ミュージカル・コメディ『ラヴ』が3月24日より六行会ホールにて上演される。この作品は、もともとは、ブロードウェイで上演されたストレートプレイで、1964年の初演から3年のロングランを記録。これをミュージカル化し、オフ・ブロードウェイで上演されたものが本作品。1994年には、このミュージカルが西城秀樹×市村正親×鳳蘭の顔合わせで上演された。当時の音楽監督は宮川彬良。今回の演出は宮川安利、音楽監督・ピアノ演奏は宮川知子、宮川彬良のご息女。1994年当時プロデューサーであった笹部博司を監修に迎えての上演。フレッシュなカンパニーで2021年春にお届け!たった3人で紡ぐミュージカル、ミルト役の山本一慶さん、ハリー役の橋本真一さん、エレン役の井上希美さんに抱負などをお伺いした。
――まず、この作品のオファーを受けた感想は?
橋本:一慶とは『メサイア』シリーズでご一緒してまして、終わってまた何かで共演したいなとずっと思っていたので、このタイミングでまた全然違う役柄で共演できるということがうれしかったですね。あと3人芝居、今までで一番少ない人数ですね。セリフの分量はもちろん、ひとりにかかる要素の大きさはもちろん多いと思います。ワンシチュエーションで3人でとなると、どう芝居をするかかなり重要で、それによって笑えるか笑えないかも変わってくる。役者としてはすごく楽しみです。早くやりたいなって思いました。
井上:私はお話をいただいたのがちょうど3人芝居をやっていた時だったんです。3人しかいないからこそ緻密にお芝居を紡いで行くことに、すごく喜びを感じていたので、このタイミングだったからこれはご縁だな、と。そして役柄を見たら以前の公演でエレンを演じたのは鳳蘭さんで私とは全然キャラクターが違うタイプなのでそういった意味での不安はありましたし、私が演じて大丈夫なのかなと思っていました。演出の宮川さんからは“井上さんのままで演じていただければ”と言っていただけたので、そこは甘えようかなと。私らしく演じ挑戦しようと思いました。
山本:僕はもう本当に“ミュージカル!”というところが大きかったですね。めちゃくちゃ歌うよ、と聞いたときに何とも言えない感じに(笑)。僕自身そこまで歌は得意ではなかったですし、音楽にはあまり縁がないと思っていたのでミュージカルをちゃんとやれるのか不安はありました。ただ普段触れていない分、楽しくできるんじゃないかなとわくわくしています。
――台本を読んだ印象は?
橋本:僕はハリーとして目線で読んでいたのですが、悲しくなってしまいました!ハリーはエレンに対する愛を知ろうと一生懸命になっていて、だからこそハリーが可哀想に思えて。でも、そんなハリーの気持ちをうまく笑いにできるんじゃないかな、と。それが本気であればあるほど面白さは生まれてくるのではないかなと思うので、一生懸命ハリーを演じたいですね。
井上:最初読ませていただいて、エレンだけではなく、みなさん不幸であることに酔っている部分もあり、なおかつ自分がいちばん不幸だと信じ切っている。そんな三人が集まったときに“じゃあ誰が一番不幸なの”というものが生まれる。それって他人からするとめちゃくちゃ面白い状況。だからこれは不幸せな大人のためのミュージカルコメディというフレーズがついているんだなと納得ができました。それぞれのキャラクターはちゃんと自分の信念をもって生きているとは思うし、選んでいるのもちゃんと自分の素直な気持ちだと思うんです。狙って面白くしているわけではなくて、真剣に生きているからこそ他者から見ると面白いんだろうなって。きっとそれを私たちが楽しんで精一杯演じれば面白いものが生まれるんだなって思いましたね。
山本:不幸自慢ソングが面白いよね(笑)。ハリーとはまた違って、僕は僕なりにミルトにはショックを受けました。よくこんなあっさりと、こんなこと言えるなぁって。
――稽古中のエピソードを聞かせてください。
橋本:現時点(2月)では稽古はこれからですが、お芝居込みで歌った1曲がすごく楽しくて。本番がとても楽しみになりました。エレンとの関係性の中で、どちらかというとハリーは翻弄される側なので、井上さんにどんどん預けていこうと思いました。
山本:僕はもう預けてますよ(笑)何が起こっても大丈夫。
井上:大丈夫かな?(笑)がんばります!!
――それぞれの印象は?山本さんと橋本さんは共演歴はございますが、井上さんは「初めまして」ですよね。
井上:橋本さんとは歌稽古でご一緒させて頂いたとき、めちゃくちゃ気を遣って下さって謙虚で本当にいい方なんだなって。歌を聞いていてもすごく素直でまっすぐなんです。ハリーそのもの!!橋本さんがハリーの言葉をしゃべればもう成立するくらい、純な方だなと思いました。山本さんも今日がほぼ「初めまして」ですが、とても気さくな方で、変に気を遣わなくていいのかなと思わせて貰えました。ちょっと闇も感じますけれど(笑)。
――2021年の抱負は?
山本:去年、舞台業界は打撃を受けて。もちろんみんなお仕事がなくなることもありました。そんな中改めてお芝居できる時期が訪れて、でもそんな中でも苦戦しながらようやくできる状況になったことを経験したときに、舞台できることのありがたさ、お客さまがどれだけ芝居を求めてくれているのか、身に沁みました。こんな状況だけれど逆に得るものがあったと思ったんです。こんなに、ひと公演ひと公演を楽しみに、約二時間を大切に待ちわびてくれるんだって。それがあったからこそ、ひと公演ひと公演がより大切な時間になりました。この気持ちで2021年は臨みたいなと。当たり前に戻したくない。いい経験をさせてもらったなとポジティブにとらえています。本当に大変でしたけれど。
井上:去年はいろんなことを考えさせられるきっかけになりました。そんな中、今年1月には久しぶりにミュージカルに出演させて頂き、自分自身が音楽に救われていることに改めて気づきましたし、舞台を待ってくださっている方もいることも実感もしました。“こんな私のことを待ってくれる方がいらっしゃるのであれば、届けていきたい。もう出し惜しみはなしだ!”と思ったんです。でも届けるためにはそれだけのエネルギーが私には必要で。それを蓄えるためにどう日々を生きていけばいいのかな、と。“得たものは全部出す”、それが今年の目標でもあります。
橋本:去年は舞台に立てない時期も結構ありました。芝居も稽古も本番もない。自分っていったい何なんだって。ただの橋本真一に価値はあるのだろうか、自分は何にもしてないなって思って。それでもいくつかの公演が復活してきて、舞台に立たせていただけたこともありました。これがいかに自分が求めていたものだったのか、幸せなことなのかとより痛感しまして。だからこそ作品に対して、そして何よりもお客さまにも、さらに誠実でいたいなと。もちろん、これまでも大切にしてきたつもりだったけど、よりもっと一つ一つ誠実に妥協せずやりたいと思っています。準備や日々の鍛錬を含め今年はより誠実でありたいと思っています。
――最後に観ようかなと思っていらっしゃる方々に向けてメッセージを!
山本:みんな、笑いにおいで!(一同笑いつつ大きく頷く)
――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。
[愛の色紙、だぜ!!]
【物語】
舞台は常に橋の上。
ハリー(橋本)はボサボサでヨレヨレの浮浪者で、まさに橋から身を投げようとしていた。
そこにやって来たのはエリートサラリーマンのミルト(山本)。実は2人は大学時代の親友同士、橋の上の衝撃的な再会で幕を開ける。。
ミルトは不倫の愛を現在進行中で妻と離婚できないかと画策中だった。
妻・エレンをハリーに押し付けることを思いつく。
そこに妻・エレン(井上)が登場し、ミルトに愛のない生活を問い詰めるのだった。
かくして役者は揃い、抱腹絶倒の悲劇が展開する。
<キャスト>
ミルト:山本一慶
ハリー:橋本真一
エレン:井上希美
<ミュージカル・コメディ『ラヴ』概要>
日程・会場:2021年3月24日〜28日 六行会ホール
マレー・シスガル作「LUV」より
台本:ジェフェリー・スウィート
作詞:ハワード・マーレン
演出:宮川安利
音楽監督・ピアノ演奏:宮川知子
監修:笹部博司
製作:アーティストジャパン
公式HP: https://artistjapan.co.jp/performance/luv/
撮影:金丸雅代
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美