「マイ・フェア・レディ」や「プリティ・ウーマン」の原作『ピグマリオン』。シェイクスピアに次ぐ英国人劇作家、ジョージ・バーナード・ショーが1912年に執筆した傑作喜劇。1913年にウィーンで初演されて以来、”英語劇の中で最も知的で皮肉な喜劇の一つ”(The New York Times)などと言われ、今も世界中で愛され、上演され続ける名作。26年1月20日より東京建物 Brillia HALL[豊島区立芸術文化劇場]に初日を迎え、名古屋、北九州、大阪にてツアー上演される。映画「マイ•フェア•レディ」ではオードリー•ヘプバーンが主人公イライザを演じ魅了。以降、数々の名優が演じてきたイライザ役に、沢尻エリカ。沢尻は2024年舞台初出演にして初主演「欲望という名の電車」で、主人公ブランチを熱演、本作では初めて英国喜劇に挑む。また、個性的で唯一無二の存在感を放つ六角精児がイライザを変貌させるヒギンス教授役。上流階級の家庭で育ったフレディ・エインスフォードヒル役を橋本良亮。清水葉月、玉置孝匡、市川しんぺー、池谷のぶえ、小島聖、春風ひとみ、平田満という豪華キャスト。演出には英国演劇界の重鎮、ニコラス・バーター。世界的な名門校、英国王立演劇学校の校長を務め、数多くの世界的俳優を輩出させた。主な卒業生には、ビビアン・リー、アンソニー・ホプキンス、ケネス・ブラナー、トム・ヒドルストンなどの名優が名を連ねる。ヒギンス教授を演じる六角精児さんのインタビューが実現、作品について、また演じる役柄などについて語っていただいた。

ーー出演のオファーの感想をお願いいたします。
六角:僕はこの作品を読んだことも見たこともなかったので、どうしようかなと思いましたが、これもご縁ですし、しっかりとやってみようかなと思いましてお受けいたしました。
ーー『ピグマリオン』は有名なミュージカル『マイ・フェア・レディ』の原作にあたりますが、ミュージカルではヒギンス教授は宝田明さんや草刈正雄さんが演じていらっしゃいました。台本も読みましたが、このヒギンス教授、もし、彼が現代にいたら一発退場な発言の多いキャラクターですね。
六角:今ならパワハラと言われるでしょう。この戯曲が書かれた頃や昭和の時代もそうですが、当時普通にあった言葉使いだったり、態度だったり…、僕としては、これまで見てきた周りの人間や先生などを思い出したときに、それほど違和感のない態度として感じられるところはあります。ところで、台本を読んで、おわかりになられました?
ーーミュージカルは観てますので、概ねわかりました。
六角:僕はミュージカルを拝見してなかったので最初はわからなかったです。

ーーミュージカルを観ていれば、予備知識もありますので、台本を読みながらミュージカルシーンを思い出し、違うところを確認しつつ。結末が違いますし。
六角:違いますね。
ーーミュージカルではヒギンス教授とイライザが結ばれますが…。
六角:映画もそうですよね。
ーーヒギンスは中身が変わったのか変わってないのか、この先も彼は相変わらずなのかな?それともちょっとここで少しは何かを学んだのかな?みたいな、曖昧な感じですね。
六角:彼は(音声学の)専門家なので、何かに対して熱中して、周りの人や物事が見えなくなるようなところは多分にあると思っています。その中で、彼はイライザという女性を実験台にして彼女をしっかりとした女性に教育していくわけですが、その過程でちょっとずつ彼女自身の明晰さ、女性らしい賢さなどがどんどん芽生えてきて、その中でヒギンスは自分との齟齬が生じて、最終的に置いていかれてしまうという形になると思うんですね。その人に依存してた気持ちやいなくなったときの虚無感、寂しさなどが『ピグマリオン』には描かれているので、ヒギンスの自分勝手さや偏屈さだけではなく、そのように生まれた感情もしっかりと演じていければなと思ってます。

ーー時代もありますが、イライザの自我がどんどん芽生える。
六角:そこですよね。インドの王族だろうとアイルランドの貴族だろうと、イライザは望めば誰でも結婚できるっていう勘違いがヒギンスにはありますけども、彼女はそういうことではなく、ちゃんとした生活を送りたいというだけですから、非常に地に足がついたリアリティがありますよね。だからイライザの方がちゃんとしてるんですよ。
ーー当初は言葉遣いもなまってて身なりもちょっとみすぼらしい感じですが、だんだん変わっていくに従って、この人は本当は中身がきちっとしてしてる人だったんだっていう…。
六角:最終的にわかってくるようになるんですね。それに気づいてないのはやっぱりこちら側だけ。ピカリング大佐もやっぱりどこか気がついていますから。でも自分(ヒギンス)だけが気づかないっていうことはあるのかなとは思ったりしてます。
ーー出てくる人物が皆、個性的。
六角:はい。それぞれの階級の方、軍人とか町のゴミ収集の人とか。普通集まらない人たちが、イライザを通して集まった人間模様という形。
ーーイライザがいることによって、本来ならばその時代だったら出会わない人たちが出会う。
六角:はい、そういう人たちと出会って、結局自分たちもそんなに変わらないというんでしょうか、『自分のやってることをわかっていたとしてやっているかい?』っていうセリフがあるんですけど、そういうことですよね。みんなそんなに変わらないんだってことが台本にはあるのかなと思ったりします。言葉というものが壁になったとしても、それを取れば、みんなそんなに変わらないんだってことが、昔のこの作品に描かれている。そこがやっぱり面白いんだと思います。
ーー性別の違いはありますが、イライザが変わっていくに従ってみんな人間そんなに変わらないということがみんな少しずつわかってきて階級とか出身とかはどこかで乗り越えられるんだみたいな…基本的にはなかなか難しいですが。
六角:今も必ずしも平等だといえませんが、それを乗り越えてるところが『ピグマリオン』、そういうお話だと思います。
ーー共演の方々も皆さん個性的ですが、お稽古はどんな感じでしょうか。
六角:翻訳劇ですから、立ち稽古をやりながら、並行して…どういう意味で言ってるのか、わかりづらいところのすり合わせを含めた上で、演出家に質問しながら疑問点をみんなでディスカッションしたりしていますが、だんだん、立ち稽古の要素が強くなってますね。

ーー原作が結構深いですよね。
六角:あえてわかりやすくしてないし、そうなっていない。ミュージカルはわかりやすいところもありますが、(原作と)ニュアンスは少し違うかなとは思いますよね。
ーー最後に読者へのメッセージを。
六角:なかなか骨のあるコメディ、直接的な面白さではなく、自分の中に収めてみて、こういうことって面白いのかな?と自分の中で検証して、面白さを見つけるような、そういう作品だと思うんです。お芝居を見に行くという、何か醍醐味みたいなものがこの作品には含まれてるので、よろしければ劇場にいらしてくれたら嬉しいなというふうに思ってます。
ーー登場人物が出たり入ったりのシンプルなコメディじゃないですし。
六角:シチュエーションで笑わせるわけではないですからね。しかも20世紀初頭のイギリス、いろいろな想像力を使ってお客さんにも観ていただきたい思うんです。そこにお芝居の醍醐味も含まれているので、僕らと一緒にハードルを越える、そういう形かな?と思ったりします。皮肉めいたところも入ってますし、もちろんコメディ部分もありますが、そうでない部分も多くて、その中にまた違った面白さが入っていると思います。
ーー確かにコメディですが、これは結構硬派な芝居だなと思います。
六角:単純にセリフ量が非常に多いです。いつもはバイプレイヤー的な立場で演じることが多いので、休めないんで大変です。

ーーセリフの多さと格闘しつつ。
六角:もういい歳なので(笑)。
ーーありがとうございました。公演を楽しみにしています。
あらすじ
音声学のヒギンス教授は、ある雨の夜、コヴェントガーデンの路上で花売り娘のイライザと出会う。ロンドン訛りが強烈で教養の一欠片もないイライザ。そのイライザの夢は路上の花売りではなく、花屋で働けるレディになること。「この娘にたった6カ月で上流階級の話し方を身につけさせることは可能なのだろうか。」ヒギンスは面白い実験材料が見つかった!と喜び、盟友のピカリング大佐と協力して、イライザを徹底的に教育する日々が始まる。
過酷なレッスンを経て、ヒギンス教授とピカリング大佐の期待以上のレディに生まれ変わったイライザは、見事、社交界で大成功をおさめる。そんな中、若い青年フレディはイライザの真の魅力に惹かれていく。

概要
タイトル:ピグマリオン-PYGMALION-
会期会場:
東京:2026年1月20日(火)~2月8日(日)東京建物 Brillia HALL[豊島区立芸術文化劇場]
名古屋:2026年2月13日(金)~2月15日(日) 御園座
北九州:2026年2月21日(土)~2月23日(月・祝) J:COM北九州芸術劇場 大ホール
大阪:2026年3月5日(木)~3月8日(日) SkyシアターMBS
作:ジョージ・バーナード・ショー
演出: ニコラス・バーター
翻訳: 髙田曜子
上演台本:須貝 英
美術/衣裳:パメラ・ハワード
出演
沢尻エリカ
六角精児
橋本良亮 清水葉月 玉置孝匡 市川しんぺー
池谷のぶえ 小島聖 春風ひとみ
平田満
渡辺慎平 松谷翔一朗 ウラシマ 根橋そら 恩田晴菜 小山うぃる
<MUSICIAN>
Cl./Fl./A.Sax.:土井徳浩 (大阪公演:鈴木直樹)
Vn. :定村史朗 Acc.:藤野由佳 Dr./Perc.:和田啓
公式HP:https://pygmalion2026.jp/
#ピグマリオン2026

