2017年までに過去11回来日、計821公演125万人以上を動員、アメリカ発のマーチングバンドをベースにした エンターテイメント「ブラスト!」。その「ブラスト!」のエネルギーが、ディズニーのマジックと融合して生まれた「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」。 今年は「ブラスト!」来日公演を名実ともに牽引してきた、石川直(パーカッション)の最後の「ブラスト!」 出演となる。2000年に日本人初の「ブラスト!」入団を果たし、ブロードウェイの舞台も経験。米所裕夢(トランペット)は11年『ブラスト!』のオーディションに合格、2012年の日本ツアーでは最年少ソリストに抜擢された。2014年にもソリストとして中心的な役割を果たし、2016〜2017年の「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」でも大活躍。この2人に音楽のこと、「ブラスト!」のこと、「ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー」の楽しさなどを語っていただいた。
「5人兄弟の中で一番、音に反応したのは僕だったらしいです」(石川)
「楽器は僕以外、誰も興味を持たなかったですね」(米所)
――生まれて初めて楽器にさわった記憶はございますか?いつぐらいのことでしょうか?
石川:記憶している限りでは、4、5歳の時に家にあったおもちゃのハーモニカ。祖母の家にもハーモニカがいくつかあって、それを玩具の一つとして吹いていたのがスタートだと思います。子供用の小さい車、押すと「ぷっぷー」って鳴りますが、これと同じように何かすると音が出るものっていうことで楽器っていう認識はなかったと思いますね。
――いじったりさわったりすると音が出るもの、ですね。
石川:くわえると音が出るもの、遊ぶものっていう感覚だったのかな?そのうち、音階があることに気がつきまして。幼稚園の頃にはアニメの「ドラえもん」とかのテーマソングを聞いてハーモニカで真似をして吹いたりしていました。
米所:僕も同じですね。幼稚園の頃にクラスのみんなで鉄琴を叩いてみたり、鼓笛隊というほどではないですけど、そういう所で楽器に触れたのが初めてですね。何をやったかも覚えていなければ、どんな感じだったかも覚えていないのですが。本格的な楽器に触れたのはピアノで、6歳から始めました。それがスタートですかね。
――基本的には幼児の頃ですね。
2人:はい。
石川:僕は勝手に遊び始めましたね。母が言うには5人兄弟の中で一番、音に反応したのは僕だったらしいです。『耳コピ』でハーモニカ吹いたりとかっていうのも基本的には僕しかやってなかったみたいですね。子供が5人、同じものを与えられていた中でも、僕は楽器系には反応していたみたいですね。
――兄弟が複数いて、同じものを与えても反応は違いますね。
石川:取り合いでけんかになることもあれば、全然違うものに興味持ったりしますね。
米所:僕は4人兄弟の長男で楽器は僕以外、誰も興味を持たなかったですね。両親が趣味で楽器を、父親はギターを、母親はピアノをやっていました。その流れで、僕は音とかに興味を持ちました。下の兄弟も興味を持ち出したけどすぐにやめてしまいましたね。
石川:歳離れていたの?
米所:一番下とは10歳ほど離れていて、その一番下の妹が吹奏楽部を中学の時にやっていましたが、すぐやめちゃって今は全然(笑)。
「2か月間、毎日練習で、あれを経て最初の舞台に立って初めてお客様の前に立った時は『楽しいな』と。『これは病みつきになってしまうだろうな』っていうのは感じました。」(石川)
「いろんな壁にぶち当たりまくっていた2か月間の稽古で、初演を迎える時には楽しみはあった反面、正直怖かった。」(米所)
――そこから成長して(笑)、「ブラスト!」初参加の感想を。
石川:初めて「ブラスト!」の一員として本番を迎えたのは2000年の8月の頃だったと思うんです。ボストンでの公演が僕の「ブラスト!」デビュー。それまでの2か月間は住み込みの“軟禁状態”で、そこで毎日、12、13時間の練習が続き、結構辛かったです。あれを経て初めて「ブラスト!」のお客様の前に立った時は「楽しいな」と。「これは病みつきになってしまうだろうな」っていうのは感じました。それまでは本当に手を伸ばしたら触れるくらいの近い所にある壁に向かって練習をしているのを何人かのスタッフが見てチェックしてコメントしてくれて・・・・・。廃校になったアメリカの小学校の食堂兼体育館がメインの練習場でした。ここで積み上げてきたものを初めてプロとして、しかも素晴らしい劇場でパフォーマンスを披露した時、それを見ているお客様が反応している姿を見て感激しました。2か月間ずーっと、しかもじーっと耐えてきたので、ここでエネルギーを出して・・・・・本当に気持ち良かったですね。
――練習期間が長ければ長いほど感動がひとしおですね。
石川:そうですね。
米所:僕が初参加させてもらったのが、2011年のアメリカツアー中でナッシュビルでした。石川さんがやられていた頃と比べると設備は整っていて、ちゃんと寝床もあってホテルも用意されていて、恵まれた環境だったんですが、練習状況は石川さんと同じような環境で2か月間、ずっと練習。アメリカでの演奏経験はそれまでは一回もなかったので、言葉の壁、あとは圧倒的に育ってきた環境が違うので、自分が思っていたプロセスを踏んでいっても全然通用しない。ただ、逆にこれは自分の方が人よりとび抜けているなっていうのもありましたが、やっていく順序が全然違うのが大きかったです。いろんな壁にぶち当たりまくっていた2か月間の稽古で、初演を迎える時には楽しみはあった反面、正直怖かった。そこは後々、自信につながっていったので今となってはいいスタートだったなと思えるんですが、当時は、初舞台を踏むということに対しての緊張、「大丈夫なのかな?」っていうことや、「受け入れてもらえるかな?」と・・・・・・お客様に対してもありますが、僕の中ではまずはメンバーにだった。ものすごく仲良くしてもらっても、ステージに立って同じように一列に並んだ時に、変な目立ち方をする日本人がいると、ショーとして成立しないと思うんです。客観的に見てもそうだし、メンバーの中に入って練習中に感じていたことでもありました。でも終わった時には変わることなく仲間として接してくれた。自分の中では恐怖もあったけど、充実していたし、良かったなと。後から感動が、結構日数が経ってから出てきました。初日は感動っていうよりも武者震いみたいな「大丈夫かな?」っていう震えはずっと消えなかった、それこそ、初デビュー公演、緊張!
石川:当時19歳。
米所:はい。
石川:ファーストステージはね。
米所:はい。
――その時は無我夢中で、感動が後からじわじわ。
米所:はい。じわじわですね。その時にもうちょっと感動できたらなって今は思うんですけどね(笑)。
石川:他のアメリカ人のメンバーも、本国のマーチングの世界大会で優勝して、そういった経験や実績を経て入ってきているので、すごく大変なんですよ。彼の場合はそれを飛び越して、日本の姫路の、いわゆる一般団体から、一気に「ブラスト!」に入ってきたので、しかも弱冠19歳で1年半前は普通の高校生で、マーチングやってきている日本人にとっても衝撃的な話でしたし、「ブラスト!」もメンバーの中でもその年齢で入ってきたのは、過去にも10人いるかいないかで非常に稀なこと。もともと「ブラスト!」は彼も当然知っていたので、それ故に自分でプレッシャーを強く感じてしまったのかな?と思いますね。もう、シンデレラボーイです(笑)
米所:(笑)。
石川:すごいんです!
「舞台上にマーチングを持ってきた『ブラスト!』という形にショー化してからは、舞台での見せ方、つまり横の動きっていうのが結構、増えたんです」(石川)
「(トランペットは)止まって吹いた方がいい音がするのは事実。しかし動きながらどこまでその音に近づけるかっていう研究はめちゃめちゃしますね。」(米所)
――「ブラスト!」は演奏しながらのパフォーマーの動き、フォーメーションがすごいですよね。普通は前を向いて演奏するのにカニ歩きとか、後ろ歩きとか、あれはすごいですね。
石川:一番、カニ歩きするのはドラマーだと思うんです。カニ歩きは、楽器が前にあるから、足を前に出せないんですよ。
――横に歩くってすごい大変だなと。
石川:僕もカニ歩きを7年ぐらいやっている時にふと「なんでカニ歩きなんだろう」と(笑)。日本に帰ってくるとみんなに「カニ歩き、カニ歩き」って言われるんです。そういえば、そうだなと(笑)。実は、僕はその世界に憧れていたんです。アメリカだと、7〜9人、スネアドラム持った人が並んで、ものすごいフレーズを一糸乱れずに叩いて、高速でカニ歩きをする。ものすごく力強くてスマートに見えて、やっているフレーズも複雑なので、非常にインテリジェンスさを感じるんですね。今まで見たことがないパフォーマンスですごく惹かれたんです。でも結局のところカニ歩きなんですよね(笑)。実は「こういう風に動きましょう」という制約があってそこで統一があるから、揃いやすい。横にあるいたり、後ろに行ったり、クロスしたりっていう見せ方、本来はフットボールのフィールド、斜め上から見せるものなんです。舞台になったら、2階席、3階席の方たちは同じような視点で見ることができます。1階席の方は正面から、観るわけで・・・・・舞台上にマーチングを持ってくる、「ブラスト!」という形にショー化してからは、舞台での見せ方、つまり横の動きっていうのが結構、増えたんです。スピード感や視覚的な変化っていうものを考えるとやはり、横が多くって・・・・だから僕らはカニ歩きをたくさんすることになるんですね(笑)。
――トランペットも吹きながら、動きますね。
米所:そうですね。
――あれもかなり大変だなと。
米所:僕はマーチングバンドから入っているので、音を出しながら動くのが前提。ただ、トランペットを始めたのが中学生の時で、動いたら吹けないとか、ちゃんと体を固定して吹かないといけないっていう教え方をされていますし、止まって吹いた方がいい音がするのは事実です。しかし動きながらどこまでその音に近づけるかっていう研究はめちゃめちゃしますね。「ブラスト!」は上演するステージのサイズで横に動いたり、あるいは横から縦になったりとかの切り返しがすごく多かったりする。狭いところを動くのでそこの研究は積んでいます。
石川:結構、危ないんですよ。「ブラスト!」の中でやっている楽器の中で一番、危ない楽器ですね、怪我をしますし。
米所:そうですね。
――当たると口元が危ないですね。小学生の時に鼓笛隊やったんですが、小学生レベルのことでもめちゃくちゃ大変です。
石川:僕も小学校の6年生の運動会の時にやりました。
――まっすぐ歩くのも大変だったので横とかクロスとか、観ていても大変そうだなと。
石川:マスゲームの要素を取り入れていますね。
――演奏しながら他の人の音を聞きながら、それに自分が入っていくっていう作業はかなり訓練をしないとできないですね。
石川:そこはですね、僕らは、楽譜を覚えて動きを覚えてラーニングクロスですよね、ラーニングのフェーズを超えてしまったら自動的に世界に入っちゃうんですよね。単純に好きなので、その音楽に演奏しながら、思いをはせる、空想する・・・・・そもそも、そういう類のことが好きな人間たちの集まり。しかもパフォーマンスを磨くことを長年やっているのでスイッチを切り替えるのがみんな早くって、ストンとその世界に入っていく。自然にチェンジしますね。
――からだに覚えこませないとできないですよね。
石川:そうですね、反復ですね。条件反射のレベルです。
「(ディズニーの楽曲を)純粋に大切にしている気持ちや曲に対しての責任感をしっかり出していかなきゃいけない。」(石川)
「オーケストラで楽しんでいただければいいものを、それをあえて『ブラスト!』で!見て楽しんでいただく、このディズニーの曲の素晴らしさのイメージを変えずに演奏する。」(米所)
――ディズニーは世界中のみんなが知っている曲、「ブラスト!」ならではのアレンジ、編曲、ポイントにはなってくると思いますが、ディズニーの楽曲はハードル高いですね。
石川:高いですね、ディズニーファンの方々は単純に知っているだけじゃなく、曲に思い入れがある。その曲を適当には扱うわけにはいかない。「ブラスト!」風のアレンジ、演出を加えてその元々の原曲を素材として生かして頂いています。それに対しての好み、好みじゃないっていうのも出てくるとは思いますが、純粋に大切にしている気持ちや曲に対しての責任感をしっかり出していかなきゃいけない。アメリカ人はもちろんディズニーはわかっていますし、僕らも緊張感を持ち、なおかつ楽しい世界観を僕らのエナジーテックなパフォーマンスで、さらに進化させるってことを考えながらやっています。
――皆さん、曲に思い入れがあるので、その持っているイメージがあって、そこから「ブラスト!」らしさを出すのが難しい。
2人:そうですね。
米所:編曲する人が別にいらして、僕たちはそこは触れないのですが、そのイメージを変えないことと変えること、この2つのことは離れているようですが、この「ブラスト!」には必要な要素かなと。ただ、曲を聴いて楽しんでもらうのであれば、実際にはディズニーの楽曲はオーケストラの曲が多いので、オーケストラで楽しんでいただければいいものを、それをあえて「ブラスト!」で!見て楽しんでいただく、このディズニーの曲の素晴らしさのイメージを変えずに演奏する。今までの過去2回、やっているのですが、僕は特にトランペットなので、メロディを吹くことが多く、どのパートよりもディズニーの曲の中の誰もが知っているフレーズを演奏することが多いと思います。かなり、「ブラスト!」用にアレンジされていますが、原曲、元の曲を聴いて「こういう演奏の仕方しているんだな」とかっていうところはチェックしています。
「とにかく単純に僕らもディズニーが大好きなんです」(石川)
「絶対に楽しいショーになるのは間違いないですし、楽しくしていくのは僕たちの仕事になると思う」(米所)
――最後に締めの言葉を。
石川:とにかく単純に僕らもディズニーが大好きなんです。中には見に来てくれるお客様と同じくらい、ディズニーにぞっこんのメンバーやクリエイターたちもいるので、結局ディズニーが好き、ディズニーをみんなで愛している人たち、専門的なパフォーマンスを作ったりやっていく人たちが「じゃあ、僕らだったら、新しいライブエンターテイメントとしてこういう風に拝借させていただこう」と。基本的にはものすごいエネルギーを放って、楽しく、ハッピーで前向きな空間ですね。こういうものをお客さんと2時間共有していただくのが「ブラスト!」のテーマでもあります。そこに関してはメンバー全員、日本人である僕らも日本ツアーができるのですごく楽しみですし、そしてディズニーというマテリアルでやる「ブラスト!」これは楽しみ以外の何物でもないんです。みんな自信を持っていて、それなりの関門を突破している、クリアーして集まってきたメンバーなので、もちろん自分たちの腕には自信があります。また、1年2年経って戻ってくるメンバーたちもいまして、その間に成長してきているので、それぞれが集まって「またあいつと一緒にこれができる」と「あいつ、どうなっているかな?音、もっとよくなっているんだろうな」とかって。気持ちを合わせながら作品を作っていくっていうのは僕らとしては一大プロジェクトでもあり、本当にとても楽しみです。素晴らしいショーになるのは間違いないし、今回で三回目のディズニーになるので、どんどん、クオリティを上げていくことができる!前回もご好評をいただいたのですが、さらに今回も2か月ほどじっくりと練り直して組み立て直していこうと!楽しい時間になることは間違いないです!是非、体感しに来てください。
米所:やはりディズニーは、日本だけでなく、どこに行っても誰もが知っている、そこに「ブラスト!」というマーチングやっている人だったら絶対に知っている、僕が憧れた吹奏楽、これが融合したショーなので、絶対に楽しいものになるのは間違いないですし、楽しくしていくのは僕たちの仕事。ディズニー好きでも「ブラスト!」知らないとかそういう細かいことは置いといて、興味を感じていただけるなら一回は来ていただいて、一緒に楽しんでもらえたらいいなと思っています。
――ありがとうございました!公演を楽しみにしています。
<演奏の様子>
【公演概要】
[公演タイトル] ブラスト!:ミュージック・オブ・ディズニー(英語表記:blast the music of Disney)
[公演日時・会場]
東京公演:2019 年 8 月 20 日(火)~9 月 1 日(日)東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ 11 階)
[上演時間] 約2 時間予定(休憩20 分含む)開場は各開演時間の30 分前
[主催] フジテレビジョン/キョードー東京
[主管] Disney Concerts
[特別協賛] ディズニー★JCB カード
[後援] アメリカ大使館 [協力] ヤマハミュージックジャパン
[公式HP] http://disney.jp/blast (PC・スマホ共通)
[ブラスト!ホームページ] http://blast-tour.jp (PC・スマホ共通)
[Facebook] Blast Japan Tour
[Twitter] @blastjapantour
[Instagram] @blastjapantour
[公式 LINE] @blastjapan
[YouTube] https://www.youtube.com/blastjapantour
埼玉公演:2019 年 7 月 15 日(月・祝)大宮ソニックシティ 大ホール
栃木公演:2019 年 7 月 20 日(土)宇都宮市文化会館 大ホール
茨城公演:2019 年 7 月 21 日(日) ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール(茨城県立県民文化センター)
群馬公演:2019 年 8 月 1 日(木)ベイシア文化ホール 大ホール
千葉公演:2019 年 8 月 6 日(火)市川市文化会館 大ホール
山梨公演:2019 年 8 月 18 日(日) YCC県民文化ホール 大ホール(山梨県立県民文化ホール)
神奈川公演:2019 年 9 月 2 日(月)相模女子大学グリーンホール 大ホール
ほか 全国ツアー全59公演。
Presentation made under license from Disney Concerts
(C) Disney All rights reserved
取材:Hiromi Koh
撮影:金丸雅代
舞台写真撮影:(C) taro