舞台『ピーターとアリス』が、2026年2月9日〜 東京・東京芸術劇場 プレイハウス、2月28日~ 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。
この舞台は、トニー賞やオリヴィエ賞で数々の受賞歴を持つマイケル・グランデージの演出によって、13年にロンドンウエストエンドで初演。脚本は、世界を熱狂させたミュージカル『ムーラン・ルージュ!』や映画「ラストサムライ」「007 スカイフォール」など多数の名作を生み出したジョン・ローガンの書き下ろし。
世界中で愛される名作「ピーター・パン」と「不思議の国のアリス」。そのモデルとなった2人が、奇しくも数十年後に出会い、現実と幻想を交錯させながらそれぞれの辿った人生を赤裸々に語り始める。演出は、『夜への長い旅路』『MISHIMA~班女~』『陽気な幽霊』ほかを手掛けてきた熊林弘高。翻訳は、直近『インヘリタンス-継承-』『陽気な幽霊』などで熊林とタッグを組む早船歌江子。不思議の国のアリス役を演じるのは古川琴音。ピーター・パン役は青木柚が演じる。
「ピーター・パン」のモデルとされる人物ピーター・ルウェリン・デイヴィス役は劇団EXILEの佐藤寛太。そして、「不思議の国アリス」のモデルとなったアリス・リデル・ハーグリーヴス役は麻実れいが演じるほか、飯田基祐、岡田義徳、簡秀吉、山森大輔らが出演。この作品に出演する古川琴音&麻実れい、Wアリスのインタビューが実現、台本を読んだ感想などをお伺いした。

ーーまずこの作品の出演オファーをいただいたときの感想を。
麻実:この作品をご紹介いただいた時に「面白いかな」と思ったのと、戦い甲斐がありすぎると感じて、チャレンジしたくお受けしました。
古川:私は、ときめきましたね。まず最初に、アリスをオファーしてくださったというだけでなく、「ピーター・パン」と「不思議の国のアリス」はどちらも馴染みのある児童文学なので、この2人がどうなるんだろうか?何が起こるんだろうか?というすごく大きなクエスチョンが浮かびました。アリスを演じられることのときめきもありつつ、どういうストーリーなんだろうという好奇心や興味が湧くような作品で、とても嬉しかったのを覚えてます。
ーー歳を重ねたピーターとアリスのやり取り、そこに、物語から抜け出たようなアリスとピーターが出てきて一瞬カオスになるような…。
麻実:そうですね。このドラマを包む空間全体がシュールというか、ファンタジックな世界になっていて、そこでリアルな芝居が始まるのは面白いですね。そこに妖精みたいなアリスちゃんがやってきて…。
ーー台本を初めて読んだときの感想と、2回目、3回目に読んだときの感想は少し変わりましたか。
麻実:一番初めに、まだ直訳に近い状態のものをいただいて読みました。そしてつい先程、何回か改訂された台本を頂戴したので、これから目を通すのがとても楽しみですが、簡単にできるお芝居じゃないってことはもう想像できますし、最初にいただいた原稿を読んだときにも感じました。
古川:最初に読んだときは、やっぱり1回ではわからなくて…ただ、唯一わかったことは、大人になるってどういうことなのか、ということだったんですね。「ピーター・パン」と「不思議の国のアリス」、誰もが子供の頃に1回は読んだことのある作品を通して、大人になってこの作品を読んだときに自分が何を感じるようになって何を感じられなくなったのか、私もこれから年を重ねるにつれて向き合っていかなくちゃいけないテーマだなと思いました。それから先日、演出の熊林さんと翻訳の早船さんとの勉強会に参加しました。セリフを1行ずつ見直してどういう表現が良いのか検証していく様子を聞かせていただける機会があったんです。そのやり取りの中で、現実のピーターさんとアリスさんの会話が持つ緊張感や、言葉の裏側にある2人の過去がわかるようになってきて、この世界における過去と現実と物語が入り乱れていく……その奥深さがだんだんとわかってきたように思います。
ーー後半の戦争の話をするシーンについては、どう思われますか。
麻実:アリスは3人の息子がいて、そのうち2人を戦争で亡くしている。そういう落ち着きのない時代に生きてきて、子供を育てた女性。大変な時代だったと思いますが、それ以前に、子供時代にこれだけ有名になり騒がれたことは、子供心にも分かるし、感じている。そして自分の子供たちは急に戦争で人生が終わってしまって……その後の道のり、どういう一歩が可能だったのかなと思います。どうにもならない戦争の状況が続いて、きっと考えている時間も無かったとは思いますが、夢と現実がそこでくっきりと分けられたんじゃないか、という感じがします。
古川:私も夢と現実がはっきり区切られたような、急に”戦争”という言葉を聞いておとぎ話の世界から無理やり引き剥がされるような感覚がありました。たとえば「ピーター・パン」の世界におけるネバーランドでの戦いは、勧善懲悪のハッピーエンドで終わりますが、現実の戦争は、自分が生き残ることが必ずしもハッピーではないかもしれない。アリスも童話の中では勇敢な少女だったけれども、息子を守ることはできなかった。「ピーター・パン」のピーターも「不思議の国のアリス」のアリスも、人間だったんだなって気付かされる瞬間だと思いました。

ーー読めば読むほどいろんな要素が出てくるようですね。
麻実:そんな気がしますね。最終的には、それぞれの子供時代がどうであれ、”人生”というところに繋がっていくと思うんです。それはピーターやアリスだけでなく、どんな人々にも。人生、時代、戦争など、様々な状況から生きていかざるをえない。いろんな経験を経て、まだまだ「私って一体なんだろう?」と感じる部分もあります。
ーー現時点で、ここを見てほしい、こういうところを感じて欲しい、という点があれば。
麻実:ピーターにはピーターの生き方がある、アリスにはアリスの生き方がある。物語の「ピーター・パン」と「不思議の国のアリス」その彼らの”終末”っていうんでしょうか。そこを最後まで辿っていって、「こういう人生を送ったんだ」と、そして自分に置き換えるとどうだろうかと。時代は異なりますが、今も世界ではどこもかしこも戦争だったり、非常に危ない時代になっている。日本でも少し状況が変わったら……。だから、今との共通点も多く感じて、はっきり言って怖いな、という感覚が残ります。

ーー今も、地球上のどこかでは戦争が絶えない状態ですね。
麻実:そうですね。もっとひどくなるかもしれません。今、私たちが幸せに好きなことをさせていただいて、お客様とともに時を過ごせるということは本当に幸せだなと思います。
古川:今回の台本を読んで、「ピーター・パン」と「不思議の国のアリス」、子供のときには気づかなかったメッセージがたくさん込められている作品だと思いました。作者のジェームズ・バリーとルイス・キャロルからのメッセージは、きっと大人からの子供への伝言のようなもの……そう改めて感じました。「ピーター・パン」と「不思議の国のアリス」の世界は、もう子供のときのようなファンタジーワールドではないかもしれないけれど、勇気を持って観に来てくださると、自分の知らない世界や自分の知らない自分に出会えるのではないかなと思います。
ーーたとえば子供のときに観たミュージカル『ピーター・パン』と、大人になって自分の子供を連れて観に行くのと、感じ方は変わるでしょうか。
麻実:変わると思いますね。成長して、いろいろなことを知りますから。
ーーこの舞台もきっと、お客様が100人いたら100通りの感じ方がありますね。
麻実:そう思います。おそらく大人の方々が多くお越しになると思いますが、やはり過去の子供時代に自分の中を通ってきたこの有名な2作品を通して、そしてこの『ピーターとアリス』という舞台を通して、改めていろんなことを感じられるんじゃないかと思います。2人の人生は過酷だなと思いますけど、これが現実なんですよね。どういう仕上がりになるか、どういうものをお客様にお見せできるか、やはり大事なお時間を頂戴して劇場まで足を運んでくださるので、作品の持つメッセージだけはきっちりとお届けしたいと思います。
ーーありがとうございました。公演を楽しみにしています。

あらすじ
1932 年、ロンドンのとある書店で開催された「ルイス・キャロル展」の開幕式で、アリス・リデル・ハーグリーヴス(当時 80歳)と、ピーター・ルウェリン・デイヴィス(当時 35 歳)は出会う。永遠の子どもとして物語に刻まれた2人は、そのとき一
体何を語り合ったのか。現実の世界に”ピーター・パン”と”不思議の国のアリス”が登場し、過去と幻想が複雑に交錯して
ゆく。大人になった 2 人が辿り着く、人生の終幕とは――

概要
舞台『ピーターとアリス』
作:ジョン・ローガン
翻訳:早船歌江子
演出:熊林弘高
会期会場:
東京:2026年2月9日(月)~2月23日(月祝)東京芸術劇場 プレイハウス
大阪:2026年2月28日(土)~3月2日(月)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
キャスト:古川琴音 青木 柚/飯田基祐 岡田義徳/簡 秀吉 山森大輔/佐藤寛太 麻実れい
公式サイト:https://www.umegei.com/peteralice2026/
ヘアメイク・スタイリスト
麻実れい
ヘアメイク:本名和美
古川琴音
ヘアメイク:伏屋陽子(ESPER)
スタイリスト:山本杏那


