
世界で語り継がれている名作映画を朗読劇として上演する「Classic Movie Reading」。第五回目となる「カサブランカ」が開幕。
本作は、自らが主宰する演劇ユニット「劇団東京都鈴木区」にて脚本・演出を務め、近年では 2.5 次元舞台や朗読劇の脚本・演出のほか、TV アニメのシナリオにも携わるなど注目の劇作家・鈴木智晴が脚本を手掛け、演出は栗山民也演出作品に演出助手として『スリル・ミー』『デスノートTHE MUSICAL』(韓国公演)『アンナ・クリスティ』『組曲虐殺』『カリギュラ』などに参加し、2020年ベニクラゲproject『極めて家庭的に』をきっかけに演出家としても活動している坪井彰宏が担う。
キャストは、主演のリック・ブレイン役に廣瀬智紀、イルザ・ラント役に、元宝塚歌劇団の娘役スターとして活躍した有沙瞳、ヴィクター・ラズロ役には3人組ダンスボーカルユニット『Lead』の鍵本輝。さらに、ハインリヒ・シュトラッサ―役に川上将大、ギレルモ・ウガーテ役に広井雄士、シニョール・フェラーリ役に船戸慎士、ルイ・ルノー役にコウガシノブらが脇を固める。そして、ボーカルトレーナー、作詞作編曲家である奥村健介がサム役、兼ピアニストとして生演奏も披露。
有名すぎるくらいの映画、「カサブランカ」といえば、ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマンの印象が強い。第16回アカデミー賞にて作品賞・監督賞・脚色賞の3部門を受賞。

奥村健介が登場、サム役であると同時にストーリーテラーも担い、ピアノ生演奏、という八面六臂の活躍。それからキャストが登場、舞台上に置いてあるランプが雰囲気を盛り上げる。仏領モロッコの都カサブランカは、リスボンを経由し、アメリカへ行くために、1度は通過しなければならぬ寄港地。そんなカサブランカでアメリカ人・リック(廣瀬智紀)酒場を営んでいる。一見クールに見えるが情に厚い。


イルザ・ラント(有沙瞳)は反ナチ運動の首領ヴィクトル・ラスロ(鍵本輝)の妻。カサブランカでの二人の偶然の再会。実はパリ陥落が目前に迫った時、一緒に逃亡するはずだったリックとイルザ、ところが約束の時間になってもイルザは現れず、消息不明となっていた。そんなイルザが店に現れたのだからリックの心は揺れ動く。そしてラスロ夫妻は亡命するつもりだった…。





物語は原作映画通りだが、それを朗読劇に。しかし、ただ、座っているだけでなく、衣装を着用、芝居も伴う。小道具は最小限、照明で変化をつける。ラブストーリーではあるが、同時に反戦の要素もある。第二次世界大戦時代、ナチスドイツがヨーロッパを席巻、1939年9月1日に始まったドイツ軍によるポーランド侵攻が発端、イギリスとフランスによるドイツへの宣戦布告、ヨーロッパ戦線が始まった、そんな時代背景。ラスロは反ナチスのリーダー、当然、命を狙われる身。だから亡命し、身の安全を確保したい。パリ陥落目前、イルザは夫が死んだと思い込んでいたのも無理はない、そんな夫が生きていた。


だから、リックとの約束の場所に現れなかった。その事情を知ったリック、心が打ち解ける。この恋愛模様、そこに二人が亡命するための旅券をめぐる攻防、これは別の意味でちょっとドキドキ。
「君の瞳に乾杯(Here’s looking at you, kid.)」などの名台詞も多く、リック、自分のために生きるのではなく、他者の幸せのために生きる。その生き様がかっこいい。この「君の瞳に乾杯」はラスト近くリックがイルザにいう台詞。
イルザは愛するリックを捨てなければならない、それは当然リックもわかっている、彼女の罪悪感を和らげる言葉だが、とにかく粋でスタイリッシュ。そこに原作映画の絶大なる人気がある。また、ストレートプレイではなく、朗読劇にすることによって、物語の輪郭を際立たせ、映画をみたことがある観客なら、映画の情景が脳内で浮かび上がるし、逆にタイトルは知っているが、映画は見てないという観客には映画への興味を駆り立てる。様々なバックボーンを持つ俳優陣が集まり、それぞれの持ち味を活かしたパフォーマンスを見せてくれる。廣瀬智紀のクールな佇まい、有沙瞳の愛らしさ、鍵本輝の凛々しさが作品世界の芯を作る。上演時間は休憩なしのおよそ1時間30分。公演は2025年9月6日(土)~7日(日)に博品館劇場にて。
公開ゲネプロ終了後に簡単な会見が行われた。登壇したのは、廣瀬智紀、有沙瞳、鍵本輝。
廣瀬智紀「しっかりと稽古を積み重ねた自負がございますので、本番をすごく楽しみにしております。朗読劇って割と稽古日数が限られたりしてまして、少なかったりすることが多々あるのですが、今回は稽古したと思いますし、ただその分求められているものがハードルが高かったりもするので、乗り越えられていたらいいなと。楽しみです」
有沙瞳「明日から初日、4回しかないのがちょっと寂しくもあるんですけれど、先ほどもお話されてたみたいに稽古場からすごい濃い時間を過ごさせていただいて、毎日がすごく楽しくて坪井さんの演出も…とっても学びのある毎日でした。お客様が入ってどんな感情になれるのか、そして伝わっているのか。明日からとっても楽しみです。毎回、心を込めて務めたいと思います」
鍵本輝「とてつもない名作で、お仕事のお話をいただいて、(作品は)初めて知ったのですが、本当にこの作品にすごい感銘を受けた世代の人たちがたくさんいると思うんですけど、その名作が朗読劇生まれ変わり、日本人が演じる、原作にはない熱量だったりとか、繊細な日本人だからこそできる潜在的な力で朗読劇表現したいと思っております」
それから質問、苦労した点などについて廣瀬智紀は「作品の中に名台詞と言われるような、すごく印象的な台詞がいくつかちりばめられていますが、特にリックは結構キザな台詞、普段言うことがないような言葉、そういった台詞、そういう表現をすることにより、リックがより魅力的な人間に見えて、しかも本当にそう思っているからリアルな表現としてそれが出てきている、そこはやっぱり大事にしなくてはとも思いましたし、普段は言い慣れない、だからこそしっかり言葉一つ一つを大事にしていけたらいいなと」
有沙瞳、前回は『若草物語』に出演、違いを聞かれて「前回は女性4人だけの世界観だったので、すごく柔らかい優しい感じでしたが、今回は男性の方が多くて。稽古場からお1人お1人のキャラクターやエネルギーがすごくて。私も女性ではありますが、中に強いものを持って演じないと、何か深い作品にはならないのではないかなと。稽古場でもすごくぶつけ合うのが楽しい毎日でした」
鍵本輝、稽古場の雰囲気と演じるにあたって意識したことを聞かれて「まず本読みの段階から、もう坪井さんのカサブランカに対する情熱がすごく、だからこそ僕たちもちゃんと答えていかなきゃなっていう思いで、みんなで毎日毎日違うアプローチをしつつ、トライ&エラーを繰り返しながら…。また演出の坪井さんが『こういう感じのことを想像して、言ってください』みたいなことを言って、それでお芝居しようとするんですが、それ以上は言わないんです、特にライブ感を大事にしていってほしいと…。今日生まれるものを明日生まれるものを大事に演じていきたいです」
また、稽古前と稽古後の変化について廣瀬智紀は「”あれ? 俺、セリフ全部覚えてる?”っていうのが稽古前と稽古後の変化ですね。緊張感というかプレッシャーだなと思いながら臨ませていただいたんですけども、リックという人間をより一層自分の中でも消化して、深めた上でやる上ではやっぱりある程度入れていった方が、自分自身もやりやすいし自分の中に明確になっていくものも多いなと思ったので(1ページ目からリックは(ページを)めくってない、と鍵本輝が指摘)。みんなで力を合わせて」とコメント。
有沙瞳、実際に役を演じた感想を聞かれて「絶対しんどいだろうなっていうものは感じていたんですけど、あふれるものが自分の中でも感じられたり、でもそれが毎回違って、皆さんのおかげでそこが生きてるっていうのも大事で役として生きているという感じがすごくありまして、多分、二度と同じ舞台はないんだろなと。お2人が本当に素敵、お客様がとっても感動すると思います」
鍵本輝は演じる役との共通点を聞かれて「まっすぐで、世の中に変えてやろうっていう志の高さってすごいなと思う。もし、現在もこのような人物がいたらこの日本をさらに良くしていきたい、作って立ち上がるぞと…きっと国会議員になってる、そんな感じの人間だと思うんです。なんですけど、僕はそこまでの人間ではないので、一つの夢を目指して頑張っていく、一つの目標に対して突き進んでいくぞっていう姿勢はラズロから学ぶこともあるし、憧れる部分もあります。今回、朗読劇は初めてで、いろんな役者が集まっています。ラーメンに例えると、スープと麺はちゃんと僕たちで、そこに美味しいチャーシューやメンマをみんなが入れてくれました、みたいな感じに仕上がっていると思います」
最後に公演PR。
廣瀬智紀「戦争、その中に生きる人々の心、信念、そこにスポットを当ててしっかりこの内面を作る…きっと一回、一回、物語がどんどん変わっていったりとか、そういった変化もきっと出てくると思うので、そういったところもしっかり我々も楽しみつつ、(物語の中で)誠実に生きていけたらなと思っております。見てくださるお客様には、人が人のために生きる美しさ、人の命の尊さ、いろんなものがお客様の心に何か一つでも残れば幸いだなと思っております。ぜひ劇場でお待ちしております」
あらすじ
1941年、戦火迫るモロッコ・カサブランカ。
自由を求める人々が集う酒場に、ひと組の亡命者と、ひとつの再会が訪れる。
かつて愛し合い、運命に引き裂かれた男女── 酒場の主人・リックと、亡命者であるレジスタンスのリーダの妻となっていたイルザ。
過去と向き合い、愛と信念の狭間で揺れる男の決断。
変わりゆく時代の中で、変わらぬ想いはあるのか──
永遠の名作『カサブランカ』、朗読劇として鮮やかによみがえる。
概要
日程・会場:2025年9月6日(土)~7日(日)博品館劇場
脚本:鈴木智晴(劇団東京都鈴木区)/演出:坪井彰宏
出演
廣瀬智紀
有沙瞳
鍵本輝
川上将大
広井雄士
奥村健介
山口夢菜
山口ふみや
船戸慎士
コウガシノブ
企画・製作/主催:style office
公式X(旧Twitter): https://x.com/cmrstage
公演公式サイト:https://casablanca-reading.com
問合せ:stage.contact55@gmail.com