《インタビュー》ミュージカル『ボディガード』レイチェル・マロン役:柚希礼音

1992 年にケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストン主演で世界中で大ヒットを遂げた映画『ボディガード』を舞台化。グラミー賞受賞曲「I Will Always Love You」をはじめとした映画の楽曲をふんだんに使ったこの大型ミュージカルは、「英国ローレンス・オリヴィエ賞」で、最優秀作品賞を含む 4 部門にノミネートされ、18 か月の英国&アイルランドツアーは完売しウェストエンドへ 凱旋。オランダ、ドイツ、韓国、カナダ、イタリア、オーストラリア、スペイン、フランス、オーストリア、米国等世界中で上演されてきた。2019 年 9 月遂に本場英国キャストによる初の来日公演を果たし、更に、来日公 演に続き、2020 年 3 月には、新演出にる日本キャスト版公演が決定、日本キャスト版で新たな演出を創り上げる演出家と、追加キャストも発表に。
振付・演出を手掛けるのはスティーブン・スピルバーグ製作総指揮の NBC ミュージカルドラマ 「SMASH」の振付でエミー賞を受賞、そして 2018 年には宝塚歌劇『WESTSIDE STORY』の演出・振付 で初来日を果たしたジョシュア・ベルガッセ。華やかかつ創意工夫に満ちたステージングで『ボディガード』のパワフルできらびやかな世界を創り上げる。
この作品のヒロインを演じる柚希礼音に演じることの難しさややりがい、抱負などを伺った。

「決まった時は挑戦しがいがあるな、と」

――出演が決定したときの感想は?

柚希:学生時代に映画「ボディガード」が流行っていて。作品はもちろん知っていました から、ホイットニー・ヒューストンのポジション……すなわち歌唱力も高くないといけな い。宝塚歌劇で男役だった自分がまさかこの役柄を演じることになろうとは夢にも思わなかったですが、決まった時は挑戦しがいがあるな、と。

――ミュージカル版「ボディガード」は最近にも来日公演がありました。

柚希:オーディションを受ける前にスコットランドでの公演を観ました。コンサートのような始まり方をするので、ミュージカル版ならではの盛り上がり、良さがあるなと感じました。歌がどんどん入ってくるので、ストーリーとして、レイチェルの役としての説得力やリアルさがとても大切だと思っています。

――役柄同士の人間関係もよく描かれて掘り下げられている印象です。

柚希:舞台なのでより出演者の方々とは稽古しながら、たくさん話し合ってやっていきたいと思っています。

――今回、訳詞を森雪之丞さんが担当されています。

柚希:今回は日本語だけでなく英語の歌もあるので、英語のレッスンをしたり、歌のレッ スンでも英語の歌詞のことをたずねたり。どうしてもネイティブではないので発音や表現 が気になってしまうので……。

――演出のジョシュア・ベルガッセさんからは何かアドバイスなどはありましたか?

柚希:私はずっとバレエなど踊りをやってきていてダンスが得意なので、「あなたの時は ダンスが増えるよ」と聞いています。演出として、演者それぞれのスキルに合わせた仕上 がりになるようです。

「いろいろな人が演じているレイチェルを見れば見るほど共感できます」

――ご自身から見て、「レイチェル・マロン」という役柄についての印象は?

柚希:とてもプロ意識が高く、責任感のある女性だな、と。すべてを仕事に活かしてやっ ているところに憧れます。レイチェルは子供はいるけど父親はいない…… いわゆるシングルマザー。このあたりも大恋愛をしたのか、辛い別れを経験したのか…… 一人の女性として踏ん張って生きているけれど弱さと強さを両方もっていて。いろいろな 人が演じているレイチェルを見れば見るほど共感できます。それでいてボディガードのこ とを好きになってしまって……別れが辛いからなるべく人に頼らないようにしよう、と考 えているのに。スターであるのに精神面で揺れがあって、人間味がある。その繊細さをど う表現しようか、と思っています。

――柚希さんもトップスターを経験していらっしゃいます。

柚希:スターというと、とても孤独そうだなと感じられるんです。なんでも持っているように見えて自由もないし……。レイチェルは愛すらもボディガードの彼と出会うまではあ りませんでしたから。命を狙われながらも、観客のためにステージに上がるという覚悟や 責任はとても共感できます。

「AKANE LIVさんは(宝塚の)同期の中でも歌はずっと一番だったので、私 も負けていられないですね」

――オーディションのときの印象は?

柚希:宝塚歌劇団に在籍していたときはオーディションの経験はほとんどありませんでし たが、退団後出演した「ビリー・エリオット」はオーディションで出演が決まりました。 オーディションってとても緊張するから、上手く演技ができなくて……。でも、「ボディガード」のレイチェルはとてもやってみたい役でしたし、しかもホイットニーの歌3曲が 課題だったのでしっかりと稽古してから受けました。出演が決まった時は本 当にうれしかったですね。

――共演の方々も実力派が並んでいます。

柚希:レイチェルの姉・ニッキー役のAKANE LIVさんは宝塚の同期なんです。ニッキー役 もオーディションだったようなのですが。選ぶ側の方は宝塚のことを知らずに選んでいま すから、こんな偶然あるんだなと思いました!なので、同期ならではの喜びや親しみはも ちろんありますが、姉妹としての嫉妬や複雑の関係性もお互い表現できればなと思ってい ます。AKANEさんは同期の中でも歌はずっと一番だったので、私も負けていられないで すね。

――来日公演のときに新妻さん、大谷さんと柚希さん3人で出てきたときの歓声の大きさ に圧倒されました。

柚希:あの時から3人で「助け合っていこうね」と誓いをたてました(笑)。大谷さんは 朴訥とした感じや真面目さが、自分がイメージする「ボディガード」にぴったりなんです よ。新妻さんもとても歌が上手な方。「ビリー・エリオット」以来のダブルキャストなん ですが、意識しなくても相手の方が上手だと我を忘れかけるんです。とは言いながらダブ ルキャストって学ぶべきところもたくさんある。今回は特にタイプの全然違う新妻さんな のでいろいろなところを勉強して高めていきたいですね。

「覚悟を持ってこの作品に挑んでいるので、多くの方に観ていただきたいです」

――今回の出演における課題はおありでしょうか?

柚希:今回は本当に、今まですべての舞台人生をかけてもできるかできないか……という ほどの難役ですから。今までで一番高いハードルに挑んでいる気がします。何よりもホイ ットニーの歌を、誰もが知っている歌を歌うことってすごく勇気がいることなので……。

――ホイットニーの歌の難しいところは?

柚希:やはり、ブラックミュージック特有のノリ、リズム感ですよね。宝塚の楽曲とはま た全然違うので。歌唱指導の先生方にいろいろ助けていただきながらモノにしていきたい と思います。

――舞台の見どころは?

柚希:やはり、ダンスが来日版より増えているところでしょうか。あとは、「日本のお客さまが納得できる展開を」ということで恋愛に対する描写など演出のジョシュアさんとこ れから話し合っていきたいです。日本語の歌詞である分、歌詞の意味も重要になってくる ので会議を重ねながら、翻訳しただけではない、来日版を観た方ならますます楽しめるよ うな日本人がより入っていける内容にしていきたいです。
いろいろなバージョンを観させていただいたんですが、それぞれ出演者の方々の良さが活 きた舞台なので、私らしい「レイチェル」を求めていきたいですね。本当に、覚悟を持ってこの作品に挑んでいるので、多くの方に観ていただきたいです。

【ミュージカル『ボディガード』日本キャスト版公演 概要】
公演日程:
〔大阪〕2020年3月19日(木)~3月29日(日)梅田芸術劇場メインホール
〔東京〕2020年4月3日(金)~4月19日(日)東急シアターオーブ

原作:ローレンス・カスダン作 ワーナー・ブラザーズ映画「ボディガード」
脚本:アレクサンダー・ディネラリス
演出: ジョシュア・ベルガッセ ※英国版来日公演とは演出が異なります。
出演:
レイチェル・マロン 柚希礼音・新妻聖子(W キャスト)
フランク・ファーマー 大谷亮平
ニッキー・マロン AKANE LIV
ストーカー 佐賀龍彦・入野自由(W キャスト)
トニー・シベリ 大山真志
フレッチャー 島田裕仁・大河原爽介・福長里恩(トリプルキャスト)
ビル・デヴァニー 内場勝則
青山航士
飯田一徳、小山銀次郎、宮垣祐也、加賀谷真聡、鹿糠友和、落合悠介、杉浦小百合、吉元美里衣、橋本由希子、HitoMin、杉原由梨乃、熊澤沙穂、斎藤葉月

お問合せ:梅田芸術劇場(10:00~18:00)
〔大阪〕06-6377-3800 〔東京〕0570-077-039
主催:ミュージカル THE BODYGUARD 2020 日本公演 実行委員会
企画・制作:梅田芸術劇場

公演HP: http://bodyguardmusical.jp

ヘアメイク:CHIHARU
スタイリスト:間山雄紀(M0)
構成協力:佐藤たかし
撮影:金丸雅代
取材:Hiromi Koh