ミュージカル『ファントム』を11月9日より東京・TBS赤坂ACTシアターにて、12月7日より大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演される。 『ファントム』は、フランスの人気小説「オペラ座の怪人」を原作とした作品で、同小説の舞台化作品の中でも、怪人ファントムの人間像に焦点をあてた奥深い物語と美しい旋律で綴られる楽曲が高く評価されている大 ヒットミュージカル。 そして今回、2014年にファントム役を演じた城田優が演出に挑戦するのだが、ファントム役を演じ、演出も手がけるという試みは、ミュージカル『ファントム』史上初! もう一人の主演ファントム役を務めるのは加藤和樹。怪人ファントムと純真無垢な人間エリックという二面性を持つ繊細な役どころに数々の作品で主演を務める二人がWキャストで挑む。ヒロインのクリスティーヌ役には、宝塚歌劇団月組トップ娘役を経て退団後の活躍に目が離せない愛希れいかと、映画『アラジン』ジャスミン役の吹替えで抜群の歌唱力を披露し話題沸騰中の木下晴香。ファントムの恋敵となるシャンドン伯爵役には、 ミュージカル界で活躍が目覚ましい廣瀬友祐と木村達成が登場する。
公演に先駆けて製作発表会が都内で行われた。MCから作品について解説があり、それから、加藤和樹、城田優、愛希れいか、木下晴香による歌唱披露が行われた。披露された楽曲は「You are music」、情感たっぷりに歌い上げる4人、この4人揃っての歌はなかなかない。瞬間的に関係者、取材陣を作品世界に誘う。そんな場面であった。
それから改めて、加藤和樹/城田優(Wキャスト)、愛希れいか/木下晴香(Wキャスト)、廣瀬友祐/木村達成(Wキャスト)が登壇した。梅田芸術劇場の代表取締役の木村有裕より挨拶の後にこのミュージカル「ファントム」の作詞・作曲のモーリー・イェンストン氏からビデオメッセージが流れた。
城田優が演出することに関してはビデオメッセージの中で「非常にいいアイディア」とコメントし、「知性を兼ね備えている」と絶賛。さらに「感情を理解して描写する感受性がとても豊かです」と語る。「そして城田さん自身が自由であることが重要です」とコメント。そして「これほど才能に溢れた人」と語り、演出プランについては「クレイジーなアイディアでも構いません。やってみてください」と語るが、城田優に120%の信頼を寄せている様子だ。「『ファントム』が日本で愛され、新たな演出は光栄であり、喜びです。今までに見たこともない城田優ならではのオリジナリティの演出の『ファントム』を期待しています」と改めてビデオとは別のコメントが読み上げられた。
それから挨拶、
「楽しみでしかないです。プレッシャー、責任感、重要ですが、そこをどうにか、出演者とスタッフの皆様に引き続き、サポートしていただきつつ、この思い入れのある作品をより素晴らしい舞台にできるようにこれから精一杯、取り組んでまいります」(城田優)
「城田優演出の作品に出演する、自分にとっては大きな意味を持ちます。初舞台を彼とご一緒して、その彼とWキャストでしかも演出。僕をよく知っているからこその彼だから一緒に作り上げる、僕だけでなく彼独自の見方、見え方で演出して行くと思います。自分へのプレッシャーにもなりますが、加藤和樹がいいと言わせる作品に!自分にとっても・・・・みんなでとことん話し合い、演出・城田優を支え合って最後まで!」(加藤和樹)
「ずっと憧れていました。今回、演出の城田優さんはじめとする素敵なキャストさんと一緒に出演できるのは幸せです。Wキャストの木下晴香さんと一緒に精一杯勤めてまいります」(愛希れいか)
「城田優さんとたくさんお話させていただいている中で、熱い思いを・・・・この作品に携わることは幸せで光栄です。私自身。衝撃的なクリスチーヌ役をお届けできるように」(木下晴香)
「光栄で嬉しく楽しみにしていました。新しい魅力的な作品になるように頑張っていきたい」(廣瀬友祐)
「この座組の一員に慣れて嬉しく思います。自分の役をやるだけで精一杯なのに演出もやってファントム役もやる城田さん、こんなに勉強させていただける座組はないのでたくさん勉強させていただいてます。素晴らしい作品になるように頑張ってやっていきたい」(木村達成)
また作品について城田優は
「テーマといいますか、大前提として僕の意見としては大事なのはお芝居と歌。歌を歌い上げるミュージカルを作りたいわけではなく、心情を歌いあげるミュージカルを作りたい。この素晴らしい作品、楽曲、シーン、涙なくしては見られないシーンがたくさんあります。いかにして心を届けられるか、音楽で心を訴えること、第一のテーマです。素晴らしい才能を持っているとは思っていませんし、自分なりに一生懸命考えて、また考えずに浮かび上がったことをどれだけ面白く具現化できるか、それはスタッフのみなさんと一緒に詰めているところです。スタッフ・キャストのみなさんと寄り添いながら、作っていくこと、そこを一番大事にしたいです」それを受けて加藤和樹は「今までに経験したことのない現場になるかな?と期待はあります」とコメントした。
作品への思い入れについて城田優は「この戯曲に関しては世界中で上演されていますが、このモーリー・イェストン版の素晴らしさは、家族愛、エリックの人生、 ファントム、直訳するとおばけですが、どうして誕生したのか、どうしてそうならなければならないのか、そこのストーリーに心打たれる、家族の物語がすごく重要になっています。音楽も丁寧でかついろいろな切り口で、曲よって違う世界に連れていってくれる、派手なだけではない、哀愁とか、細やかな感情を描いている。14年にやった時『もっとできたな』という悔いもありました。自分なりにこの世界を最大限に魅力ををつたられるではないかと思いまして、そんな思いもあり、それで難易度の高いことを受けました」と語る。さらに役について「ファントム、エリックは複雑な環境で育っている。エリックの狂気性、ただかわいそうな人ではない、無知がゆえの残酷さ、そこをより描くことによって人間の複雑な心模様を、エリックについては、そこを掘り下げたい」とコメント。加藤和樹は「人との関わり合い、あとは彼がどうしてそうなったのか、そこは追求していきたい。愛希れいか「母性、これが彼女の魅力だと思います。やりがいのある役」とコメント、木下晴香は「難しい曲が多くチャレンジです。彼女が無邪気すぎて・・・・ファントムに対してもッシャンドン伯爵に対しても・・・・漠然としていますが」とコメント。廣田友祐は「(城田優に向かって)どうなんでしょう(笑)(「台本、もらってないもんね」と城田優)、うーーん歩き方を気をつけようかと(笑)、伯爵なので、僕、ちょっとがに股なので(笑)」と語り、城田優が「プレイボーイである彼がいかにクリスチーヌに惹かれるのか、純粋な彼が惹かれて行くところが見所じゃないかな」と補足説明。木村達也は「ファントムの恋敵の役ですので、お二人に負けないように・・・・・お顔立ちも素晴らしいし身長も高いし(笑)、歌も演技も最高なので・・・・・役者として戦っていければ(笑)」と語った。
またWキャストということで『お互いの印象』という質問に対して、城田優は「加藤和樹さんとは僕が19の時にご一緒してそこから7、8年の時を経てWキャストをやらせていただきました。印象としては、不器用なところが魅力で、ひたすらまっすぐに役柄や作品を追求して行く。エリックも不器用で、そこが彼の武器ではないかと。エリックの不器用さを重ねた上で、経験値と才能を信じて新しいエリックを演じてもらいたい」といい、加藤和樹は「城田優の最大の魅力は負けず嫌いだと思います。それを隠さない。その負けん気でできないことはないんじゃないかと。でも人として弱い部分を見せてくれる、優しいので、愛ある人(笑)」とコメントした。愛希れいかは木下晴香について「彼女の歌っている姿は何度も拝見しています。音楽に対する愛や情熱をすごく感じます」とコメント。木下晴香は愛希れいかについて「すごく活躍されている女優さんで初めてお会いするに当たってはドキドキしましたが、すごくチャーミングで可愛い!っていう印象です。お稽古ではすごく真剣で・・・・存在感とかが舞台での輝きとかがすごい」とコメント。広瀬友祐は「木村くんについての印象ですが、共演させてもらっていますが、彼の最大の魅力は『眉毛』かな(笑)。明るくって愛嬌がある、人としてすごく魅力のある、人間力がある人です」と語り、木村達也は「淡々と面白いことが言える。お笑いの師匠だと思っています。楽屋では笑いあいながら、良き先輩です。舞台上でリアルな芝居を!熱いハートを持った方です」と語る。また作品のナンバーについて城田優は「選べないくらいたくさんあるのですが、『母は向こうに』というナンバー、ファントムの心情がすごく変わっていく感じで、そこが恐ろしくもあり、いとおしくもあり、悲しくもある。個人的にすごく好きなのは前回から新曲として加わった『ビューティフル ボーイズ』、鳥肌が立つくらいにすごく美しいメロディーで悲しさもある曲です」と語ってくれた。
最後に城田優は「絶賛製作中です!自信は今は100パーセントではないのですが、スタッフ・キャスト、心を一つにして最高なミュージカルを!より素晴らしくオリジナルな世界で、”こんな『ファントム』見たことがない”というやったことのないことをたくさん散りばめてやっていけたらと思います!ぜひ、ご期待ください。作品を通して愛や生きる上でのポシティヴなエネルギー、何か素敵なメッセージをしっかりと届けられるように!キャスト・スタッフ一同、頑張っていきたいと思います」と締めて会見は終了した。
囲みでは作品について改めて。城田優は「しっかりと相手に届ける、セリフをのせる、歌もそうです。どんどん個性を出して歌を歌うのではなく、『語る』・・・・僕にとって歌を『語る』。心で表現する。あとは体感していただければ。これは全てのキャストに共通に望んでいること。お芝居も歌も変わらずに『相手に届ける』。歌をうまく歌うことではないんです。届けることを一番に考えて」と強調した。また「僕ならではのオリジナリティを大事にしたい、どこまで表現できるか、ファントムの心情をしっかりと」と力強くコメント。最後に「ミュージカル『ファントム』」(城田優)、「劇場で」(加藤和樹)、「おまちしております!」(全員)で締めくくって囲み取材は終了した。
<あらすじ>
舞台は19世紀後半のパリ、オペラ座。
楽譜売りで歌手志望のクリスティーヌ・ダーエは、その歌声をオペラ座のパトロンの一人であるフィリップ・シャンドン伯爵に見初められ、オペラ座で歌のレッスンを受けられるよう取り計らってもらう。
一方、オペラ座では支配人のキャリエールが解任され、新支配人のショレが、妻でプリマドンナのカルロッタと共に迎えられた。キャリエールはショレに、オペラ座の地下に幽霊がいて、自らを“オペラ座の怪人”と呼んでいることを伝えるが、ショレは解任された事への仕返しに怖がらせるために言っているに過ぎないと取り合わなかった。
オペラ座を訪ねてきたクリスティーヌを見たカルロッタは、その若さと可愛らしさに嫉妬し、彼女を自分の衣裳係にしてしまう。ある日、クリスティーヌの清らかな歌声を聞いたファントムは、ただ一人彼に深い愛情を寄せた亡き母を思い起こし、秘かに彼女に歌のレッスンを行うようになる。ビストロで開かれたコンテストで歌声を披露したクリスティーヌは、カルロッタに「妖精の女王」のタイターニア役に抜擢される。フィリップはクリスティーヌを祝福するとともに、恋心を告白。ファントムは、そんな二人の姿を絶望的な思いで見送るのだった。
初日の楽屋、カルロッタの罠にかかったクリスティーヌは毒酒により喉を潰されてしまう。客席からは野次が飛び、舞台は騒然となる。ファントムは失意のクリスティーヌを自分の住処であるオペラ座の地下へ連れて行く。しかしそれが、やがて彼を悲劇の結末へと向かわせることになる―。
【公演概要】
ミュージカル「ファントム」
日程・場所:
<東京>
2019年11月9日〜12月1日 TBS赤坂ACTシアター
<大阪>
2019年12月7日〜12月16日 梅田芸術劇場 メインホール
原作:「オペラ座の怪人」
脚本:アーサー・コビット
作詞・作曲:モーリー・イェンストン
公式HP:https://www.umegei.com/phantom2019/
取材・文:Hiromi Koh