横内正主演・演出「KingLEAR&MACBETH2021」シェイクスピアの悲劇作品、一挙二作品上演!

2016年から「リア王」に取り組んできた横内正が演出を手がける公演。
今回は「マクベス」「リア王」が回替わりで上演される。出演者には横内正をはじめ、池上季実子、比企理恵、中島早貴、合田雅吏、加藤頼、宮本大誠、千葉和臣、佐々木正洋、井上一馬、松村龍之介、瀬戸啓太、日向野祥、土井一海、山根理輝、御堂耕平、潮見勇輝、小山晶士、烏羽宏至、野本博、下條アトム、小林勝也らが名を連ねている。
8月5日、猛暑に加えて、コロナ禍の状況、「KingLEAR&MACBETH2021」の公開稽古が行われた。披露されたのは「KingLEAR」の方。ストーリーは今更、説明する必要もないくらい有名でシェイクスピア四大悲劇の一つ。

主人公はブリテンの老王リア(横内正)。王位を退くにあたって3人の娘の中で親孝行な者に領地を与えるといい、長女・ゴネリル(池上季実子)と次女・リーガン(比企理恵)は、リアにとって心地よい甘い言葉で父の機嫌を取り、領地をゲット。ところが三女・コーディーリア(中島早貴)は正直な物言いで、なんと追放、しかし、誠実なフランス王(松村龍之介)と結婚。

ここが悲劇の発端。頼った長女と次女に裏切られ、流浪の身となる。その後のあまりにも悲劇的な展開は周知の通り。そしてリア王を取り巻く登場人物たちも一癖も二癖もあったり。またリア王についている道化(下條アトム)の辛辣で皮肉に満ち、現世の不条理を深く突いた言葉。しかし、彼はずっとリアのそばを離れない。この道化については様々な解釈があるが、この戯曲の中での重要なアクセントになっている人物である。

リア王を演じる横内正、演じているだけでなく、演出も。80歳という高齢にも関わらず、台詞量も出番も多い。その上、よく通る声でリア王を演じる。2016年から上演、昨年の2020年は公演中止であったが、今年に満を持しての公演、しかも猛暑、コロナ禍のWパンチ状況でありながら上演にこぎつけるパワー。この横内正のパワフルな姿勢、共演者の面々の熱量も相まって、公開”稽古”であるにも関わらず、エネルギーMAX。座組も超ベテラン勢、経験豊かなキャストとこれから多くのキャリアを積んでいくキャスト、お互いをリスペクトしている姿勢も垣間見え、ボリュームたっぷりの作品であるにも関わらず、時間を感じさせないスピード感もあり、目が離せない。見せ場も多く、リア王が娘たちに領地を分ける下り、池上季実子と比企理恵が、曲者感のある匂い、そして領地をゲットしてからの手のひら返し!もはや、それは”お約束”というくらいわかっているのだが、さすがの演技で魅せてくれる。

コーディーリアのまっすぐさ、中島早貴が素直でピュアな役創りで。そして脇を固める合田雅吏、加藤 頼(俳優座)、宮本大誠、井上一馬etc.座組では座長の横内正に次いで長老格の下條アトム、小林勝也(文学座)、演劇好きにはたまらない布陣。

そして、若手、松村龍之介、瀬戸啓太。フランス王を演じる松村龍之介は出番は少ないながらも、凛々しく清々しいフランス王を印象的に。瀬戸啓太はエドマンド役、このキャラクター、なかなか難しい役で、しかもヒール役。グロスター伯(小林勝也)の次男だが、私生児であり、野心もあるエドマンドは、ゴネリルやリーガンと手を結ぶ。父を裏切り、コーンウォール公に父の身を委ねる。リア王やコーディーリアを殺す時も躊躇しない。エドマンドの父親が私生児の息子を恥じる思いがあり、エドマンドはそれを知っている。兄と比較されるエドマンド、歳は1つしか離れていない。エドマンドが持つ感情の複雑さ、このキャラクターを瀬戸啓太が大きなパッションで演じていた。ラスト、兄・エドガー(宮本大誠)との対峙と顛末は何度見ても感涙。そしてコーディーリアを抱き、半狂乱のリア、展開もオチもわかっているのに何度見ても新たな発見があり、感動する。横内正が何度でも挑戦し続けるのも納得。

公開稽古の後に簡単な会見が行われた。最初に登壇したのは横内正と池上季実子、比企理恵。近くで衣装を見るとなかなか凝っている。和のテイスト、特に女優陣2名の衣装はアーティスティックで艶やか。


まずは挨拶。
(横内正)
「本当は去年の夏の上演でしたが、また大変な状況で幕をあけることになりました。初日、万全を期して稽古をしてきました。今日は嬉しいです」
(池上季実子)
「稽古場ではマスク、ものすごく暑いし、聞こえないし…初めてマスクを取ったら戸惑ってしまって。去年の思いを!なんて幸せなんだろうと。全ての熱意を届けたいんですが、(緊急事態)宣言もあり、うまく思いが噛み合いませんが、しょうがないですが」
(比企理恵)
「万全を期して、ここまでたどり着いた。とても素晴らしい仕上がりになっています」
それから、質問コーナー、横内正は膨大な台詞の量を聞かれて「まさか、この歳でね、思ってもみなかった。精一杯、充実したお芝居を。80って言ったらね…でも、物足りなくって未だに現役です。何の違和感もないです素敵な方々が頑張っています」と語ったが、身のこなしが80歳とは思えず!池上季実子は「稽古はマスク。『マクベス』の稽古の時に『リア』のセリフが出ちゃって(笑)大変でした」と笑う。この2作品を一度に上演する企画について尋ねられた横内正は…「(笑)」、その後に「長時間、こうやって何時間もぶっ続けでやる、こういう形のは聞いたことがないので、よい企画だと。僕らの世代はシェイクスピア。この状況で来ていただくのは難しい、でもこれをみなさまにご覧いただいて(ここで池上季実子が「ね!」と)…あんまり苦労してない、体力的にもそんなに…」とここでまた池上季実子が「誰よりも一番お元気!!」と。比企理恵も「80代で〜頑張らなきゃと」と横内正に大いに刺激を受けている様子。また、衣装について聞かれて横内正は「和を前面に!世界に発信するのに!」とコメント。色遣いもおしゃれ。この日は猛暑のせいか再びマスクの話題に「暑い」と池上季実子、比企理恵は「ヴォイストレーニングみたい」とコメント。その成果は…劇場で。

それから次に横内正と若手俳優、松村龍之介、瀬戸啓太、日向野祥。日向野は「マクベス」のみの出演。若手から挨拶。


(松村龍之介)
「ついに来たか、という気持ちです。皆さんと楽しみながら舞台に立てる喜び、皆さんと作る喜びがあります」
(瀬戸啓太)
「やっと来たかと。ゲネプロが終わって初日が上がればいいなと。『リア王』はセリフ多い!!全力のエネルギーで!」
(日向野祥)
「僕は『マクベス』のみです。普段のお芝居とは違うので、今まで出せなかった色を出せるように。たくさんの方から色んなアドバイスをいただきました」
この若手俳優のコメントを笑顔で聞いていた横内正は「素敵ですよ、皆さん。率直に聞いてくださるし、素直にお芝居の流れに…先輩面するのもなんなんですが、皆さん、きちっと作り上げていらっしゃる。若い世代と我々とで新しい時代を。実験的で良かったと思う」とコメント。記者からの質問で「2.5次元舞台は見ましたか?」に対して横内正は「一度、観ました。皆さん、かっこいいです!姿だけではなくってね」と2.5次元舞台初体験の感想を述べた。『リア王』で奮闘した瀬戸啓太は「役が難しかった、発声も…学ぶことが多かった、すごく勉強させてもらいました」としみじみ。日向野祥は「(いろいろと)相談させていただいて『思ったことをぶつけて』と言われて、もがいて、もがいて、悩んで…幸せな緊張感も」とコメント。それに対して横内正は「自分の思いをきちっと…実は台本ないのは苦手。バラエティ番組は断ってる」と語る。瀬戸啓太は「2.5次元が多いですが、こういう作品も面白いなと思ってきていただけると」と語る。松村龍之介は「80歳でど真ん中で〜僕は27ですが、半世紀以上役者続けていらっしゃる、(自分は)自信ない、もっともっと頑張らなきゃ、背中見せていただいて、本当にすごいなと(横内正がここで松村龍之介の方を見て「ありがとうございます」」と語る。日向野祥は「言葉を発しなくても、学ばずして学ぶ、感じることが大きい、学ばせていただける」と語る。横内正は「重たい試みですが」とコメント。
『リア王』と『マクベス』、これが一度に観られるという贅沢。暑い日が続くが、人間のさまざまな側面を描き出している名作中の名作。ニッショーホール、そう遠く無いなら、ここで重厚な作品を観るのも一興。

<概要>
日程・会場:2021年8月5日(木)~14日(土) 東京都 ニッショーホール
原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志(白水社刊)
演出:横内正
出演:
横内正 / 池上季実子 / 比企理恵 / 中島早貴 / 合田雅吏 / 加藤 頼(俳優座) / 宮本大誠 / 千葉和臣(海援隊) / 佐々木正洋 / 井上一馬 /
松村龍之介 / 瀬戸啓太 / 日向野祥 / 土井一海 / 山根理輝 / 御堂耕平
潮見勇輝 / 小山晶士 / 烏羽宏至 / 野本 博 / 下條アトム / 小林勝也(文学座) / 他
※中島早貴は「リア王」のみ出演 日向野祥は「マクベス」のみ出演
企画・制作:TYプロモーション
公式HP:https://www.ty-promotion.com