声のプロフェッショナルが奏でるリーディングシェイクスピア『マクベス』開幕!人生は歩く影、人は皆、哀れな役者。 マクベスを神尾晋一郎 石川界人 豊永利行などが熱演。

声のプロフェッショナルが奏でるリーディングシェイクスピア『マクベス』、12月6日まで池袋のサンシャイン劇場にて上演中!

シェイクスピアの4大悲劇といえば、『ハムレット』『オセロー』『マクベス』 『リア王』、そのどれもが17世紀初頭に発表されている。この4つの中では一番短い作品。また、この物語は残酷なので、「マクベス」と口にすると必ず不幸なことが起こるという言い伝えがあり、「スコティッシュプレイ(スコットランドの演劇)」という言葉におきかえる風習があった。また、有名なセリフも多く、「きれいは汚い、汚いはきれい」、「女の股から生まれたものには負けない」など、枚挙にいとまがない。そして今回の朗読劇では、6人の声優がこの『マクベス』に挑戦する。マクベス役は終始一人の声優が演じるが、それ以外の人物は5人の声優が複数役を演じる。ここは腕の見せ所だ。観劇したのは11月27日、マクベスは神尾晋一郎、マクベス夫人などを古賀葵、マクベスのマクベスの友人・バンクォー他を代永翼、ダンカン王、マルカム、魔女etc.を増元拓也、マクダフ、魔女etc.を竹内栄治、シーワード、魔女etc.を帆世雄一。
開演前、時計の音、風、鳥の羽ばたく音、時折遠雷が響く。そして3本の十字架、草、キャスト登場、「マクベス、マクベス」と言いながら。冒頭の言葉、翻訳によって異なるが、ここでは「正義は悪で、悪は正義…人生は、歩く影。人は皆、哀れな役者…つかの間の舞台でカッコつけ、わめきちらし、あとは誰にも見向きもされぬ…」、人は生まれた瞬間から死に向かって生きる、生きとし生けるものには始まりがあり、終わりがある。そしてイエス・キリストの三人の賢者のこと、ゴルゴダの丘のことなどが語られる。
様々な形態で演じられる『マクベス』、演劇好きなら、一度は観劇したことがあるであろう作品。魔女の予言、マクベスはスコットランドの王になるという。半信半疑なマクベス、ともにいたバンクォー、時を刻む音、マクベスは言う「玉座をめぐる大芝居の幕開けだ」と。魔女に言われたマクベス、その運命に身を任せる。

ストーリーや登場人物については、もはや説明する必要もないほどによく知られている。そしてマクベス夫人、夫を叱咤激励。マクベスを演じる神尾晋一郎、白いシャツ姿、堂々としたかと思えば、自分の運命におののき、そして最期を遂げるマクベスを圧倒的な存在感で演じる。そして紅一点の古賀葵はマクベス夫人の他にマクダフ夫人、マクダフの息子など6役!マクベス夫人を演じる時は妖艶でありながらも強い、夫をしかりとばす女性を演じ、またマグダフの息子の時は幼さを残した感じを表現、6役はかなり大変だったと思う。神尾晋一郎以外は複数役、特に男性声優陣が魔女!これが意外なほどにしっくりくる。そして、役が変わり、場面が変わるごとに立ち位置を変えたり、はけたりする。ここは演出の工夫、そうすることによってキャラクターの立ち位置や関係性を示したりする。中央のベッド、西洋の時代劇に出てくるようなベッドではなく、シーツらしきものが破れている。セットはイギリスの荒野のよう、その真ん中にベッドがあるような雰囲気で、これが物語の世界にマッチする。凄惨な殺人、照明が真っ赤になる。おののくマクベス、夫人は気丈にも血まみれの短剣を戻す、そしてマクベスは従者を口封じのために殺害、殺人が殺人を呼ぶ血みどろな展開。マクベスに迫る死の影、心の安定が得られないマクベス、魔女からバーナムの森が進撃して来ないかぎり安泰、女の股から生まれた人間にはマクベスは倒せないとの言葉を得る。それでも不安は拭いきれない。亡霊も出現したり、平静ではいられない主人公、ひたひたとその最期が近づいてくる。

時折響く「マクベス、マクベス」の声が不気味に響き渡る。そして最後の方でマクベスのセリフ「人生は歩く影、人は、皆、哀れな役者…つかの間の舞台でかっこつけ、喚きちらし、あとは誰にも見向きもされない…人生は、阿呆が語る物語。騒々しく、感情に満ちているが、何の意味もありはしない」と言う。冒頭も神尾晋一郎が語るのだが、最初は”語り”として、そして終盤では”マクベス”として。マクベスは最後の戦いが近くなったところで、この言葉を吐く。自暴自棄的にも聞こえるし、自分の人生を悟ったのかもしれない。様々な解釈ができるところが、この作品の懐の深さ。この後にバーナムの森が迫ってくる、マクベスはおののく。そして”女の股から生まれていない”マグダフと対峙する。

疾風怒濤のようなマクベスの生涯。彼は自分のまいた種によって翻弄され、不安になり、悲劇的な最期を遂げる。運命に抗うも虚しい結果に終わる。セットの十字架、草、ベッド、風の音、雷鳴、そしてマクベスをはじめとした登場人物たち。朗読劇にする、基本、声だけで表現する。大掛かりなセットもなく、コスチュームも特になく、声優陣の服装はシンプル、故に、心に迫る。古典の底力がここにある。
さて、今後の公演だが、年末は、小泉八雲の怪談話『流離う魂-小泉八雲の世界-』そして年明けには朗読で描くミステリー『シャーロック・ホームズ〜特別なあのひと〜』音楽朗読劇『モンテ・クリスト伯』などが予定されている。

[今後の公演]
<朗読劇 流離う魂-小泉八雲の世界->
日程・会場:2020年12月22日〜27日 紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA
作・演出:藤井清美
<朗読で描くミステリーシリーズ シャーロック・ホームズ〜特別なあのひと〜>
日程・会場:2021年1月5日〜11日
上演台本・演出:土城温美
<音楽朗読劇 モンテ・クリスト伯>
日程・会場:
2021年1月23、24日 神奈川県立青少年センター 紅葉坂ホール
2021年2月20、21日 大阪・新歌舞伎座

<公演概要>
日程・会場:2020年11月27日〜12月6日 サンシャイン劇場
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:平田綾子
構成・演出:深作健太
<出演>
[11/27 19:00]
マクベス:神尾晋一郎
マクベス夫人 ほか:古賀葵
バンクォー ほか:代永翼
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:増元拓也
マクダフ 魔女 ほか:竹内栄治
シーワード 魔女 ほか:帆世雄一
[11/28 13:00]
マクベス:石川界人
マクベス夫人 ほか:青山吉能
バンクォー ほか:伊東健人
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:野島裕史
マクダフ 魔女 ほか:大海将一郎
シーワード 魔女 ほか:安田陸矢
[11/28 19:00]
マクベス:石川界人
マクベス夫人 ほか:生田輝
バンクォー ほか:伊東健人
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:野島裕史
マクダフ 魔女 ほか:大海将一郎
シーワード 魔女 ほか:古畑恵介
[11/29 13:00]
マクベス:豊永利行
マクベス夫人 ほか:安済知佳
バンクォー ほか:中島ヨシキ
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:坂泰斗
マクダフ 魔女 ほか:矢野奨吾
シーワード 魔女 ほか:堀江瞬
[11/29 19:00]
マクベス:豊永利行
マクベス夫人 ほか:諏訪彩花
バンクォー ほか:中島ヨシキ
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:坂泰斗
マクダフ 魔女 ほか:矢野奨吾
シーワード 魔女 ほか:堀江瞬
[11/30 19:00]
マクベス:中澤まさとも
マクベス夫人 ほか:徳井青空
バンクォー ほか:置鮎龍太郎
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:濱野大輝
マクダフ 魔女 ほか:野島健児
シーワード 魔女 ほか:汐谷文康
[12/1 休演]
[12/2 19:00]
マクベス:神尾晋一郎
マクベス夫人 ほか:吉岡茉祐
バンクォー ほか:岸尾だいすけ
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:笠間淳
マクダフ 魔女 ほか:狩野翔
シーワード 魔女 ほか:桑野晃輔
[12/3 19:00]
マクベス:赤羽根健治
マクベス夫人 ほか:中村繪里子
バンクォー ほか:岸尾だいすけ
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:濱野大輝
マクダフ 魔女 ほか:狩野翔
シーワード 魔女 ほか:阪口大助
[12/4 19:00]
マクベス:中島ヨシキ
マクベス夫人 ほか:工藤晴香
バンクォー ほか:小野友樹
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:山中真尋
マクダフ 魔女 ほか:竹内栄治
シーワード 魔女 ほか:汐谷文康
[12/5 13:00]
マクベス:阿部敦
マクベス夫人 ほか:山崎はるか
バンクォー ほか:代永翼
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:木島隆一
マクダフ 魔女 ほか:仲村宗悟
シーワード 魔女 ほか:廣瀬大介
[12/6 12:30]
マクベス:駒田航
マクベス夫人 ほか:石見舞菜香
バンクォー ほか:石谷春貴
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:荻野晴朗
マクダフ 魔女 ほか:村田太志
シーワード 魔女 ほか:市川蒼
[12/6 18:00]
マクベス:駒田航
マクベス夫人 ほか:大原さやか
バンクォー ほか:石谷春貴
ダンカン王 マルカム 魔女 ほか:笠間淳
マクダフ 魔女 ほか:中澤まさとも
シーワード 魔女 ほか:榊原優希

公式HP:https://macbeth.rodokugeki.jp
公式ツイッター:https://twitter.com/voice_reading
舞台撮影:阿部章仁
文:高 浩美