現在、世界中で新型コロナウイルスが蔓延しているが、このミュージカルは実際に起こった大停電をモチーフにしている。突然のクライシスに人々はどうするのか?様々なエピソードが今も残っている。
8月24日、『Fly By Night~君がいた』の取材会が行われた。とは言っても、稽古場に行ってかつてのような取材はできない。そこで!Zoomでの取材会となった。その前に映像で稽古を拝見、とにかく全編歌!メロディーがキャッチーで耳に残る。ナレーターの原田優一が、ナレーター以外にも様々な役を演じるのだが、サクッと”スイッチ”して瞬間的にいろんな役になるので、ここは見どころ、時には笑ってしまうくらい(女性を演じる時が!)。そしてセットを動かすのもキャストが行うのだが、動きに無駄がなく、場面に馴染む。ナレーターは出ずっぱりであるが、それ以外のキャストも舞台にいる時間が長い。また芸達者ばかりなので、稽古であるにもかかわらず、完成度は高い。初日が楽しみであるばかりではなく、配信でも十分に堪能できそうな、そんな予感。
登場するキャラクターは、特別な人ではない。どこにでもいそうな、普通の人々、日常的な日々を送る。夢を抱く者、コンプレックスを持つ者、心が内向きな者、悲しみから出られない者、それぞれの気持ち、そのどれもが共感でき得る感情。日々を紡ぐ、出会いもある。
取材会には演出の板垣恭一とキャストの皆さま。板垣恭一から作品について、「損失を抱えた人たちの話」とコメント、妻を亡くした、あるいはコンプレックスを抱えているなど。ただ、よく考えると、それは生きとし生ける人間全てが抱えていると言っても過言ではない。それから、それぞれの役柄についてのコメント、そして作品についての質問、という進行。作品の魅力についてはキャストから「曲がキャッチー」「描かれている人間関係」「恋愛もある、親子の問題を抱えているなどの状況」、曲が多彩で、必ず誰かに共感できるところがある、というのが、この作品の魅力であろう。
また作品の特徴として必ずしも時系列で進んでいないという点。行きつ戻りつ、という感じである。「覚えるのが大変」という声もあるつつ、「楽しい」「今、どこをやってるのか混乱するが(笑)、でも面白い」(内田紳一郎)という感想が出た。ナレーター役の原田優一は、ポジション的にはそこをわかりやすくするのが役割だが、ナレーター以外の様々な役を演じるので「時間軸が移動することに一番翻弄されているのは僕です!」といい、一同、大笑いしながら大きく頷く。続けて原田は「エピソードが入れ替わることによって関係性がより濃く、はっきりとわかるようになっている」とコメント。構成の面白さ、劇場で観たら、配信でも観たり、と何度か観ると作品のユニークさに気がつくかもしれない。演出の板垣恭一は「人間の脳みそは時系列では進んでいない」と語る。
それから音楽についての質問が出た。様々なジャンルの楽曲、R&B、カントリー、Rockなど、これだけでも楽しめそうだ。万里紗は「父がアメリカ人で家にギターがありました。ダフネとNYに向かう時のシーンでは広大な風景が浮かびました」と語ったが、情景が想像できる音楽、またいろんな種類の音楽が使用されていることについて「いろんな人に受け入れられる」(遠山裕介)とコメントし、「かっこいい曲がいっぱい」(内田紳一郎)。また主にミュージカルで活躍している福井晶一は「ドラマを重視している作品なので、お芝居で魅せる印象」と語る。演出家としても活動する原田優一は「(作家が)攻めてるイメージがある」といい、さらに「曲の間の台詞量が多い!面白い構成」と”らしい”発言。
またセットもキャストが動かすので、ナレーター役はもちろん、舞台に上がっている時間が長い。これに関しては原田優一が開口一番に「地獄でした!」といい、一同、大笑い。原田優一は「やってみるとわかりやすい、なるほどと納得する、物語の進行が納得できる」と語る。「頭がいっぱいになって(笑)、さりげなくセットをスーッと移動してお芝居に入るのがかっこいいなーと。そこを目指して!」と内田紳一郎。青野紗穂は他のキャストと比較すると、それほどまではないようで「みんな、転換、頑張ってね!というエネルギーを送りたい」と笑わせた。この”セット移動”当然舞台上、「シーンに馴染む人でいるように頑張ります!」と遠山裕介、ここも見どころに。「楽しく転換すれば面白いかな?」と内田紳一郎。稽古を観た印象では、現状でも皆、違和感なくセット移動し、場面転換。大規模な大掛かりな仕掛けがないからこその転換の仕方、であろう。
演出の板垣恭一が時系列順に物語が進行していないことについて「混沌とさせたい」と語る。キャラクターを演じている時は”芝居をしている”、当たり前であるが、セットを移動させて場面転換している瞬間は”役”ではない。そこもまた作品の特長であろう。
そして今回は全ての公演が生配信。板垣恭一は「劇場で観るのが一番ですが、この状況下でリモートでやったり、配信したりすることは新しいコミュニケーションの形ではないかと。ぜひ、楽しんでいただきたい」といい、プロデューサーの宋元燮から「無謀にも全公演、生配信です。”ちょっと空いたからいく”という感覚で!」とコメント。劇場のみの公演はその席数の人数でしか観劇できないが、配信は無制限。そういう意味では観劇が気軽にできる、というメリットがある。また、劇場で観るのと配信で観るのとでは少し違った景色がみえるかもしれない。
またNYの停電がモチーフになっているが、当時でも未曾有な出来事、そして翻って現代もまた、歴史に刻まれるような未曾有なクライシスに直面している。板垣恭一は「この作品の初演が2009年で、その前年がリーマンショックがおこっています。こういうことを含めて(作家が)書いたのかもしれません」と語った。様々な意味において今日的な作品、「Fly By Night」、このミュージカルの中で、この言葉の意味するもの、それは劇場で。
公式HP:https://www.consept-s.com/fbn/
◇作品概要
実際に起こった大規模停電をモチーフに描かれる群像劇ミュージカル
この物語は1965年11月9日に実際に北アメリカとカナダを中心に起こった大停電(ニューヨーク大停電)をモチーフにしている。
この停電で実際に約2500万人に及ぶ人々が暗闇の中で12時間過ごす事になったという記録が残っているが、はっきりとした原因は不明で、「UFOの攻撃があった」という話が都市伝説のように残っているほどの大事件だったという。
極寒のニューヨーク、寒さと暗闇の中で人々は混乱し信号の停止で交通事故も多発したというが、ある場所では寄り添い暖をとりあったり、人が文明の利器を離れ互いを支えあったというエピソードも残っている。
■Fly By Nightとは?
よく使われる意味としては「夜間飛行」「夜逃げ」「胡散臭い」などの意味がありますが、一方で「束の間の」「刹那の」という意味も持つ言葉。
物語の中にこの言葉がどのように散りばめられているのか、というところも楽しんでみてください。
■Character
・ハロルド:サンドイッチ屋で働く青年。母親を亡くしたばかり。サンドイッチ屋で働く以外の人生を見つけたいと悩んでいる。
・ダフネ:サウス・ダコタの田舎町から女優を目指してニューヨークにやってきた野心的な女の子。
・ミリアム:ダフネの姉。内気で信心深く星を眺めるのが好きな素朴な女の子。
・ジョーイ:ニューヨーク生まれニューヨーク育ちの若手劇作家。名門一家の中で自分は落ちこぼれだと感じている。
・クラブル:ハロルドが務めるサンドイッチ屋のオーナー。若い頃は空軍で航空管制官をやっていたらしい。
・マックラム:ハロルドの父。最愛の妻を亡くし心の拠り所を探している。
・ナレーター:物語の時間軸を動かす。あらゆる瞬間に突如出現する。
■Story
1965年、ニューヨーク、11月9日
彼らは巡り会い、惹かれあい、そして・・・
1964年11月9日。母の葬儀を終えたハロルド(内藤大希)とその父・マックラム(福井晶一)。ハロルドは遺品の中にギターを見つけ「母さんはギターを弾いていたの?」と驚きつつ、形見として持ち帰ることにする。一方すっかり気落ちしたマックラムは、妻が大好きだった「椿姫」のレコードを聞きながら毎日を無為に過ごすようになる。
ちょうど同じ頃、人口1000人ほどの田舎町サウス・ダコタで暮らしていたダフネ(青野紗穂)は、女優を目指してニューヨークに行くことを決意。姉のミリアム(万里紗)に一人では心もとないからと泣きつき、母を説得。姉妹は一緒にニューヨークで暮らすことになる。行動的なダフネは洋服店で働きながらオーディションを受ける日々を過ごすが、あるとき、店の近くのサンドイッチ屋で働いていたハロルドと出会い恋に落ちる。ミリアムは星や宇宙が大好きな内気な女性。そんな彼女が唯一他人と繋がれるのは、カフェでウェイトレスをしているとき。ある日、ダフネがオーディション会場で若手劇作家のジョーイ(遠山裕介)に見初められ、新作ミュージカルの主役に抜擢される。その稽古に明け暮れるうちハロルドとすれ違い始めるダフネ。ミリアムは、突然現れた占い師(原田優一)に未来を予言されるが、その中に出てきた恋人の条件に合致するのはなんとハロルド。彼女は自身の気持ちに戸惑い田舎へ逃げ帰ってしまう。 サンドイッチ屋のオーナー・クラブル(内田紳一郎)は今日も、優柔不断なハロルドに発破をかけている。孤独を募らせたマックラムはある決心をする。
そして 1965年11月9日、ニューヨーク大停電が起きた。
【TIMETABLE & ACCESS】
■シアタートラム
日程:2020 年9 月1 日(火)~13 日(日)
■横浜赤レンガ倉庫1 号館3F ホール
日程:9 月19 日(土)~22 日(火・祝)
■プレイガイド
カルチベート・チケット対象公演(学生無料チケット・枚数限定)
https://www.consept-s.com/cultivate/
conSept 公式
世田谷パブリックシアターチケットセンター
チケットぴあ
e+(イープラス)
ローソンチケット
カンフェティ
LINE チケット
【お問合せ】
info@consept-s.com
●公式サイト https://www.consept-s.com/fbn
●Twitter https://twitter.com/consept2017
●Instagram https://www.instagram.com/consept2017/
●Facebook https://www.facebook.com/consept2017/
FLY BY NIGHT Conceived by Kim Rosenstock
Written by Will Connolly, Michael Mitnick, and Kim Rosenstock
■出演
内藤大希 Naito Taiki(ハロルド)
青野紗穂 Aono Saho(ダフネ)
万里紗 Marisa(ミリアム)
遠山裕介 Toyama Yusuke(ジョーイ)
内田紳一郎 Uchida Shinichiro(クラブル)
福井晶一 Fukui Shoichi(マックラム)
原田優一 Harada Yuichi(ナレーター)
■STAFF
原案:キム・ロゼンストック
脚本・作詞・作曲:ウィル・コノリー、マイケル・ミットニック、キム・ロゼンストック
日本語上演台本・訳詞・演出:板垣恭一
翻訳:工藤紅
音楽監督:桑原まこ
美術:乘峯雅寛
照明:三澤裕史(あかり組)
音響:戸田雄樹(エディスグローヴ)
衣裳:風戸ますみ(東宝舞台)
振付・ステージング:当銀大輔
ヘアメイク:竹節嘉恵(shuhari beauté)
演出助手:明羽美姫
舞台監督:齋藤英明(Roots)、大友圭一郎
イタリア語指導:三戸大久
演奏:桑原まこ(Pf)、成尾憲治(Gt)、堀井慶一(Ba)、長良祐一(Dr)
協力:ACT JP、アルファーエージェンシー、エイベックス・マネジメント、エンパシィ、ショウビズ、SUI、レプロエンタテインメント(五十音順)
宣伝デザイン:柚木竜也(aboka design)
スチール撮影:前康輔
PV動画製作:深沢麿央
PV動画撮影:角直和(極楽映像社)
票券:林晴美
宣伝:大林里枝
制作:上野正人(ゴーチブラザーズ)
プロデューサー:宋元燮
後援:TBSラジオ
共催:横浜赤レンガ倉庫1号館(公益財団法人横浜市芸術文化振興財団)<横浜公演>
企画・製作・主催:conSept
公式HP:https://www.consept-s.com/fbn/
文:高 浩美