自分なりには考えてます。まだ私84歳ですから、仲代達矢さんは今九十二、三歳ですけれどもまだ現役でおやりになってらっしゃる。それを思えば僕はまだまだですので、これからも挑戦していこうかなと思ってます。それはリアにとどまらず、他の作品に関しても、僕も可能な限り何かまた新たなことに挑戦したいなと思ってます」
製作発表会レポ記事
概要
日程・会場:2025年9⽉4日(木)〜8⽇(月) 三越劇場
出演
横内 正
一色采子 大沢逸美 敷村珠夕
阿部快征 上仁 樹 橋本禎之 青木玄徳
湯江タケユキ 清水よし子
小山晶士 永井秀和 潮見勇輝 瀬田吉史
蒼木 龍 藤村はる美 上倉悠奈 十勝令子 AYU 柚木涼汰 三浦永夢 鈴木蘭清 渡邉このみ 花蓮 井上謙伸 鈴木征爾 松永幸士 岡﨑流風 鈴木由香利 寅之助 朝倉 蒼 伊東秀悟 糸原和彦 藤澤知香 東奈津実 中村優美 佐野旺二朗 中堀 聖 長岡星七 長嶋葉生 牧野恵美 田沼未帆 高島 静
中丸新将 大鶴義丹 三浦浩一
田村 亮
※田村亮休演のため、ケント伯爵は瀬田吉史が演じる。
瀬田が演じる予定だったグロスターの従者ルーカスは蒼木龍、村人マーカスは潮見勇輝、蒼木が演じる予定だったコーンウォールの従者ロスは柚木涼汰、柚木が演じる予定だったコーンウォールの従者クリスは井上謙伸が演じる。
スタッフ
作:W‧シェイクスピア
訳:小田島雄志(白水社刊)
上演台本‧演出:横内 正
音楽:横内丙午
美術:浅井裕子
照明: 島田昌明(銀河プロジェクト)
音響: 奥村典洋(ALLEX)
歌唱指導:呉 富美
アクションコーディネート:潮見勇輝
振付:加茂うらら
小道具:吉本 孝(高津小道具)/田中義彦(アトリエ‧カオス)
ビジュアルデザイナー:菅谷みにい
衣裳:Miny Mix Creati部
衣装協力:東宝舞台衣裳部‧dress Rose Princess
ヘアメイク:古橋香奈子
ヘアプランナー:奥山光映
演出助手:高橋健悟
演出部:山﨑 牧
舞台監督:髙橋大輔
協力:北村太一‧三津田なつみ
宣伝写真:石田 航‧廣瀬 健
舞台収録‧編集:松林正登(COLORS)
制作事務:岡部礼子
チケット管理:J-Stage Navi
台本印刷:シナリオプリント
グッズ制作プロデュース:木村泰香(株式会社和奏AGENCY)
メディアプロデューサー 補:シマダシュンタ(Event Banking)
グッズ制作プロデュース:木村泰香(株式会社和奏AGENCY)
メディアプロデューサー補:シマダシュンタ(Event Banking)
協力プロデューサー:神谷 光(ゴッドフィールドプロモーション)
アートディレクター/プロデューサー:井上順雄(株式会社リンカーン&ディジット)
メディアプロデューサー:イトーノリヒサ(イトーノリヒサOFFICE)
制作統括:詩笛立季
主催‧企画‧製作:T .Y.プロモーション