2011年、 イギリス BBCで放送されたドキュメンタリー“Jamie:Drag Queen at 16”をベースに作られた、 ミュージカル『ジェイミー』（原題：EVERYBODY’S TALIKING ABOUT JAMIE）。この原題、さしずめ”誰もがジェイミーの話題で持ちきり”という意味。
ドキュメンタリーの舞台となったイギリス サウス・ヨークシャーにあるシェフィールド劇場にて開幕するや否や異例の大ヒットを記録。 同年にニューヨーク ブロードウェイと同じくミュージカルの聖地として知られるロンドン・ウェストエンドへの進出が決定し、 現在もロングラン上演を続けるのみならず、 イギリス全土の映画館でのライブ上映や映画化（日本公開予定あり）、 さらにイギリス最高峰の演劇賞 ローレンス・オリヴィエ賞に5部門でノミネート。
公開稽古はWキャストは、森崎ウィン 田村芽実 佐藤流司 吉野圭吾 泉見洋平 樋口麻美で観劇。
始業のベルが鳴る。学校のシーン、「静かに！！」とミス・ヘッジ先生（樋口麻美）、真面目そう。先生は「何になりたいの？」といい、生徒たちは「わかりません」。しかし、ジェイミー（森崎ウィン）は「僕が本当になりたいのはドラァグクィーン」と…心の声。先生に尋ねられるジェイミー「パフォーマー？」。爪にマニキュア、内股で座る。誕生日、飾り付けに余念がない母親のマーガレット（安蘭けい）とレイ（保坂知寿）。
母は息子の誕生日に赤いピンヒールの靴をプレゼント、目を輝かせるジェイミー。マーガレットとレイはジェイミーの良き理解者。早速、履いてみる。テンションが上がるジェイミー、ここで歌われるナンバーは、作品の核となる内容。”越えられるのは自分だけ”、”視線の先へ先へ”。目の前に壁が立ちはだかっても、それを越えることができるのは自分自身だけ、他の誰かではない。ジェイミーはクラスのプリティ（田村芽実）にドラァグクィーンになりたいことを打ち明ける。また、高校のプロムに本来の“自分らしい”服装で参加したいと。プリティはケンブリッジ大学に進学して医者になるという夢を持った、イスラム系の頭の良い女の子、ジェイミーの親友だ。「自分の生き方を全うするのに許可なんかいらない」と歌うナンバーもまた、秀逸。そんな彼女の言葉に後押しされるジェイミー、「一番素敵なドレスを着る！」と。
ジェイミーには良き理解者がいる、だが、そうでない者もいる。眉間にしわを寄せ、何かと突っかかっていくディーン・パクストン（佐藤流司）。ジェイミーの夢が理解できない父（今井清隆）、学校の保護者からの苦情、それでもジェイミーは夢に向かっていく、というのがだいたいの流れ。
「LGBTQ+」という言葉、ちょうどオリンピックでも、この話題が持ち上がったが、この 「LGBTQ+」、ジェイミーはありのままの自分でいたい、その具体的な目標が”ドラァグクィーンになりたい”。ミス・ヘッジ先生は「苦情がきています」といい、ジェイミーを快く思っていないクラスメート・ディーンは「気持ち悪いんだよ！」とイラついた声で言う。
２幕では傷ついたジェイミーの姿が描かれる。自分らしく生きることの難しさ、母は「ママの宝物」と歌う。もちろん、バッドエンドにはならない。だが、そこに至るまでの過程、自分の人生を生きることはたやすいことではない。そしてジェイミーと母・マーガレットに見る親子の心のつながり。
そんな姿をミュージカルナンバーで綴る。皆、歌唱力が高く、若手俳優陣のダンスの群舞は元気いっぱい。また、舞台転換は若手俳優陣が担うが、テンポよく行い、見ていて小気味よい。ジェイミー役の森崎ウィン、母親思いで自分の生きる道に突き進んでいく主人公を熱演。安蘭けいと保坂知寿の安定したコンビぶり、また、石川禅が温かい雰囲気で、見ていてホッとするような空気感。佐藤流司は出番は少なめだが、ジェイミーと対峙する時は寂しさを滲ませて好演。
また、ドラァグクィーントリオが！パワー炸裂！そのエネルギッシュ、かつ一度見たら忘れられない存在感は必見！ラストシーンは文句なく楽しい。ジェイミーの考え、将来のこと、自分の生き方、それは自分自身で決める！！
２幕ものだが、あっという間。キャッチーなミュージカルナンバーで、楽しく！！
＜集合写真（撮影：田中亜紀）＞
＜キャストコメント＞
Q：初日の気持ちは？
森崎：ほっとしている部分もありつつ、緊張感が高まっていて、カンパニーが今、すごく１つになっているので、このまま引き締まっていきたいと思います。
髙橋：もう1チームを観ることができるので、勇気をもらってやれそうです。初日から全力でやります。
安蘭：本当に幕があくんだと思ってワクワクしています。今は出来る状況じゃないけど、乾杯したい気分です。二人を見守りたいと思います。
Q：配役決定から稽古をへて、今までで印象に残っていることは？
森崎：ずっとマスクをしながら稽古をしていて、本番で、マスクをとって、みんなの顔を初めて全部みたので、ドキドキしてしまいました。
髙橋：演出家が稽古中、りんごを丸かじりしている姿が印象的でした。かわいかったです。
安蘭：なんといっても演出家が印象的。リモートで初めて会った時は、興奮して画面の向こうから叫んで、はみだしていましたし、こっちに来てくださってからも目の前で全力で指導してくれました。いつも全力で、かわいいなと思ってみていました。誰よりも無邪気でした。
Q：自分らしい生き方をしていくのに必要だと思ったのものはありますか？
森崎：飛行機のフライトシミュレーターのゲームをやることです。飛行機が大好きです。
髙橋：たいやきが好きです。くりこ庵が大好き。池袋にも店舗があります。生地がふわっふわで、分厚いホットケーキかなというような生地なのに、表面がカリッカリなんです！
安蘭：猫！猫が大好きで、おうちに帰って、みるだけで、癒やされます。本来の自分に戻っていると感じます。
Q：お客様へのメッセージを。
森崎ウィン(ジェイミー Wキャスト)
作品をとおして、お越しいただいた方の背中をおせるような作品でありたいです。お客様と一緒に成長していきたいですし、そうできると信じています。安全対策は万全に、心よりお待ちしております。
髙橋颯(ジェイミー Wキャスト)
ここまでたくさんの方に、すごく見守ってもらって、支えてもらってきました。ジェイミーとして、やっと舞台にたてるので、お芝居でしっかり返せるように、感謝の気持ちをお客さんに届けられたらと思います。
安蘭けい(マーガレット)
とにかく、パワーがあふれる作品です。みんなそれぞれが、ジェイミーの気持ちになって癒やされて帰っていただけると思います。二人とも、全く違ったジェイミーで、すごく素敵なので、ぜひお越しください。
＜公演概要＞
ミュージカル『ジェイミー』
[スタッフ]
音楽：ダン・ギレスピー・セルズ
作：トム・マックレー
[キャスト]
ジェイミー・ニュー：森崎ウィン/髙橋颯(WATWING)
マーガレット・ニュー：安蘭けい
プリティ：田村芽実/山口乃々華
ディーン・パクストン：佐藤流司/矢部昌暉(DISH//)
ファティマ：伊藤かの子
ミッキー：太田将熙
サイード：川原一馬
サイ：小西詠斗
ベックス：鈴木瑛美子
ヴィッキー：田野優花
ベッカ：フランク莉奈
リーバイ：MAOTO
（五十音順）
ミス・ヘッジ：樋口麻美
ミス・ヘッジ(女性役U/S)：実咲凜音
トレイ,ライカ(男性役U/S)：永野亮比己
※U/Sアンダースタディ
ライカ・バージン：泉見洋平
トレイ・ソフィスティケイ(ヒューゴ/ロコシャネル役カバー)：吉野圭吾
レイ：保坂知寿
ジェイミー父/サンドラ・ボロック：今井清隆
ヒューゴ/ロコシャネル：石川 禅
学生役SWING：
亀井照三
笹尾ヒロト
佐藤みなみ
山村菜海
※本公演は一部配役Ｗキャスト。
[東京公演]
期間：2021年8月8日(日)～29日(日)
会場：東京建物Brillia HALL
問合：ホリプロチケットセンター 03-3490-4949（平日11:00～18:00 土日祝 休）
主催：フジテレビジョン/ホリプロ/TOKYO FM/キョードーファクトリー
企画制作：ホリプロ
後援：ブリティッシュ・カウンシル
[大阪公演]
期間：2021年9月4日(土)～12日(日)
会場：新歌舞伎座
主催：新歌舞伎座
問合： https://shinkabukiza.co.jp/
TEL：新歌舞伎座テレホン予約センター 06-7730-2222（10:00～16:00）
[愛知公演]
期間：2021年9月25日(土)・26日(日)
会場：愛知県芸術劇場 大ホール
主催：キョードー東海
問合：キョードー東海
TEL：052-972-7466（10:00～19:00 日・祝休）
