《インタビュー》 ラブ・コメディ『夏の夜の夢』 パック役 谷水力 演出 山本一慶

『夏の夜の夢』はシェイクスピア作の喜劇。アテネ近郊の森に足を踏み入れた貴族や職人、森に住む妖精たちが登場する有名な作品である。書かれた時期は定かではないが1594年から1596年の間頃と考えられており、すでに『ロミオとジュリエット』を完成させ、『ヴェニスの商人』を構想している時期だったのではないかと推測されている。シェイクスピア時代の演劇、エリザベス王朝時代、舞台に立つのは全て男性の“オールメイル”、つまり、今回の公演もシェイクスピアの時代の“オールメイル”、原点回帰。さらに『夏の夜の夢』が執筆されていたであろう時代、1591年から94年は黒死病が蔓延、2年にわたって劇場が閉鎖された。ロバート・グリーン ( 1560 – 1592 ) やクリストファー・マーロウ(1564–1593)のように、才能に恵まれながら若くして命を落とす劇作家もいた。 若きシェイクスピアは劇場再開に備えて『ロミオとジュリエット』『夏の夜の夢』、悲劇と喜劇、対照的ではあるが、その違いを超越し、ロマンチックな愛を描き出すという点では共通している。黒死病蔓延というくらい時代に若々しい男女による底ぬけに楽しく明るい、滑稽でロマンチックな喜劇をロンドン市民に提供しようと想像力を膨らませていたのではと想像するに難くない。ちょうど、奇しくも2020年から新型コロナウイルス蔓延、そんな折に『夏の夜の夢』、今回、初演出の山本一慶さんと妖精パック役の谷水力さんに作品についてなど語っていただいた。

――山本さんにお聞きしますが、今回シェイクスピア作品の演出を手掛けることになっての感想は?

山本:演出自体に興味があってずっとやりたいと思っていました。僕自身『夏の夜の夢』は2回ほど出演しているので、携わっている作品として良いのではと。もちろんシェイクスピアの演出は初めての挑戦になるので、難しく考えずにお話を進めさせていただきました。

――谷水さんは出演が決まってどう思いましたか?

谷水:僕自身、シェイクスピア作品に出演することは初めてです。ただ『夏の夜の夢』だけでなく他のシェイクスピア作品もちょいちょい観た経験はありますから、いずれやってみたい気持ちはありました。普段、2.5次元と言われる原作ものの作品に出ていますが、こういう舞台もやりたいと思っていたところで、しかも演出が昔から縁のある(山本)一慶くん、これはやりたいと。パック役は新しい挑戦でもあるし緊張しつつもがんばろうと思っています。

――自分自身がもともと持っていたイメージと稽古を重ねて変わったところはあるでしょうか?

山本:2回ほどハーミアをやらせていただいたとき、ちょっと不思議な気持ちを抱いていたことがあったんです。シェイクスピアの作品ではありつつもお客様へダイレクトに投げかけるものがあるな、と。ただただ面白いし笑えるところもあるんですが、「ここってどうなんだろう?」と考えながら演じさせるものがあったと思いました。今回演出するにあたって他の資料も観させていただいたときに、これが貴族たちの結婚式の余興として書かれたものだったのでは?と考察したりしまして、作品とさらに奥深く関わったからこそわかったことなんですけれど。とても楽しくてハッピーな気持ちになった作品だったから、自分の中ですごく腑に落ちたんです。設定とか落とし込んでみるとまた新しい観点が見えてきて。こういう想いをお客様に届けていたのか、とわかって改めて素敵な作品に仕上げたいなと思いました。

谷水:シェイクスピアというと難しいという先入観があったんです。もちろん言葉も難しい部分がありますけれど、演じてみると意外とユーモアにあふれていて、コントみたいだったので稽古をやっていてイメージが変わったという印象です。

――今回、谷水さんが演じるのはパック。もちろん人間ではないし物語を引っ掻き回すキャラクターですね。

山本:パックは作品の中できっかけになることが多いですね。大きく分けて人間界と妖精界と全てに絡むのはパックだけなんです。お客様に一番近い存在でもあるし、お客様を導く役割も持っている。そしてパックが物語に混乱をもたらしますから、パックで物語が回っていると言っても過言ではないんです。でもパックはそれだけ要求されるものが多いし、パックの表現自体で作品は豊かになる。すごく重要な役であり、楽しい役であり、お客様に愛されるキャラクターではないかなと想います。

谷水:やるからには、やはり自分が楽しめたら勝ちだなと思っています。一人で出てきて一人でしゃべるシーンも多いですし、声が人間たちには聞こえないところも面白い。引っ掻き回すのも悪気があってやっていることではなくて、とても憎めないキャラクターですよね。自分も楽しみながら表現できればそれがお客様にも伝わるのではないかと思います。

――今の稽古状況はいかがでしょうか

山本:稽古の進み具合としては(4月下旬)、ものすごく満足しています。もっと大変かなと思っていたんですよ。シェイクスピアは皆さん難しいイメージをもっていますから、最初は緊張されてる方もいました。けれど内容がすごく面白い作品なので、稽古をすればするほどノってきて、壁がなくなっていったんです。それはやはり作品自体の力でしょうね。役者自身の演技がよくなるスピードが速く、むしろすごくスムーズだから、早く全員合流できるようにならないと、やることがなくなりそうと思っているくらいです(笑)。まだメインの人間のカップルが合流できていないので、今後は集中稽古があります。それも4人がわちゃわちゃしている部分が演出としては楽しいところなので、そんな楽しい時間をいっぱい使っていきたいですね。

谷水:やはりセリフ量も多いし、僕の中では覚えづらいところも多いんですよ。なのでもっとセリフが入ってくるといい稽古ができるんだろうなって思っています。まだ不安が多いですね(笑)。

――パックは出番も多いですしね。

谷水:独り言が多いですからね。役者としては挑戦だなと思います。

――シェイクスピアの時代はすべて男性が演じていたという本作ですが、今回も同じようにすべて男性がキャスティングされています。ある意味原点回帰とも言えるでしょうが……。

山本:僕自身がやったときも全員男性だったんです。この作品は全員男が演じるということでさらに面白い要素があるなと思っていて。男女のもつれあいを起こす瞬間が全員男っていうだけですでに面白いなと。

――最後にメッセージを!

山本:このご時世、皆さん思うことは多いでしょうが…この作品っていつ作られたか正確には分からないんです。でも作られた時期を探る手がかりに、オーベロンとタイテーニアの「私達がけんかをしているから、世の中がこんなことになってしまって!」というセリフがあるんです。どうやらその時代にイギリスを襲った異常な悪天候の事を言っているらしいんです。シェイクスピアはそんな時だからこそ、観た人に幸せな気持ちを届けたかったのだろうと思うんです。これからも、僕たちは生きることに負けずに繁栄していこうねって。これって今の時代にも当てはまるんじゃないかな?この時期に公演を行うことは、当時シェイクスピアが届けたかったことを、ダイレクトに今の僕たちが届けられる時期なんだと思ってます。なので、このような時期ではありますが、少しでも多くの方に、ぜひ観てほしいですね。

谷水:シェイクスピアって難しくてちょっとという人も結構いると思いますが、この作品は単純にハッピーで、純粋に楽しめる作品だと思います。迷っていたら一回観に来ても損はしないかなって。このご時世、劇場自体に来るという決断がすごく勇気のいることだとは思いますが、それでも来てくださったお客様には楽しい気持ちになって帰っていただける作品にと考えています。(山本)一慶くんの初めての演出作品、ぜひ観に来ていただければ!!

――ありがとうございました。公演を楽しみにしております。

ヘアメイク:齊藤沙織、平山祐子

<概要>
タイトル:ラブ・コメディ『夏の夜の夢』
原作:ウイリアム・シェイクスピア
訳:小田島雄志
演出:山本一慶
出演:谷水力、橋本真一、安井一真、瑛、杉山真宏/寿里、KIMERU 他
東京公演 日程: 2021年5月19日(水)~23日(日) 六行会ホール
大阪公演 日程: 2021年6月4日(金)~5日(土) 劇場:メイシアター中ホール
※予定をしておりました大阪公演は、昨今の関西方面での感染拡大の状況を鑑みまして中止となりました。ご了承ください。

企画・製作:アーティストジャパン https://artistjapan.co.jp
お問い合わせ:アーティストジャパン 03-6820-3500
構成協力:佐藤たかし
取材:高 浩美