
舞台『十二夜』、10月17日東京グローブ座にて開幕。東京公演は11月7日まで。大阪は15日〜21日まで森ノ宮ピロティホールにて上演。
演出は古典から現代劇、ミュージカルまで幅広く手がける森新太郎、主演、ヴィアイオラ/シザーリオ役はAぇ! groupのメンバー、正門良規。共演は伯爵令嬢のオリヴィア役には大鶴佐助、フェステ役に高橋由美子、アントーニオ役は松本紀保、オーシーノ役には長井短、セバスチャン役に北村優衣、サー・トービー・ベルチ役には阿知波悟美、マルヴォーリオ役には峯村リエ。その他笠原竜司、冨永竜、田中穂先、鈴木崇乃、天野勝仁、古賀ありさなど、個性的な実力派キャスト陣。
ピンク色のセットがキュート、かつ印象的。道化のフェステ(高橋由美子)の衣装はピンクと赤、可愛らしさ満点、どこにでも現れる。そして初っ端から桜吹雪、しかも大量、これも、もちろんピンク。
ストーリーやオチは言うまでもないくらい有名な『十二夜』、他のカンパニーで見たことのある観客も多いことだろう。嵐で難破して難儀するところから始まる舞台もあるが、これはそうではない。ここは演出のこだわりだろう。
面白可笑しい雰囲気で始まる。酔っ払いのサー・トビー・ベルチ、ちなみにベルチの意味は「げっぷ」舞台上でも繰り返しげっぷ。品はないが、楽しそうな人物、サー・アンドリュー・エイギュチーク(田中穂先)、こちらも酒飲みで、陽気、舞台上のアクセントに。
そして主要人物たち、ヴィアイオラ(正門良規)、男装してシザーリオと名乗る。彼女が男装することで話がややこしくなる。だが、このややこしさを楽しむのが『十二夜』。勘違い、ドタバタ恋愛喜劇。また、それぞれのキャラクターが個性的なのも、作品の特長。
そしてジェンダー、シェイクスピアの時代、舞台に女優が立つことはなく、少年俳優が女性役を担っていた。そんなことを念頭に入れておくと作品がより面白く感じる。現代とシェイクスピアの時代では性の概念や考え方は違うのかもしれないが、『十二夜』は現代でも十分通じるテーマを内包、愛、性、また人間の業。
道化は歌も歌い、そして自由。登場人物たちの行動を俯瞰して見れる立場で、言いたいことを言う。道化の視点は現代にも通じるところがある。2幕もの、生演奏が贅沢。
ゲネプロ前に簡単な取材会が行われた。登壇したのは森新太郎(作・演出)、正門良規(ヴィアイオラ/シザーリオ)、大鶴佐助(オリヴィア)、阿知波悟美(サー・トービー・ベルチ)、峯村リエ(マルヴォーリオ)。
まずは挨拶
森新太郎(作・演出)「今まで、ここで2回、シェイクスピア劇をやっておりまして、『ハムレット』『ロミオとジュリエット』。最後はハッピーエンドを迎える喜劇をやりたいなと思ってたところでした。今回、このお話を頂きまして満を辞して。喜劇ですので、今の心持ちと言われますと、シンプルにお客さんが笑って楽しんでくだされば。本当にそれだけです。はい。正直言うと不安でいっぱいです(一同、笑)、たくさん稽古を重ねてきたので、今は高揚感で胸がいっぱいです、そんな感じです」
正門良規「舞台が大好きってお話はいろんな場でさせていただいてるんですけども、いつかはシェイクスピアの作品を、と思っておりまして、そしてできることなら、森さんの演出でこの会場(グローブ座)でやりたいなと思っていました。(今回は)自分にとってすごく贅沢な機会なので…約1ヶ月通ほど稽古してきて、本当に大変な日々でしたけれども、森さんの不安を吹き飛ばせるように明日から頑張りたいと思います。ゲネプロやって一発ぶちかませるように頑張りたいと思います。楽しんでいってください」
大鶴佐助「僕は女性役が初めてで、最初はすごく緊張するのかなと思ったんですけど…逆にここまで振り切ってしまうと普通の男を演じる、緊張は少なく、楽しんで演じています。はい。あの稽古場ではマーくん(正門良規)のたくさんの愛を育んできたので(隣で大笑)。はい。お客様にそれを見せつけたいと思います。熱いキスシーンも全く嫌がらずに受け入れてくれました。僕の演じるオリヴィアは思い違いをして恋をしますが、僕自身は小さい頃から父の遺伝で甲殻類アレルギーだと思い込んでいました。でも28歳くらいの頃に検査をしたら、実は全くアレルギーではなかったんです。ただ、未だに甲殻類は怖くて食べられないです(笑)。よろしくお願いします」
阿知波悟美「サー・トービー・ベルチをやります。阿知波「さとみ」と役名の「サー・トービー」が似ていると思って親近感が湧きました。まさか、この年齢になって、これだけのシェイクスピアの芝居をやるとは思っていませんでしたが、たまたまそういう流れになり…もう格闘の日々で、今も満身創痍です。森さんからは、剣を下げたり、瓶を持ったりなど色々な手枷足枷を頂戴し、年寄りいじめるのが得意な方かな思いました(笑)。でも板の上では大変楽しませていただいております。稽古場で印象的だったのは、最初の頃に膨大なセリフを覚えるため、全員が私語を一切せずに台詞を呟いていたストイックな光景です。まだ私できるぞ!なんて思っております」
峯村リエ「明日初日を迎えるとは思えないぐらい。気持ちはもう18歳で頑張ります。稽古場で印象的だったのは短いシーンでも濃密な稽古を行ったことです。ほんの2、3ページの台本に対して 6 時間ほどの稽古をしました。今回は勘違いや思いのすれ違いが色濃く描かれている作品ですが、私が勘違いしていたのは「歯ぐき」を「歯ぎく」だと思っていたことです(笑)」
演出家よりキャスト陣の魅力と本作に込めたこだわりについて。
森新太郎「僕はヴァイオラという役はシェイクスピアの時代には少年でやっていたので、これは本当にチャーミングな男性に演じて欲しかったんですよ。あの女性の場合は素敵なのは知ってるんですけども、多分男性が女性の役をやる、その女性になってさらに男性の役をやるっていう重なった構造がとても面白いと思ったんです。まずやっぱりこれは男の子でやるべきじゃないかと。正門良規くん、彼に何とかやってくれないかと…意外にもノリノリで OK してくれました(笑)
オールメール(女性役を含むすべての役を男性の俳優が演じる演劇作品のこと)という方法もよくあるんですけども、逆によくあるからと言いつつも、他に男女逆転も考えたんですが、完全に逆転させるってのもこれもまた、ちょっと理屈っぽいかなと思って。お芝居がすごくドンチャン騒ぎなので、いっそちょっと俺も想像できないところに行きたいなと。むしろあまり男性女性の枠にとらわれないで、もう好き勝手にキャスティングしていった方が面白いんじゃないかなと…一つの賭けではあったんですけども、そういうことで、僕の中で本当にこの俳優さんのこの役を見てみたいっていうのを独断と偏見で…結果としてこのような面々が揃ったんですけど、全部14人。見ての通りこれだけでも十分賑やかなので、プロデューサーの方から事前に相談を…『ちょっと難しいかな』(笑)。もう本当に、僕は想像したよりもこれは大成功だったと自分では思っています。あとは、こだわりというか、ピンクのセットで、これ今回のテーマが『LOVE』、色恋以外にも兄弟愛や友愛だったりとかまた峯村さんが演じるマルヴォーリオ、うぬぼれてるんですけども映画見ると、セリフが自己愛。良くも悪くもこれはもう愛に満ちた芝居なんだなと思って。話し合って、こういうもうこれ以上ないっていうぐらい、LOVEがあふれた舞台装置になりました。それと今回皆さんに楽しんでもらいたいのは祝祭劇なので…世界中どこを見ましても祭りに欠かせないものといえば音楽ですね。その中でやっぱり僕としては信頼できるし、一度やってみたかったBUN Imaiさんに全ての曲をお願いしまして…毎日稽古場に通ってくださって、我々の芝居に合わせて曲を作ってくださって…素晴らしい曲を更にもう一流のアーティストさんが揃って生演奏で皆さんに届けしますので、もう既にひっくるめて堪能していただければ」お越しいただければなと思っております」
最後に公演PR。
正門良規「せっかくの喜劇ですので、皆さんも何も考えずにご覧にしていただけたらいいなというふうに思ってます。ちょっと、(シェイクスピアは)難しいかなと思っていらっしゃると思うんですけど、全然そんなことないです。ふらっと笑いにきていただければいいなと思います」
あらすじ
船が嵐に遭遇し、双子の兄と生き別れた妹・ヴァイオラ(正門良規)。
イリリアに流れ着いた彼女は、生き延びるために男装し、「シザーリオ」と名乗って、公爵オーシーノ(長井短)に仕えることに。密かにオーシーノに恋心を抱いているが、男のふりをしているため、想いを告げられずにいる。
一方、オーシーノは、伯爵令嬢オリヴィア(大鶴佐助)に夢中。冷たくあしらわれても情熱は冷めず、お気に入りのヴァイオラを使者に立てて、自らの想いを伝えさせようとする。
因果な務めに葛藤しながら、オーシーノの想いをオリヴィアに届けるヴァイオラ。だがオリヴィアは、男装したヴァイオラに一目惚れしてしまい……!
ヴァイオラの男装から始まる、もつれにもつれた恋の三角関係。果たしてその結末は――?
公演概要
舞台『十二夜』
日程・会場:
東京:2025年10月17日(金)~11月7日(金) 東京グローブ座
大阪:2025年11月15日(土)~11月21日(金) 森ノ宮ピロティホール
出演:正門良規(Aぇ! group)、大鶴佐助、高橋由美子、松本紀保、長井短、北村優衣、阿知波悟美、峯村リエ
笠原竜司、冨永竜、田中穂先、鈴木崇乃、天野勝仁、古賀ありさ
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
演出:森新太郎
作編曲・音楽監督:BUN Imai
美術:堀尾幸男
照明:杉田諒士
音響:けんのき敦
衣裳:西原梨恵
ヘアメイク:鎌田直樹
アクション:渥美博
歌唱指導:満田恵子
演出助手:石田恭子
舞台監督:弘中勲
主催・企画製作:東京グローブ座 シーエイティプロデュース