原作の『フラッシュダンス』(Flashdance)は、1983年に公開されたアメリカ映画、これを元にしたミュージカルが日本初演を迎えた。映画は公開されるやいなやアメリカ国内で第3位となり驚異的な興行成績、世界中で1億ドル以上の興行成績に。ジャズダンス・ブレイクダンス等のダンスと軽快なサウンドトラックが印象的。マイケル・センベロの『Maniac』や映画のために作曲され、アカデミー賞を受賞したアイリーン・キャラの『フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング』など様々なヒット曲がある。また、ブレイクダンスをハリウッド映画として取り上げた最初の作品、日本ではTVドラマ「スチュワーデス物語」の主題歌として日本語でカヴァーし、こちらも大ヒットした。これのミュージカル化、2008年7月、イングランドのプリマスのロイヤル劇場でミュージカル版『フラッシュダンス』のプレミア公演が上演。脚本はロバード・キャリーと映画版の脚本を担当したトム・ヘドリーの共著、振付はアーリーン・フィリップス。これの日本語版脚本。訳詞・演出を担うのは岸谷五朗。映画・舞台など多岐にわたって活躍しているのは周知の通り。そしてヒロインであるアレックス・オーウェンズを演じるのは愛希れいか、初の単独主演。宝塚歌劇団出身、月組トップ娘役を6年7ヶ月務めた。その他、主にミュージカルで活躍する廣瀬友祐が恋人役のニック・ハーレイを、友人のグロリアを桜井玲香が、またベテランの春風ひとみがヒロインのダンスの師を演じる。
雑踏の音、映像で街の様子、中央からこの物語の主人公であるアレックスが自転車に乗って登場、ヘッドホーン、ラフで小粋な服装、ウオークマンで音楽を聴く。
あの名曲のイントロ、映画を観た観客なら、即映画のシーンが脳内に。ここは1983年、ピッツバーグ。それから、かっこいい、セクシーな女性達、アレックスの友人たちが歌いながら登場。そしてアレックスが働く製鉄所のシーンとなる。昼間はここで働いているが、夜はキャバレーで勤務。彼女には身寄りがいない、しかし、ダンスがある!常に前を見据えている意志の強そうな女性だ。そんな彼女に一目惚れしてしまうニック・ハーレイ、ここの親会社の御曹司で次期社長。しかし、アレックスは彼の素性を知らずに極めてフラットに接する。
物語はいくつかのエピソードを省略しつつも原作通りに進行する。舞台セットはキャストが動かすことによってテンポよく展開。それを音楽が後押しするように滞ることなく、なめらかな印象。恋、友情、夢を諦めない心、絆、そういったテーマの他にやはり、この1980年代の空気。女権拡張を唱えた象徴的な作品として捉えられている。ヒロインのキャラクター設定、プロダンサーになる夢を描きながら働いている、精神的に自立している、相手が誰だろうと対等に付き合おうとする姿勢が、時代の空気にマッチ。また舞台でも再現されているが、ブレイクダンス、1980年代に全盛期を迎えるが、このブレイクダンスを最初に取り上げた最初のハリウッド映画がこの作品と言われている(この翌年の1984年に「ブレイクダンス」という映画が公開され、この手のダンスがブレイクダンスであると知られるきっかけに)。このように映画「フラッシュダンス」自体が、この時代、新しかったことが窺える。ヒロインがオーデションを受ける際に応募用紙にダンス経験や教育の有無を問う欄があり、独学でやってきて、バレエをやってこなかったアレックスは凹んでしまう下りがあることで、まだブレイクダンス自体が知られていなかったことがわかる。ダンスも物語も新しい作品であったのだ。
映画に登場する名曲、「Flashdance…What a Feeling」はいうに及ばず、「Manhunt」「Maniac」、往年の作品ファンには懐かしい楽曲、そして名曲「Gloria」も!ローラ・ブラニガンが歌って大ヒット、グロリアがこの歌を歌うシーンは、元の歌詞を紐解くと彼女の心情とシンクロ、ジュークボックス・ミュージカル的な曲の使い方が効果的だ。キャッチーなメロディ多数で、この世代でなくても、もうノリノリ、名場面多数、交通整理の警官の近くで踊るところ、1幕の幕切れの、あの水のシーン、最後に審査員の前で踊る場面、ニックが花束を持って待っているシーンなど、数え切れないくらいだ。
そして愛希れいか始め、期待を裏切らないキャラクター(アレックスの友人・グロリアは映画ではジェニー、プロスケーターになるのが夢)、俳優陣、適材適所、特に宝塚ファンなら!春風ひとみと秋園美緒と愛希れいかの3人の場面は思わず笑みが!春風ひとみと秋園美緒の芸達者ぶりに注目(秋園美緒はミス・ワイルドも演じている)。絵に描いたような廣瀬友祐のイケメンぶり、可愛らしい桜井玲香のグロリア、怪しさ満点のC.Cの植原卓也、一度見たら忘れられない!
日本初演のミュージカル『フラッシュダンス』、2020年の暗い時代だからこそ、の作品。観終わったあとは、きっとダンスしたくなる。ヒロインの言葉「私には出来る!」、自分を信じる、そして夢を掴む。シンプルなメッセージだから時代を超えても色褪せない。
なお、キャスト・演出家よりコメントも!
[アレックス・オーウェンズ:愛希れいか]
今、こうしてこの作品を届けられるということ、チケットを買って劇場にきてくださるお客様がいてくださるということが何よりも幸せですし、感謝の気持ちでいっぱいです。
今回、いつもより制限があるお稽古の中でも、とてもストイックにそして本当に楽しくお稽古できたのは、思いやりに溢れた個性的なキャストの皆様のおかげです。
この状況で、みんなで作り上げたこの舞台はいつも以上にたくさんのたくさんの想いが詰まっています。
エンターテイメントの持つ力を少しでも感じて頂き、観終わった後には、前に向かって一歩踏み出せる勇気を持ってもらえるような、明日への活力になる…誰かの背中を押せる…そんな舞台にしたいと思っています。
私が今出来る全て賭けて挑みます!どうぞ、よろしくお願いいたします。
[ニック・ハーレイ:廣瀬友祐]
自分の中で止まってしまったものがまた凄まじいエネルギーで動き出そうとしています。
当たり前じゃsない一瞬一瞬に命を注ぎたい。
危険は常に隣り合わせかもしれません。
だからこそこの興奮がこの作品には間違いなくあると思います。すでに心が震えてます。
このパワーがこの先の未来を照らせるように魂込めたいと思います。宜しくお願いします。
[グロリア:桜井玲香]
無事に初日を迎えることができて、先ずはホッとしています。どこか不安を拭えないまま、
それでもカンパニーみんなで初日を迎えられると信じて、日々、頑張ってきました。
色々な想いが詰まったこの作品を、お客様の心にしっかりと伝えたいと思います。
[ジミー:福田悠太(ふぉ〜ゆ〜)]
ミュージカル『フラッシュダンス』。
一流のプロの方達ばかりの舞台上に、ジャニーズの一般人の僕がどこまで楽しめるのかお楽しみください。
馴染めなかったらどうしよう。緊張するなあ。
33歳にもなってこんなに緊張させてくれるミュージカル『フラッシュダンス』。最高です。
この大変な時期に会場に集まってくださるお客様、皆様に少しでも夢と感動を与えられるよう頑張ります。
[日本語版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗]
三月、四月、五月コロナによって主催する「地球ゴージャス」の大切な25周年記念公演の殆どが吹き飛ばされた!
何処にもぶつけられないエンターテイメントの浮かばれない魂の憤りは沸々と熱を帯び、その時をずっと待っている。この瞬間(とき)に初日を迎える公演は私たちだけでなく演劇関係者皆の期待を背負う。他の公演の千穐楽までの完走を我々が祈るように「Flashdance」は繊細に毎日の稽古を重ね周りからも愛されて来た。初日の産声をこれ程の未来の可能性だと感じる公演は初めてだ。リスクを背負い劇場に足をお運びくださるお客様!徹底した対策を講じてお待ちしております。
<ストーリー>
1983年、ペンシルベニア州ピッツバーグ。昼は製鉄所、夜はバーのフロアダンサーとして働くアレックスは、日々プロのダンサーになることを夢みて暮らしていた。そんなアレックスに製鉄所の御曹司、ニック・ハーレイは一目惚れをする。
一方、同じくプロのダンサーを目指す親友のグロリアからダンスの名門学校・シプリーアカデミーのオーディションを受けることを勧められるアレックス。ダンスの恩師であるハンナからも背中を押され、意を決してオーディション会場を訪れるが、周りの熟練ダンサーたちを目の前にして自信を無くし、逃げ出してしまう・・・。
<キャスト>
愛希れいか 廣瀬友祐 桜井玲香 福田悠太(ふぉ~ゆ~)
植原卓也 Dream Shizuka 石田ニコル なだぎ武 松田凌 大村俊介(SHUN) 秋園美緒/春風ひとみ 他
日本版脚本・訳詞・演出:岸谷五朗
スタッフ:
・脚本:トム・へドリー(映画「FLASHDANCE」)&ロバート・ケイリー
・音楽:ロビー・ロス
・作詞:ロバート・ケイリー&ロビー・ロス
【原作】
・トム・へドリー&ジョー・エスターハス
・パラマウント・ピクチャーズ映画「FLASHDANCE」
・企画・製作・主催:アミューズ
[公演概要]
日程・場所:
[東京公演]
2020年9月12日(土)~9月26日(土) 日本青年館ホール
[名古屋公演]
2020年10月3日(土)~10月4日(日) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
[大阪公演]
2020年10月8日(木)~10月11日(日) 梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
◆公式サイトURL:http://flashdancethemusical-jp.com/
◆公式 Twitter:https://twitter.com/flashdancejp(@FLASHDANCEJP)
文:高浩美