マスネ作『サンドリヨン』2025年11月15日、16日に上演。
『マノン』『ウェルテル』などの名作オペラで知られるフランスの作曲家ジュール・マスネ。その音楽の美しさはサン=サーンスに「煌めくダイヤモンド」と称された。

シャルル・ペローのおとぎ話が原作の、華やかで愉しく、ときに寄り添うようなあたたかな旋律によって紡がれる「シンデレラ」の物語を指揮するのは、オペラの名手・柴田真郁。演出・振付はミュージカルやダンスなど多方面で活躍する広崎うらん。
楽しい前説のあと、始まる。1幕、アルティエール邸、召使いたちが働いている。口々にアルティエール夫人の横暴を嘆く。


パンドルフは再婚は失敗だったと後悔。実の娘、サンドリヨン(リュセット)は女中同然に働かされており、パンドルフは妻の尻に敷かれっぱなし。アルティエール夫人は盛りに盛ったヘアスタイル、その二人の娘・ノエミとドロテのヘアスタイルも盛り盛り。

そんな折にお城で舞踏会が開かれるという。ただのダンスパーティではなく、王子の花嫁を見つけるための舞踏会。夫人と二人の娘はド派手なドレスを纏っていそいそと出かける。パンドルフは渋々ついていく。残されたサンドリヨンは自分の境遇を嘆き、一人眠ってしまう。そこへ妖精が現れてサンドリヨンに美しいドレスを着せて、馬車も用意、12時までには帰るように言い、宮殿へと送り出す。


ディズニーのアニメや映画などでお馴染み。また、ロジャース&ハマースタインによってジュリー・アンドリュースの主演で製作のミュージカルも有名。このオペラの『サンドリヨン』は原作に近い。広崎うらんの演出&振付がPOP、コミカルなシーンは徹底的に面白おかしく、観ていてつい笑ってしまう。


我儘で高慢な夫人と娘2人、振付で嫌味な人物像に可笑しさをプラス、その挙動がコミカル、またパンドルフのとほほな空気感、哀愁を感じつつもちょっと笑ってしまう。そしてシャルマン王子、国王からの”結婚圧力”に憂鬱、下を向いていたが、美しいサンドリヨンと出会い、変わっていく。


また、ディズニーのアニメでは太り気味の魔法使いのお婆さんだったが、ここでは妖精。そういった差異を楽しむのも一興。

多彩な楽曲、「お姉様たちはなんて幸せなんでしょう」と自分自身を嘆く歌など、聞きどころは多いが、特に3幕の王子とサンドリヨンの愛の二重唱は聴かせどころで最後の方で妖精も加わり三重唱、タイプの違うソプラノとメゾ・ソプラノの三重唱はなかなかレア!

登場するキャラクターが全て個性的、ディズニーでは王子様は絵に描いたような凛々しい完璧イケメンだったのに対して、こちらは登場した時は少々鬱気味で、将来への展望も持てない、といった風情、サンドリヨンと出会ってからの落差も見どころの一つ、継母、最後はちゃっかり!娘2人、ノエミとドロテ、意地悪なだけでなく、お頭も弱い?コメディリリーフ的な立ち位置。王についている大学長、儀典長、総理大臣、王様にしっかりくっついている姿は可笑しみもあり、クスッと笑える。


ドキドキ、ハラハラな場面もあるが、ハッピーエンドなので先刻承知、そこに至るまでの細かい笑いやほっこりするシーンも満載。舞台美術はシンプルだが、照明などで変化をつけるあたりは21世紀ならではのテクノロジー。演出・美術・衣裳・照明&アライブペインティングの効果については12日にシンポジウムがある。
概要
日程・会場:
2025年11月15日(土)/16日(日)各日14:00開演 日生劇場
※開場は開演の30分前。上演予定時間:約3時間(休憩を含む)
指揮:柴田 真郁
演出・振付:広崎うらん
出演
11月15日
サンドリヨン(リュセット):盛田 麻央
シャルマン王子:杉山 由紀
妖精:鈴木 玲奈
ド・ラ・アルティエール夫人:齊藤 純子
パンドルフ:北川 辰彦
ノエミ:市川 りさ
ドロテ:藤井 麻美
11月16日
サンドリヨン(リュセット):金子 紗弓
シャルマン王子:山下 裕賀
妖精:横山 和美
ド・ラ・アルティエール夫人:星 由佳子
パンドルフ:河野 鉄平
ノエミ:別府 美沙子
ドロテ:北薗 彩佳
両日
王:龍 進一郎
大学長:照屋 篤紀
儀典長:湯浅 貴斗
総理大臣:的場 正剛
精霊
相原 里美
工藤 麻祐子
日下 萌音
斉戸 英美子
馬場菜穂子
畠中海央
ダンサー(50音順)
川竹 麻耶
木原 萌花
鈴木 孝太
中込 萌
長澤 風海
松本 ユキ子
アライブペインティング:中山 晃子
カヴァーダンサー:高嶋 悠花
管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ
公式サイト:https://opera.nissaytheatre.or.jp/info/cendrillon2025/
撮影:ヒダキトモコ

