ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」土曜の夜はダンス、ディスコ、フィーバーしながら何かが変わる。

新演出版ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」(イギリスプロダクション)が開幕した(その前は1998年ロンドンで制作、2003年大澄賢也主演で新宿コマ劇場で公演)。映画「サタデー・ナイト・フィーバー」の公開40周年を記念して2018年にイギリスで立ち上がったミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」は演出家のビル・ケンライトがリチャード・ウィンザーありきでスタートしたプロジェクト。 新演出の初期段階からリチャード本人もプロジェクトに関わり、 トニーの苦悩を描いた後半のソロ・ダンスでは、 振付のビル・ディーマーがリチャードのアイディアを随分取り入れたという。
1977年製作のアメリカ映画、監督はジョン・バダム。ジョン・トラボルタの出世作、日本での公開は翌年の7月。音楽と映画を融合した本作は60年代ディスコブームの再燃を到来させ、劇中に挿入されたビージーズ(BEE GEES)のディスコ・サウンドによるフィーバー現象は、現在のダンス・ミュージックへつながるエポックメイキングな作品。ビージーズを含めたサウンドトラック「サタデー・ナイト・フィーバー」が24週1位となり、その後の「フラッシュダンス」「フットルース」「ダーティダンシング」など80年代ダンス映画のサウンドトラックがヒットする現象も。

1970年代のアメリカ社会が背景、”青春のエネルギー”をディスコで踊ることで晴らす惰性の生活を送っていた主人公の青年トニーが、ディスコで出会った女性ステファニーの生き方に心を開かれ、新しい生活へ目覚めて大人へ脱皮していく。トニーはブルックリンの生まれ、ここは労働者の街であり、所得も低い。そしてブルックリン橋を渡れば、そこはマンハッタン、都会的な街でブルックリンとは対照的だ。そんな当時のアメリカ格差社会も風刺的に描いている。

トニーはペンキ屋で働いていたが、閉塞的な日々にうんざりしていた。父は失業中、母はパートに出ている。トニーは当然学歴は低い。学歴が低ければサラリーの多い職には有り付けない。だから賃金も安いが、雇い主が少しだけ賃金をアップしただけで大喜びするトニー。彼の生きがいは土曜にディスコで踊り明かすことだけだった。ここにくればつかの間の幸せがある、ダンスもうまいし、しかもモテモテ(トニーの汗をハンカチで拭い、その匂いを嗅ぐ女性が!)。ある日、ここで年上の女性・ステファニーに出会う。同じブルックリンの出身でありながら努力して勉強し、インテリだ。そんな彼女に出会い、トニーの中で何かが変わっていく、物語の流れはだいたい、こんな感じだ。

見せ場はダンスシーン、当時の楽曲、そして当時流行ったダンス、ミラーボールが回る。リアルタイムで映画「サタデー・ナイト・フィーバー」を観ていた、そしてディスコで踊っていた世代は瞬間的にタイムスリップできるくらいのリアルさ。あの有名なポーズ、腕をぐるぐる回し、ピポットターンなど『これ、踊った、踊った!』と懐かしさに浸れること、間違いなしな動きが満載!ダンスをしている時のトニーの顔は晴れ晴れとしている。ダンス、ディスコが彼の輝ける場所なのだ。そんな中、ダンスコンテストの話題に。優勝すれば!賞金が!手に入る。トニーはステファニーと出場することに・・・・・・。

メインストーリーいわゆる”トニーの成長”物語なのだが、サイドストーリーも見逃せない。ガールフレンドを妊娠させてしまったトニーの友達、苦悩し続ける。トニーの兄は牧師をやめてしまった。トニーの父は無職でやるせない思いで悶々とする。セリフの中にアメリカの様々な格差を示すものが随所に見られる。華やかなダンスシーンだけではなく、こういったシリアスな場面もしっかり作られており、背景のブルックリン橋が象徴的だ。
また”小ネタ”だが、トニーの部屋の前に貼ってあるポスターは、あの有名な、シルベスター・スターロンの出世作「ロッキー」だ。この映画の6年後、シルベスタ・スタローンの監督、脚本でサタデー・ナイト・フィーバーの続編である「ステイン・アライブ」(1983年)が撮られている。そんなところもチェックすると一層、この作品が楽しめる。

トニー役のリチャード・ウィンザー、平凡で月並みな言葉かもしれないが、とにかくうまい!単純な動き、素人もちょっと練習すれば踊れる動きも、彼が踊れば、キマる!かっこいい!キレイ!「かっこいいダンスっていうのはこういうもの」のお手本のようなダンス、もちろんステファニー役のオリヴィア・ファインズもちょっとした仕草がセクシーかつ美しいし、その他の出演陣もとにかく魅せる、魅せる!

そして公開ゲネプロの最後のカーテンコールの後に!TRFのDJであるKOOとタレントのアンミカが登場し、キャストと一緒に!踊る!踊る!リアルに楽しそう!決めポーズもバッチリ!

それから囲み会見が執り行われた。フォトセッションの後、囲みにはKOOとアンミカ。とにかく興奮状態!でにこやか!アンミカはスパンコールのワンピでキメキメ!KOOは「踊ったのは何年ぶり????TRFの15周年???20周年????」記憶が曖昧(笑)、「SAMより下手」とコメントして居合わせたスタッフ・記者を笑わせた。「映画見た世代はね〜シリアスな場面がね、それをきちんと再現してくれている」といい、アンミカも「映画が時代を超えている・・・・時代を超えて共感できる」と改めて原作のパワーを口にした。ただただ、ダンスシーンが楽しいだけでなく、その背景、トニーの日常はちっとも明るくない。だからミラーボールの下で踊る。気分もアゲアゲになれる、つかの間の幸せ。そして楽しい土曜が過ぎたら、また単調な日々。しかし、トニーは気がつく。自分で何かを変えていかなければならないことを。そこに感動がある。
「40年ですよ、歌もメロディーも聴き心地がいい」とコメント。そして当時の自分の話になり、「モテたかった!かっこつけたかった!女性にモテたかった!当時は先の見えない時代で・・・・DJ見習いで」と語る。続けて「若い人から年齢の高い人まで見て欲しい」とアピール。アンミカも「世代を超えて」と語った。そして公演期間中にクリスマスになるが・・・・「家族で見て欲しい」とKOOがいえば、「おめかしして!」とアンミカ。KOOは「うちの奥さんと娘と」といったところでアンミカの鋭いツッコミが「娘さん、デートの予定とかあるんじゃないの?」と(笑)。KOOは「何も聞いてないから!来年は自由にしていいから!」と笑いを誘った。
公演は29日まで。これを機会に映画を見た人は、また見返して、そして見たことのない若い世代は映画も!今年のクリスマスは”フィーバー!”。

なお、ホワイエのカフェカウンターで映画「サタデー・ナイト・フィーバー」でトニー(ジョン・トラボルタ)がディスコでいつも頼んでいたカクテル”セブン・セブン”(1000円+税)を販売。これを飲めば・・・・・往年のかっこいいトラボルタに大変身は無理だが、気分はトラボルタ!アメリカのウイスキー「セブンクラウン」を「7up」で割ったもの。7upは少し甘めな清涼飲料なので全体としてはやや甘めなハイボール的なお味。

【公演概要】
公演タイトル:ミュージカル「サタデー・ナイト・フィーバー」
生演奏・英語上演・日本語字幕あり
演出:ビル・ケンライト
振付:ビル・ディーマー
出演:リチャード・ウィンザー、オリヴィア・ファインズ 他
公演日時:2019年12月13日(金)~29日(日) 全22回
会場:東京国際フォーラム・ホールC(有楽町)
チケット料金(全席指定)
S席13,000円 A席9,000円 B席6,000円 U25当日引換券5,000円(税込)
お問合せ:キョードー東京 0570−550−799(平日11:00-18:00/土日祝 10:00-18:00)
主催:フジテレビジョン/キョードー東京/朝日新聞社 後援:BSフジ
公式ホームページ :https://snf2019.jp
取材・文:Hiromi Koh