ーーヴァーチャルな空間で出会った、様々な問題を抱えた人たち。 サイトを通じて心を通わせながら、それぞれが自分の人生を取り戻していく、 愛と希望の物語ーー
<G2 による翻訳・演出。さらに歌舞伎界の新鋭・尾上右近が、初の翻訳現代劇に挑戦!>
パルコプロデュースの「ダブリンの鐘つきカビ人間」、「メルシー!おもてなし~志の輔らくご MIX~」 などエンタテインメントの名作を手掛けてきた G2。この作品は、ピューリッツァー賞戯曲部門に注 目していた彼が自ら、「この戯曲を演出したい!」と心から願った 2012 年の受賞作品、翻訳と共に演出も手がける。さらに出演には、昨年の「スーパー歌舞伎II ワンピース」で市川猿之助が怪我で降板した後、 全編の主演を務め注目された尾上右近が、自身初となる翻訳現代劇の舞台に挑戦。幼い 頃に実母からネグレクトを受けて育ったトラウマを持ち、成長してイラク戦争参加した後に負った 負傷が原因で、薬物依存になった過去を持つ青年・エリオットを演じる。
<2008 年トニー賞作品賞を受賞した「イン・ザ・ハイツ」の脚本を担当した キアラ・アレグリア・ヒュディス女史による 2012 年ピューリッツァー賞戯曲部門賞受賞作>
作家のキアラ・アレグリア・ヒュディス女史は、2008 年にトニー賞で作品賞を含む 4 部門を受賞したミュージカル「イン・ザ・ ハイツ」の脚本も担当した脚本家。本作では、なぜ人は薬物に救いを求めてしまったのか、彼らが求めていたものが本当は何なの か、そこから立ち直った後、人々がどうやって生きていくのか迷い悩む姿を描いていく。コカインとインターネットという二つの媒介を通し、対比させることによって、人と人とが直に触れあう関係や結ばれた絆が、いかに 人生にとって大切なものかをくっきりと浮かび上がらせている。
<篠井英介が母親役で共演。現代劇初挑戦の尾上右近を支えるのは実力派俳優陣!>
尾上右近を支える出演者、舞台版「8人の女たち」で G2 演出作品にも出演している実力派の南沢奈央、芝居巧者の葛山信 吾、鈴木壮麻、陰山泰に加え、昨年の舞台「プレイヤー」、「すべての四月のために」などで演技力の高さを見せつけた村川 絵梨。さらに篠井英介が満を持して、母性溢れる主人公の母親役を演じる。
<G2コメント>
清元宗家の生まれにして、歌舞伎役者との二足の草鞋を履き、そして今度はピューリッツァー受賞の現代劇に挑戦。 右近さんのこのとてつもない意欲は素晴らしい。猿之助さんの代役を堂々と勤めていた姿も印象的。伸び盛りの二十代 が挑む作品は、作者ヒュディス女史が 35 才の時に書いた文字通りみずみずしい戯曲。イラク戦争で負傷したと元兵士 いう全く異文化の役や世界と、どう取り組むか楽しみです。今回もぐっと伸びて頂こうと思います。
演劇のほんとうの面白さって何だろう? と自問することが多くなった昨今、出会ったのがこの戯曲です。Web空間と演劇のミスマッチなマッチング。文字通りワールドワイドに繋がってゆく人々。(日本も登場します!)それぞれに問題を抱え、 喘ぎ、苦しみながらも、誰かと繋がろうとする。そんな登場人物たちが織りなす新感覚の劇空間を、右近さんを始め、熱 量の高いキャストたちと創り上げる喜び。それはきっと最高の興奮をもたらすはず。です。
<尾上右近コメント>
ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル。この作品が僕にとって初現代劇出演となったこと、とても光栄に思い、そして歓喜して います。初めての経験が重なりますが、演出家の G2 さんを信じて、そして自分を信じて、ぶつかる壁をも打ち砕くつもりで ぶつかっていきたいと思います!エリオットは僕と歳も近く、共感出来る部分も沢山あります。今の僕だからこそのエリオット を創り上げたいと思っています。皆様、是非劇場に足をお運びください!
<物語>
エリオット(尾上右近)は足を負傷したイラク戦争の帰還兵。彼の理解者で従兄姉のヤズミン(南沢奈央)は現在離婚 調停中で、人生に行き詰まりを感じていた。ヤズミンの勤める大学構内で二人で話をしながら、彼女の知り合いのアマン教授 (陰山泰)に、ある言葉の意味を質問するために校内で待っていた。それはなんということもないワンフレーズのアラビア語だった。 彼はイラクからの帰還以来その言葉に追い詰められていた。
一方、ここはあるサイト。このサイトにアクセスする“住人“たちによって、赤裸々かつ忌憚のないやり取りが繰り広げられている。サ イトの住人達はまったく異なる土地に住み、異なる人種、異なる職業についているが、サイトの管理人も含めてある共通点を持っ ていた。コカイン依存である。ここはそうしたドラッグ依存から抜け出そうとしている人々たちが本音で語る場所であり、抜け出すため の補助となるよう管理人が作り出したバーチャル空間だった。このサイト管理人こそ、エリオットの実母で、ハンドルネーム「俳句ママ」 ことオデッサ(篠井英介)である。依存から抜け出そうとする以外に、彼らはリアルな社会では孤独であるという共通点もあった。 そんな彼らはそれぞれ何日間シラフでいられたかをサイトで語り、あるときは汚い言葉で、あるときは優しく、明日もシラフでいようと励 まし続ける関係を作っていた。
エリオットが現在ママと呼んでいる人はオデッサではなく、オデッサの姉のジニーだ。エリオットが子供の頃、そしてオデッサがコカイン 中毒のさなかにあった頃、エリオットとエリオットの妹が流行性の胃炎に侵され、高熱の中で食べ物も飲み物も受け付けられないこと があった。この兄妹たちに、母であるオデッサは 5 分毎にスプーン一杯の水を与えなければならなかったが、オデッサはコカイン依存の せいでこれを途中放棄してしまう。隣人に兄妹二人が発見された時には、妹は既に脱水で亡くなっていた。辛うじて息のあったエリ オットは持ち直し、その後ママ・ジニーに引き取られて今に至っている。
オデッサは後にこれを悔い改め、現在では 6 年間シラフであり続けている。このサイトは、自分と同じような境遇にいる人々がシラ フでいられるよう援助することを目的に、彼女が一人で立ちあげたフォーラムだった。
サイトでは、米国の家族に里子として引き取られ、成人した今は母国の北海道で英語を教えている日系人、「オランウータン」 ことマデリーン(村川絵梨)と、アフリカ系米国人でロスに住む国税局の職員、「あみだクジ」ことウィルスキー(鈴木壮麻)、そ してフィラデルフィアに住む管理人「俳句ママ」が、いつものようにサイト上で語り合っている中、新たな訪問者が現れる。ハンドルネ ームは「ミネラルウォーター」ことジョン(葛山信吾)。裕福そうな彼は、住人たちに依存から抜け出すレシピを求めるが、住人た ちににべもなくあしらわれて無言のままログアウトしてしまう。しかし、数日後に彼は戻ってくると住人たちの仲間入りを果たし、やがて 起きる事柄で重要な役割を担わされることになる。
エリオットを育て上げてくれたママ・ジニーが、がんとの闘病の末に亡くなった。多くの人に愛を注ぎ、慕われていた彼女の葬儀のた め、エリオットとヤズミンはしばらく疎遠にしていたオデッサを訪ねる。それをきっかけに、バーチャルとリアルとが交錯しながら事態は思 わぬ方向に動き出していく。
【概要】
タイトル:ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~
作:キアラ・アレグリア・ヒュディス
翻訳・演出:G2
出演:尾上右近 篠井英介 南沢奈央 葛山信吾 鈴木壮麻 村川絵梨 / 陰山 泰
場所:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
日程:7月6日(金)~7月22日(日)
後援:TOKYO FM
協力:松竹株式会社
企画・製作:株式会社パルコ