「調布国際音楽祭2021」の最終日の公演、「読響 × 鈴木優人」。
音楽祭のエグゼクティブ・プロデューサー 鈴木優人が、昨年からクリエイティヴ・パートナーを務めている読売日本交響楽団を振る。読響は数年前まで隣町に所在する、よみうりランド内に練習場があったが、調布での演奏は20数年振りという、近くて遠いオケだったのを、調布出身(生まれはオランダ)の鈴木優人が縁を結んでくれた。
調布j:comチャンネル 調布人図鑑 第194回 鈴木優人さん
調布との縁を語る鈴木優人プロデューサーへのインタビュー番組。地元調布での小学生時代の思い出や音楽祭について語られている。
公演のトリは、ストラヴィンスキーの「火の鳥」だが注目は、メノッティのオペラ「電話」。
メノッティはイタリア生まれのアメリカで活躍した作曲家、世代的にはレナード・バーンスタインの数年年上で、この作品では脚本も手がけている1947年の小品オペラ。物語は「電話」を題材とした初演時では現代的なもの。登場人物はカップルのベンとルーシーのふたりだけ。ベンはプロポーズの告白にルーシーの部屋を訪ねると、当のルーシーは長電話ばかりで、ベンは中々告白できない。しょうがなく、部屋を出たベンは街頭の公衆電話からルーシーに電話を掛け、やっとプロポーズが出来て、めでたしめでたし(本当に!?)というユーモア作品。鈴木×読響をバックに、ベンを大西宇宙、ルーシーを中江早希が演じ歌う豪華なステージだが、写真の様に演奏会形式での上演で、ステージにはオケ前にソファーとテーブル、それに電話(それもダイヤル式の黒電話)というシンプルなセットでかわいい。そして、原作の舞台はアメリカの東海岸なのだろうけど、プロポーズ出来ずにいるベンが、一升瓶でヤケ酒を呑むあたりを見ると、どうも日本という設定になっている様で、ラストシーンでの電話番号の歌詞が「♫042..4…♫」と、地元の調布の電話局番で歌われ、これは地元調布のお話しでした、、、というオチまで設けていて、音楽祭ならではの祝祭的な演出がなされている。
「電話」の前にはモーツァルトの「フィガロの結婚」序曲、休憩を挟んで、ストラヴィンスキーの「火の鳥」の1945年版の組曲の3プログラム。3プロともオペラやバレエの舞台物楽曲で、エンディングは男女がめでたく結ばれる幸せな物語。音楽祭最終日の演奏に「火の鳥」をプログラムに組み込んだのは、この音楽祭が昨年、新型コロナウイルスの影響で、予定されていたステージが中止になり、オンライン形式での開催(ある意味、オンラインで新たな空間での世界初とも言える音楽祭という快挙と言える成果が生まれた)であった。今年の音楽祭で、同一空間に演奏者と観客が共にする音楽を通じた“祭”の復活を「火の鳥」物語イメージと共に、終曲の賛歌の演奏で、力強く、そして高らかに宣言とする公演となったと感じられた。
概要
モーツァルト:オペラ『フィガロの結婚』 KV492序曲
メノッティ:オペラ「電話」
ストラヴィンスキー:組曲「火の鳥」(1945年版)
指揮:鈴木優人
ソプラノ:中江早希 ※オペラ「電話」
バリトン:大西宇宙 ※オペラ「電話」
管弦楽:読売日本交響楽団
2021年7月4日 調布市グリーンホール 大ホール
公式web:https://www.chofumusicfestival.com