「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」 ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~ G2『やっておかねばならない作品』

意欲的な作品である「ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル」 ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~、この作品の会見が行われた。登壇したのは演出のG2と主演の尾上右近。G2は「久々にやっておかねばならないことに出会えた」と語る。しかも企画、ストレートプレイの初翻訳にも挑戦している。「やらねばならないこと」はどんどん、やってきてそちらの方が忙しくなるのは、よくあることだが、この作品に関しては熱い情熱を持って「やっておかねば」と思ったようである。「やることによって自分自身を変えてくれる、あるいはカンパニーのメンバーを変えてくれる」そして「インプットされるような」作品と言う。「ここ近年、面白い作品」という。

「斬新というわけではないけど、新たな切り口、新たな方法論で書かれている作品」とも語る。さらに「読んだ時に『お前ならどう演出する?』とニヤリと笑われたような気がして」ともコメント。ほとんどの登場人物がプエルトリコ人で、黒人、日本人もいる。極めてアメリカ的と言われればそうなのだが、「普遍的な力がある作品」とG2は力説する。そして、「日本人でも共感できる部分をクローズアップして上演したい」と抱負を語った。主演はG2の言葉を借りれば「超“和”」な尾上右近。しかも翻訳劇は初挑戦とのことだ。そんなチャレンジャーなオファーを快諾した尾上右近。
「新人の尾上右近です(笑)、初めてづくしで〜危ない方、危ない方へ(笑)、非常に社会派の難しいお芝居の物語で中心人物で、主演で・・・・・・困難を極める作品ですが、G2さん、共演の方々、親しく、本読みから、特に百戦錬磨の先輩方が、どう表現するか難しいとおっしゃっていて途方に暮れている毎日です(笑)」と笑わせた。しかし「これは自分の糧になる、これは乗り越えていかねばならない」と気を引き締める。「壁に当たってうち砕くつもりで」と抱負を語る。また歌舞伎の稽古との違いには戸惑った様子で「歌舞伎は有無を言わさずに通し稽古」と語る。「とまどうこともありますが、たくさん恥をかくのが嬉しい!成長していくことを信じて!」と超前向きな発言。

それから記者からいくつかの質問が出た。「歌舞伎役者と現代劇」という質問に関しては、G2は「だからどうこうと言うのはない」と語り、「役者自身が持っている本質、内面の作業」が肝ということで尾上右近については「やる気の塊!」と評した。さらに「非常にチャレンジングで、たくさん勉強してきて頼もしい・・・・・・新たな魅力をどう作るか」とG2。
また歌舞伎との稽古の違いに関しては尾上右近は「(歌舞伎は)役は自己管理で自分たちで考える」と語る。この作品の稽古については「(わからないことは)ぶつけなければいけないんだ」と言い、しかし「稽古の方法に慣れるのが課題、やってみないとわからないことがわからない(笑)」と戸惑いがかなりある様子ではあるが、そこは“やる気の塊”な尾上右近、「歌舞伎で培ったものが生きるのを望んでいる」と言い、「不協和音の話が出てきて、その不思議なハーモニー」と台詞の中で音楽に関するものがあるそうで、それが物語にリンクしていくそう。「自分が初の現代劇に参加させていただくのは、歌舞伎の世界から来ている身として歌舞伎の要素とか意識する問題でもないのかもしれませんが、させていただくことによって現代劇をずっとやってきた方とは違う何かが生まれた時に、不思議な不協和音なのか、わかりませんが、新たな不思議なメロディーが見るメロディーとして誕生すれば、自分がやる意味があると思っています」と語る。役については「主人公には分かりやすい問題点がある。その自分と向き合いながら人生を歩んでいくところが描かれています。僕自身も決して順風満帆ではなくて、環境もその中で抱えている問題点もあり、人間は生きていく上で必ず問題点があり、それと向き合いながら生きていくということがあると思う。年が近い所、少年、青年、大人のどっちつかずの所があり、そこのところが共通、理解しあえるところかな?と思いながら・・・・・・」とコメント。

共演者については尾上右近は「南沢奈央さんは謙虚な方。一緒に考えて一緒に悩んでくれる、受け止めてくれる」と言い、篠井英介については「本当のお母さんみたいな愛に溢れる役者さんでほっとする、お芝居でもG2さんにぶつけていくのでそうやって作っていくんだな」とコメント。葛山信吾については「いじられキャラ」と言い、「みなさん、歩み寄ってくださって」、また葛山信吾はカラオケで力を発揮すると聞いたそうで「どういう力を発するのか(笑)」と言い「早く目の当たりにしたい」と再び、笑いを誘うコメント。でも「絶対にできるよ」と言ってくださる。陰山さんは想像力豊かな人。これだけ聞いても個性的なキャスト陣、鈴木壮麻については「謙虚でハイテンション!いじってくださる(笑)」

G2は作品の見どころについて「演じるのは難しいんですが、お芝居はアメリカの問題、イラク戦争とかのいろんな問題が背景ですが、社会の悪いところを掘り返す話ではなく、弱者の立場、いかに関わって、いかに新しい明日に向かって進み始めるか、できるんじゃないだろうかっていう勇気をくれるいい作品だと思います。気軽に観に来ていただいて、ハマると思います」尾上右近は「それぞれの役の個性、その人々の繋がりがどういうメロディーを奏でるのか、そこが魅力的な作品だと思います。人の心があり、ぬくもりが伝わるお芝居だと思います。そこを是非!豊かな気持ちになって頂きたいです」と締めて会見は終了した。

2012年にピューリッツァー賞を受賞作品、日本初上演!ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~

【概要】

タイトル:ウォーター・バイ・ザ・スプーンフル ~スプーン一杯の水、それは一歩を踏み出すための人生のレシピ~
作:キアラ・アレグリア・ヒュディス
翻訳・演出:G2
出演:尾上右近 篠井英介 南沢奈央 葛山信吾 鈴木壮麻 村川絵梨 / 陰山 泰
場所:紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
日程:7月6日(金)~7月22日(日)
後援:TOKYO FM
協力:松竹株式会社
企画・製作:株式会社パルコ
公式サイト:http://www.parco-play.com/