加藤健一事務所vol.108『プレッシャー~ノルマンディーの空~』“ノルマンディー上陸作戦”を描いた秀作 共演 山崎銀之丞 11月11日日本初上陸!

原題は「プレッシャー(Pressure)」、俳優のデイヴィッド・ヘイグ(David Haig)が自ら書いて、本人自らが主人公のジェームズ・スタッグを演じている。2014年5月、スコットランドのロイヤル・ライシアム・シアターにて初演。 2018年、英国上演ツアーを行っている。
題名は、「プレッシャーを感じる」という意味でのプレッシャーと共に、お天気用語での気圧の意味でもある。つまり二重の意味をもたせているのである。そして有名な“ノルマンディー上陸作戦”決行されたのは1944年6月6日、「D-デイ」の名で知られているが、この「D-デイ」、戦略上重要な攻撃もしくは作戦開始日時を表す時に用いられたアメリカの軍事用語。語頭のDの由来については諸説あるが、一例として漠然とした日付を表すDayのDという解釈がある。歴史上最も有名なD-デイはもちろん、この“ノルマンディー上陸作戦”である。実は、この“ノルマンディー上陸作戦”は6月5日に予定されているが1日延期になった。その理由が”お天気”なのである。

1年がかりで計画されていた「D-デイ」まであと数ヶ月、という期間にイングランドの連合国遠征本部(Supreme Allied Commander)はイングランド南部のポーツマスから北へ8キロほどのところに置かれていた。最終判断を下すのは後に34代米大統領となる、ドワイト・D・アイゼンハワー(愛称アイク)。史上最大の水陸両用作戦(amphibious operation)、様々な条件が揃わないと決行できない。月の明るさ、潮の満ち引き、静かな海と風、そのいずれが欠けても作戦は実行できない。そこで呼ばれたのが、気象学者ジェームズ・スタッグ(James Stagg)氏であった。イギリス海峡は天候が変わりやすい。しかし、アメリカ側の起床専門家たちは過去のデータに基づいて5日でいけるといい、スタッグ氏は嵐がくるといい意見が真っ向から対立する。そして・・・・・結果は歴史が証明している。
この作品は事実を踏まえながら、人間ドラマを加えてデイヴィッド・ヘイグが執筆。また、描かれていないが、ドイツ軍側も天気情報を集めていたであろうことは想像に難くない。しかし、ドイツ側はしばらくは上陸はない、と思っていたようで、指揮官たちは海沿いから離れていたようであった。また、この作戦はイギリス国内でも極秘事項、延期すればするほど敵側に情報が漏洩する可能性も否定できない。そんなわけで”Pressure”。
また、この“ノルマンディー上陸作戦”を描いた有名な映画映画「史上最大の作戦」(1962年 原題:The Longest Day、一番長い日)があり、こちらは時間経過通りに進行する。ジョン・ウェイン、ロバート・ミッチャム、ヘンリー・フォンダ、リチャード・バートンなどなどの豪華スターが出演、アカデミー撮影賞、特殊効果賞を受賞、ゴールデングローブ賞を受賞している。有名な「史上最大の作戦のマーチ」も有名すぎる曲である。この映画でスタッグはほんの少しだけ登場し、アイゼンハワーに助言をしている。
同じ“ノルマンディー上陸作戦”では『プライベート・ライアン』(原題:Saving Private Ryan)、監督はスティーヴン・スピルバーグ、主演はトム・ハンクス。救出されるライアン役をマット・デイモンが演じている。アカデミー賞では11部門にノミネートされ、興行面でも全世界で大きな成功を収めている。

<観劇のポイント>
[歴史を動かしたのは天気]
第二次世界大戦において、終戦への大きな一歩となった「ノルマンディー上陸作戦」。 史上最大ともいわれるこの作戦には、莫大な経費がかけられ、大量の船や飛行機、そして約16万人もの兵士が集結した。
この作戦を決行するか否かは、天気予報ひとつにかかっている。 しかし、当時は気象衛星やスーパーコンピューターが無いだけではなく、敵国の上空の様子までもが機密情報のために 得られない状況下であったため、天気を予報することは大変困難であった。
[正反対の意見にハラハラ]
意見を求められた2名の天気予報士は、「快晴」「嵐」という対極の予報をだす。
しかしこのふたり、予測の方法は “新鋭的”と“昔ながら”、さらには性格まで“無愛想”と“営業マンタイプ”。 様々な面で対象的である。 このように正反対な部分ばかりでは、本当に意見が一致するのかと観客までもが不安に襲われるが、「正しい予報を する」という同じ目的の元、ふたりはどのような判断を下すのか、見ごたえを感じられる。
[劇場が緊張感に支配される]
多くの兵士、そして長引く戦争の命運を握る決断に、重大なプレッシャーがかかる主人公たち。 決断の時間が刻一刻と迫ってくる緊張感は、客席まであふれてくる! そして「作戦決行を翌日にずらした」真実が明らかになる。

<物語>
1944年、史上最大の作戦といわれた“ノルマンディー上陸作戦”の決行予定3日前。 イングランドの連合国遠征本部に、この作戦を成功に導く大事な要因として、天才と呼ばれるイギリス人・気象学者のスタッグ博士(加藤健一)が招かれた。 作戦の最高責任者であるドワイト・D・アイゼンハワー大将(原康義)の要求は“決行予定日の天気の予測”のただひとつ。予定 日の天候が晴れでなければ、この作戦は失敗に終わるのだ。 しかしスタッグ博士の予測は、まさかの大荒れ。だが、アメリカ人・気象予報士で、過去のデータを元に脅威の的中率を誇るクリック大佐(山崎銀之丞)は、決行日は晴れると主張する。
真っ向から割れる二人の意見。皮肉にも、穏やかな太陽の光が スタッグ博士を嘲笑うかのように照らす…。 嵐のなか決行すれば多くの犠牲者を出し失敗に終わる、作戦を中止させれば長年の準備が水の泡、そしてもし、予測がはずれ て晴れたら…。 壮大な作戦の最後の一手を背負った計り知れないプレッシャーのなか、スタッグ博士は最後まで任務を遂行できるのか―。

<公演概要>
日程・場所:2020年11月11日〜23日 下北沢・本多劇場
地方公演:京都公演 12/5(土)、兵庫公演 12/6(日)
※ホームページに日程詳細を掲載。
作:デイヴィッド・ヘイグ
訳:小田島恒志 小田島則子
演出:鵜山 仁
出演:
加藤健一、山崎銀之丞、原 康義(文学座)、加藤 忍、西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)、 加藤義宗、鈴木幸二 ・ 新井康弘、林 次樹(Pカンパニー)、深貝大輔
チケット(全席指定、税込):
前売 5,500 円、当日 6,050 円、高校生以下 2,750 円(学生証提示、当日のみ)
公式HP:http://katoken.la.coocan.jp/