演出 詩森ろば serial number presents dialogue+1 デヴィッド・ヘアー『The Breath of Life』林田麻里,李千鶴

演出 詩森ろば、俳優 林田麻里/李千鶴で構成するユニットdialogue+1は、3年間にわたり、女性ふたり芝居を連続上演する。
第一弾はイギリスの劇作家デヴィッド・ヘアーの『The Breath of Life』。今はここにいないある男を巡る、元妻と元愛人による対話劇です。辛辣さと孤独と仄かな友情の萌芽。女性なら身に覚えのある不可思議な関係性を余すところなく炙り出す2時間。
2年目は女性劇作家の手による今では考えられない理由で精神病院に収監された女性ふたりの何十年にも渡る物語。そして3年目は詩森ろばの書下ろしを上演する。

ものがたり
イギリスのとある島の海岸沿いにあるテラスハウス。
その家の住人であるマデリンの元に、フランシスが訪れる。
専業主婦だったフランシスは現在流行小説家となり、夫の長年の不倫相手だったキャリア・ウーマンのマデリンとの回想録を書きたくて訪れたのだ。
若い新しい恋人ができた夫は、シアトルに行ってしまっており、彼を失った妻と愛人二人の対話が始まる。

詩森ろば 開幕コメント
この戯曲の舞台となるワイト島はイギリスの最南端にあり、登場人物であるマデリンの言葉を借りると「ガーデニング」と「死」しかない島です。そして、『The Breath of Life』はそこに訪ねてくる流行作家でもあるフランシスとマデリンとの一昼夜の物語です。彼女たちはほぼ初対面であり、そこまでの人生はまったく交わっていません。ただひとつだけ。ひとりの男を長い時間共有していたことを除いては。ホストであるマデリンはその男の元愛人。そしてフランシスは元妻です。しかも今、彼はイギリスを去り、アメリカで新しい女性と暮らしているのです。ほんとうに、ウンザリするほど辛辣な設定です。

ふたりはマデリン曰く『向こう岸』のワイト島で、はじめて自分たちの男との記憶を持ちよります。出会い、生活、そのすべてを。ふたりはとうぜんながら深く傷つきますが、しかし、自分の心の深層部にも相手の心の奥底にも容赦なく分け入っていきます。

その戯曲に『The Breath of Life』、つまり「命の呼吸」というタイトルがついている。それは何故なのか。わたしたちの稽古場はこの問いに対して何かしらの答えを見つけようと奮闘する日々だったように思います。

作家デヴィッド・ヘアーは「もはや中年とは呼べないし、ましてや老年とも呼べない。その中間の何か…私はまさにその瞬間の二人の女性を描きたかった。彼女たちの背後には長い過去があるが、彼女たちの前には大きな未来への期待がある。」とこの戯曲について語っています。

大きな未来への期待!

わたしが読み解いたのもまさにそれでした。そう。だって、マデリンを追いかけて向こう岸に渡ったフランシスが向こう岸に渡ったままだったら、こんなタイトルがつくハズはないのです。なのに、この戯曲の扉には、『生きるとは復讐の夢を見ることである』というゴーギャンの言葉が書いてある。いったい何がしたいの。デヴィッド。

これは、この物語は、こんな辛辣な設定でありながら、ふたりの女が手を携えて「精神の死」の淵から生還するシスターフッドの物語でもあります。だからわたしはこの物語が好きです。だからわたしはこの物語をこのふたりの俳優とやりたかったのだと思います。よくぞ出会えたね、という林田麻里と李千鶴という俳優ふたりは、はじめて会った役なのに仲良くなりすぎたり、かと思えばそれを用心しすぎてただの敵同士になったり、けして平坦ではない道を、皆で率直に言葉を交わすことで乗り越えてきました。最終通し、あの稽古場にあった、あの嘘のない瞬間を『最高の復讐』としてあなたに届けられますように。ぜひ劇場にお出かけください。

詩森ろば


概要
会期会場:2025年9月10日(水)~9月17日(水) 下北沢OFF・OFFシアター
出演
林田麻里
李 千鶴
スタッフ
作 デヴィッド・ヘアー
演出 詩森ろば
翻訳 鴇澤麻由子
美術:松岡泉
照明:榊美香(有限会社アイズ) ※榊は木へんに神
音響:青木タクヘイ(STAGE OFFICE)
舞台監督:田中翼
チラシ画:渡辺詩子 ※チラシ表面を使用する場合はクレジットを入れて下さい。
宣伝美術:詩森ろば
デスク・票券:イビケイコ
制作:serial number
宣伝:吉田プロモーション
企画・製作:一般社団法人 風琴工房
チケット:料金 全席自由・前売・当日共
一般指定:4,500円 / 障害:3,000円 / U25:3,000円(各回枚数限定)
※障害、U25は劇団のみの取扱い。当日受付にて障害は手帳、U25は年齢確認ができる証明証を提示。

WEB:https://serialnumber.jp/