日本初演から実に40年、ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』が上演中だ。8月1日まで東京、そこから、神奈川、大阪などで公演を予定している。
夏が来れば『ピーターパン』というくらいだか、昨年はコロナ禍で、絶え間なく上演、の記録がストップ、今年は満を持しての公演となる。クリエイター陣もかなり入れ替わり、今年は演出は森新太郎が務める。
生演奏のオーバーチュア、これだけで心躍る。物語も先刻承知で、ピーターパン(吉柳咲良)が何を取りにダーリング家に忍び込んだのか、そのあと、どうするのかは、もう説明不要。客席は子供たちと、そしてかつて子供だった人たちと、幅広い年齢層の客席。最初の幕開け係は、ダーリング家で飼っている犬・ナナが担当(笑)。落ち着いた感じのダーリング夫人(瀬戸カトリーヌ)、可愛らしい、好奇心旺盛なウェンディ(美山加恋)、やんちゃなジョン(津山晄士朗)、マイケル(遠藤希子 君塚瑠華(Wキャスト))、絵に描いたような幸せそうなファミリー。
この家の主人であるダーリング氏、家の主として威厳を示そうとするが、どこか抜けている感じでお茶目な印象。ナナは幕を開けるだけでなく、働き者!人間たちを相手に!なかなか賢い。大人たちがいなくなってから、そっと忍び込んだピーターパン、初役の頃と比べると格段に歌唱力UP、そしてピーターパンとしての佇まい、客席はピーターパンが登場すると”待ってました!”な空気感。
あらすじ通りに物語は進行していく。1幕のハイライトシーンは、なんといってもフライング!客席の子供たちの視線はピーターパンに釘付け。しかもただ飛んでるだけでなく、飛びながらいろんなポーズを!
今年4年目の吉柳咲良がレベルの高いフライングを見せる。そしてウェンディたちも!劇場全体がマジックにかかった瞬間、種も仕掛けもあるのに、いつ見ても「おお〜」と思ってしまう。そして2幕は、夢の国ネバーランドに着いてから。ウェンディたちにとってはわくわく、全てがアドベンチャー。ピーターパンと迷子たち、タイガー・リリー(宮澤佐江)と森の住人たちと仲良くなり、日々、新しい。
そして、フック船長(小西遼生)たち。彼の手下たちは、なかなかに個性的、スミー(駒井健介)、割と調子良い部下、ガタイの良いマリンズ(笠原竜司)ら、これだけバリエーション豊かなフック船長の手下、しかし、なぜかいつもお間抜けなのは、もはや定番。
また、この森新太郎演出で初登場のキャラクターが!!ダチョウ!このダチョウが!!強烈な存在感でここぞというところで現れるので!!一度見たら忘れられない!誰が演じているかは…瀬戸カトリーヌ!!さっきまで落ち着いたダーリング夫人だったのに!!なんでも演出家から突如のオファーだったとか。
そして特筆すべきはフック船長!小西遼生が、インパクトのある役創り。船長らしくしようとすればするほどになぜかコメディアンな空気感。すごく考えてやったことが全て裏目にでるという残念キャラであるが、それをすればするほど可愛らしくも愛嬌もあり、新鮮なフック船長を演じていたのが印象的。元気いっぱいなタイガー・リリーの宮澤佐江、そのほか、アンサンブル陣も思い切り弾けており、見ていて気持ちいい。
演出面では、21世紀らしいハイテクを使わずに、いわゆるローテク。人力中心で、カーテンを開けるところから人力(最初は犬力)、手作り感満載の温かみのあるパペット、そしてウェンディたちの家、舞台上で実際にキャストがペイントしたり。子供心をくすぐる演出でなかなかニクい。
このミュージカルがこれだけ長きにわたって上演され続けているのは、やはり作品の懐の深さ。ラスト近く、大人になったウェンディ、これを子供時代のウェンディと同じ俳優が演じている点、そして、もう一緒には行けないと告げる下りは、いつ見ても切なさでいっぱいになる。そして彼女の幼い娘がピーターパンと共に飛び立つところ。行くところはもちろん、ネバーランド。そこで物語は終わるが、きっとそのあとも本当はあるのだな、と思わせる幕切れ。何度見ても飽きないどころが、常に新しい発見がある作品。本編終了後は恒例のビッグフライング!!!
観劇したのは7月24日の昼公演、この日は特別カーテンコールが行われ、キャストの歌に合わせて観客がクラップする、という趣向。観客総立ちで一緒にクラップ。子供も大人も同じ気持ちで!また、撮影OKタイムも設けられ、皆、一斉にスマホを取り出し、パシャパシャと。ロビーでは、40周年を記念して過去公演のチラシと出演者のコメントが掲示してあるので、始まる前や休憩時間に是非。メイクやチラシデザインに時代を感じる。貴重な展示物なので、観劇したらチェックを。
<物語>
あるところに、いつまでも子どものままの男の子がたった1人いました。 いたずら好きで、やんちゃでちょっぴり意地悪で、そして空を飛べるその子の名前はピーターパン。ある日の夜、ピーターパンはダーリング夫妻の家に “ あるもの ”を取りに忍び込みます。そこでダーリング夫妻の子供たち、ウェンディ、ジョン、マイケルと友達になったピーターパンは3人を連れて夢の国ネバーランドへと飛び立ちます。ウェンディはネバーランドで出会った迷子たちの“お母さん”になり、タイガー・リリー率いる森の住人たちとも仲良くなりました。ウェンディたちは、みんなと楽しく愉快な時を過ごしながらも、いつしか家が恋しくなり、迷子たちも連れてロンドンの家に戻ることにします。ところが、フック船長率いる海賊たちが待ち構え、ウェンディたちを捕らえてしまいます。全員で海賊との激しい戦い、ピーターパンとの最後の別れを惜しむウェンディたち。ウェンディは彼にお願いをします。「春の大掃除の季節にはきっと迎え に来てね」と。時が経ち、約束を果たしにピーターパンがやってくるのですが.…。
<キャスト>
ピーターパン:吉柳咲良/フック船長・ダーリング氏:小西遼生/ウェンディ:美山加恋/ダーリング夫人:瀬戸カトリーヌ/タイガー・リリー:宮澤佐江
海賊たち
スミー:駒井健介/マリンズ:笠原竜司/ビル・ジュークス:中山 昇/スターキー:久礼悠介/セッコ:當間ローズ/ヌードラー:冨永 竜
迷子たち
トートルズ:石川鈴菜/ふたご1:大熊杏優/カーリー:澤田美紀/スライトリー:中野 歩/ニブス:なづ季澪/ふたご2:松崎美風
森の住人たち
井上弥子/加藤翔多郎/小石川茉莉愛/佐藤アンドレア/澤村 亮/仲野泰平/深瀬友梨/渡辺崇人
ジョン:津山晄士朗/マイケル:遠藤希子 君塚瑠華(Wキャスト)/ナナ 三浦莉奈
<概要>
青山メインランドグループファンタジースペシャル
ブロードウェイミュージカル『ピーターパン』
[東京公演]
期間:2021年7月22日(木・祝)~8月1日(日)
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
主催:フジテレビジョン/ホリプロ
特別協賛:青山メインランド
共催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団
後援:目黒区/TOKYO FM
[神奈川公演]
期間:2021年8月7日(土)・8日(日)
会場:相模女子大学グリーンホール(相模原市文化会館)
主催:フジテレビジョン/ホリプロ
特別協賛:青山メインランド
共催:公益財団法人相模原市民文化財団
後援:TOKYO FM
<大阪公演>
期間:2021年8月14日(土)・15日(日)
会場:梅田芸術劇場メインホール
主催:梅田芸術劇場/ABCテレビ
特別協賛:メインランドジャパン
お問い合わせ:梅田芸術劇場 06-6377-3800 (10:00~18:00)
https://www.umegei.com/schedule/976/
[仙台公演]
期間:2021年8月21日(土)・22日(日)
会場:仙台銀行ホール イズミティ21・ 大ホール
主催:仙台放送
共催:(公財)仙台市市民文化事業団
お問い合わせ:仙台放送 事業部 022-268-2174 (平日10:00~17:00)
https://www.ox-tv.jp/sys_event/p/
[名古屋公演]
期間:2021年8月28日(土)・29日(日)
会場:御園座
主催:御園座
特別協賛:メインランドジャパン
お問合せ:御園座 052-222-8222 (10:00-18:00)
https://www.misonoza.co.jp/lineup/
[スタッフ]
原作:サー・ジェームズ・M・バリによる作品を元にしたミュージカル/作詞:キャロリン・リー/作曲:モリス(ムース)・チャーラップ/潤色・訳詞:フジノサツコ/演出:森新太郎/翻訳:秋島百合子/音楽監督・編曲:村井一帆/美術:堀尾幸男/照明:佐藤 啓/音響:井上正弘 /衣裳:西原梨恵/ヘアメイク:鎌田直樹/振付:新海絵理子/アクション:渥美 博/フライング:松藤和弘/歌唱指導:満田恵子/演出助手:玉置千砂子 伴・眞里子/稽古ピアノ:金森 大/舞台監督:二瓶剛雄 オーケストラレーション(東京公演のみ):新音楽協会/エグゼクティブ・プロデューサー:堀 威夫
公式HP:https://horipro-stage.jp/stage/peterpan2021/
舞台撮影(主催者提供):宮川舞子