劇団スタジオライフの今年最初の公演は『MY NIGHT with REG』。1994年にロンドンにて初演、日本では1996年に加藤健一事務所で『レグと過ごした甘い夜』というタイトルで公演、実に日本初演から30年。配役はジョンを笠原浩夫、ガイを曽世海司、エリックを千葉健玖、ダニエルを緒方和也、バーニーを前田倫良、ベニーを奥田努。なお、タイトルロールのレッジ(REG)は舞台に登場しない。

場所はアパートの一室。エプロン姿のガイ。登場した途端にマメで人の良さが滲み出てくる。ジョン、ガイを見る眼差しは優しいが、何かを秘めている。エリックはこの二人より若く鼻歌を歌って何やら機嫌が良さそう。陽気で気さくそうなダニエル、ジョンとガイ、ダニエルは大学時代からの付き合い。このトライアングル、タイトルにあるレッジとダニエルはカップル。だがジョンは密かにレッグを想い、ガイはジョンを想う。優しさと友情がこの危ういトライアングルのバランスを保っている。ゲイコミュニティで知り合ったバーニーとベニーの二人は出てきた途端にお互いがパートナーであることがわかる。ちょっと引いた位置にいるエリックはパブの従業員。

微妙な距離感と親密感、話題にのぼるが決して出てこないレッジが、この関係性に多大な影響を与える。タイトルの『MY NIGHT with REG』、実は全員が『MY NIGHT with REG』。この張本人が登場しないことが彼らの感情を際立たせる。そしてレッグは病死する、ダニエルが号泣しながらやってくる。この戯曲が書かれた年代、1994年にロンドンで初演。時代背景、エイズ、最初に認識されたのは、1981年夏のアメリカ。現在では抗HIV薬が開発されているので、HIV感染症、エイズは必ずしも死と直結する病気ではなくなったが、この当時はエイズと聞けば「死」を連想する。
優しさと恋と死への恐怖と喪失による哀しみ、痛い心を抱えたまま生きる彼らは全てが愛おしい。忘れられない恋愛感情、切なさ、お互いを癒そうとする抱擁。休憩なしのおよそ2時間ほどだが、3つのパートに分かれている。物語の中心にいるのはジョンだが、彼を取り巻く彼の仲間たちそれぞれの想いも濃密に描かれており、彼らの佇まいは優しさと慈愛に満ちている。

ラスト近く、ジョンとエリックがソファに座っている。心と心を通わせあう。音楽、小道具、時代を連想させるが、描かれていることは普遍的。人の優しさは哀しみを乗り越えさせようとする。乗り越えられなくても、その痛みを分かち合うことによって生きる明日がある。スタジオライフらしい作品のチョイス。公演は終了したが、また、何かの機会に上演してほしい作品。
あらすじ
1980年代の半ば、ロンドンのアパートの一室で繰り広げられる6人の男たちの物語。
登場人物のガイ、ジョン、ダニエルは大学時代からの付き合い、そしてゲイコミュニティで3人との付き合いの始まったバーニーとベニー、彼らの行きつけのパブ「カエルとトランペット」の従業員エリック。
ガイは大学時代からジョンに惹かれているが、心のうちに秘めていて告白せずにいる。
ジョンはガイの想いに気付かずレッジに好意を寄せている。だがレッジのパートナーはダニエル。この縺れた恋の矢印にバーニーとベニーのカップルが加わり、さらに浮気の糸は縺れてゆく。エリックの一歩離れた正直な問いが彼らの琴線を刺激してゆく。
そしてタイトルロールのレッジは舞台に登場しない。彼らの会話の中だけで語られる不在人物が男たちに更なる混乱をもたらしてゆく――――
痛い心を抱えた男たちの話なのに、コメディ仕立てになっているところが作家ケビン・エリオットの真骨頂。
概要
日程・会場:2026年2月5日〜15日 ウエストエンドスタジオ ※公演終了。
翻訳:小田島恒志
演出:倉田淳
出演(配役):
ジョン:笠原浩夫
ガイ:曽世海司
エリック:千葉健玖
ダニエル:緒方和也
バーニー:前田倫良
ベニー:奥田努

