一気に桜が満開になった3月27日、某所で『High Life』の公開稽古が行われた。この作品に登場するのは、たったの4人、しかも全員男で、皆ジャンキーという“あぶない”設定だ。
公開されたのは、冒頭の部分、4人が一堂に会し、ディック(古河耕史)が良からぬ、しかも相当ヤバい計画を話すシーンだ。舞台セット、雑然とした雰囲気で危険な計画を話すにはピッタリ。
時間になり、稽古が始まる前にキャストの挨拶があり、それから演出家が挨拶「演劇の公開稽古をします!」そして「さあ〜演劇しよう!」の合図で開始。
4人が距離を取りながらの位置にいる。沈黙、4人誰からともなく煙草を手にする。この緊迫した静寂から勢いのある台詞が飛び出す。ディックがある計画を話し出す。とにかく4人とも追い込まれた状況、にわかには信じられないなんとも都合のよい計画、この4人がひとつの場所に集まるのはこれが初めてだが、初対面ではないメンバーもいる様子だ。時間にしておよそ15分ぐらいだろうか、ここでいったん芝居はストップ。演出の谷賢一が細かい動きや仕草、抑揚を指示する。そして再び開始、ぐっとリアリティが増してくる。睨みをきかせるバグ(伊藤祐輝)、いきなりドニー(ROLLY)に襲いかかる、過去に何かあった様子。ビリー(細田善彦)はディックのなんともあぶない話にやや“前のめり”なのか?そんなことを想像しながら観ていると、早く続きが観たくなるような、そんな密度の濃い、およそ35分強の公開稽古であった。
公開稽古の後はお決まりのフォトセッション、先程までの緊迫感はゼロでなごやかな雰囲気でパチリ。そしてキャストと演出家5人の会見が行われた。
まずは演出家の谷から作品の説明、「4人のどうしようもない、ジャンキーのお話です。人間の弱さや可愛さの作品、ジャンキーはイメージが悪いですが、彼らは欲望に忠実で不器用です。実際に覚せい剤とか使うと捕まりますが(笑)……4人芝居ですが、ドラッグ中毒のリアリティを作らなければならない。ディックは全員を手練手管を使って悪の道に引きずり込みます」稽古では、他の3人を説得力のある語りで“落としていく”様子を見せていた。特にビリーに対しての説得シーンは何度か返すたび毎に、だんだんと「それ、イケルかも……」と思わせてしまうようになってくる。これは初日が楽しみ!
また、それぞれのキャラクターについてだが、古川は「いかようにも捉えられる余白のある人物」と評した。細田は「なかなかつかみどころがない」と言い、伊藤は「怒りやすい、短気」と語る。ROLLYは「虐められて育ちました。生粋のいじめられっ子だったので……不良に絡まれる感じがが役に立っています……何でも、無駄なことはないですね、心臓が止まりそうな感じとか」と語る。
実は今回の作品は音楽が重要な役割を果たすそう。「音楽は瞑想したり、トリップしたりするのにいい」と演出家。「宗教の音楽、アフリカの音楽、トンでいくような感覚」とコメント。さらに「現実感をなくす感覚、音楽で(ドラッグ)身近に感じられるように」とコメントした。ROLLYは「4人しかいないからほぼ全部の稽古に出なければならない。ストレートプレイですが、音楽寄りになりそうな、アートな感じ」
記者から「プライベートで一番、ヤバい人は?」というヤバい質問が出て、演出家がノリノリで「せーのーで指を指す!」と言って盛り上がり、掛け声で本当に指を指した先は……満場一致でROLLY!、しかも自分で指してる!伊藤が「リスペクトの意味でヤバい人」とここはきれいにまとめる。
演出家から演出プランとして、背景は全て映像を使うという。「トリップしたら、空間自体が歪んだり、変色したり……そんな空間にしようかと」と語るが、ここも要注目ポイントだ。さらに「アート寄りの作り方です。一般のストレートプレイでは観られないものにしたい」と意気込む。
最後に古河が「僕ら、初めての試みで、そういう空気で!何が起きるんだろうと、ワクワクとドキドキで、このご期待をうけて是非、劇場へ!」とまとめて会見は終了した。
<ストーリー>
集まった男4人は孰れもジャンキー。保護観察中のディック(古河耕史)、出所したばかりのバグ(伊藤祐輝)、女性関係で追い込まれているビリー(細田善彦)、そして腎臓が一つしかないドニー(ROLLY)…… 人生に行き詰まった彼らは、一発逆転を狙って大金を手に入れようとディックが思いついた「ある計略」に乗って、銀行のATMを襲うために渋々手を組む。
ディックの期待、バグの苛立ち、ドニーの緊張、ビリーの高揚……盗難車の中で息を潜める四人のテンションが極限まで張り詰めて、一触即発の事態が。
※この物語は、違法薬物の使用等についての反社会的な思想や行為を容認するものでは決してありません。
【公演データ】
High Life -ハイ・ライフ-
日程:2018 年 4 月 14 日(土)~28 日(土)
会場:あうるすぽっと
脚本:リー・マクドゥーガル
翻訳:吉原豊司
上演台本・演出:谷賢一
音楽:吉田 悠(Open Reel Ensemble)、吉田 匡(Open Reel Ensemble)、
山口 元輝(moltbeats)
映像:清水 貴栄 (Drawing & Manual)
主催・製作:株式会社 ソニー・ミュージックアーティスツ
出演:古河耕史、細田善彦、伊藤祐輝、ROLLY
公式サイト:http://sma-stage.com/highlife
文:Hiromi Koh