社会主義体制下のやるせない愛と人生を描いたドイツ発の同時代戯曲がついに開幕!人類にとって普遍的なテーマである「愛」を通し、現実への反発と許容をより明晰に!
<コメント>
★翻訳・演出:小山ゆうな
皆で、お客様の想像力を信じ切ったカーターの戯曲と向き合いながら、どういう作品になるかはお客様と共有するまでわから ないねと、稽古してきました。
まだまだ制約の多い状況下ではありますが、満席の初日、目一杯舞台にエネルギーを送って観劇してくださったお客様、あり がとうございました。
出ずっぱりの浦井さんを始めキャスト7人と国広さん、全力で支 えてくださるスタッフの皆さんにも感謝。沢山の方に観ていただき、沢山感想をいただきたい作品です。
★音楽・演奏:国広和毅
初日が無事に開けました。長い時間かけて準備してきた作品を こうしてお見せできるというのは嬉しいです。
楽しいと深いを行ったり来たりする作品です。勿論、人によって はそのどちらかのみでも OK です。初日の僕に関しては楽しいが 大分勝ってしまいました。少し反省。
でもそんな風に公演毎に違ったものになるのが生の舞台の醍醐味です。特に今回は生演奏があります。生の芝居と生の音楽との コラボレーションを是非お楽しみください。
★浦井健治
出演者一人一人が自分の果たすべき役割や、役柄の背景を徹 底的に落とし込んで挑まないと成立しない戯曲。演出の小山さんと日々、役柄や時代背景について話し合い、創り上げてきたものを、お客様が好奇心を持って受け止めてくださったように 感じました。
亡き中嶋しゅうさんが生前かけてくださった「トラムのような濃 密な空間での舞台をどんどん経験していくといいよ」という言 葉は、僕にとって大切なもの。「今、トラムの舞台に立っていま すよ」と心の中で呼びかけながら演じていました。しゅうさんに も、この想いが届いていたらいいなと思います。
登場人物全員が、どこかしら鬱屈や諦め、もの悲しさを抱えて います。作者であるフリッツ・カーターさんの体験も含まれてい るであろうナイーブな題材が背景の、ある意味「壁」のようなし こりを持つ作品でもあります。
世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎さんは、稽古場 にいらした時、「とんがってください」とおっしゃいました。「とんがる」ことは、演劇のトライの一つだと思います。実験的な演劇に適 したシアタートラムという空間で、お客様が自由に解釈してこの作品を楽しんでいただけるよう、演じていきたいと思います。
★前田旺志郎
無事初日の幕が開き、今、本当にホッとしています。とても緊張し ていたのですが、やっと、「あぁ、始まったな」という思いと、とりあ えずは無事、大きなミスなく初日の公演を終えられてよかったな という思いです。
初めてご覧になる方は、ショックを受けるといいますか、びっくり される方も多いと思うんですけれども、戯曲はもちろん、小山さ んが考案した各部のコンセプトや演出ですごく攻めた作品になっ ていると思います。スピーディーな展開にもし追いつけなかった としても、僕たち 7 人は舞台上ですごく楽しんで演じていますの で、その空気感だけでも、観客席の皆さまも一緒に楽しんでいた だけたら嬉しいです。
★小柳友
無事に初日の幕が開けられて、本当によかったです。お客様から リアクションをいただくだけで、心ってこんなに落ち着くんだって 感じました。すごく楽しかったです。
僕にとってシアタートラムといえば上村聡史さん演出の“約束の
血”シリーズ『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』なのですが、今回は初めましての小山さんの演出で、新しい出会いもたくさんありま
した。笑顔が溢れる稽古場で、カンパニーの仲間たちと一緒に芝 居作りにたくさんの時間を費やして、創作の楽しさを共有すること が出来た気がしています。
まだ予断を許さない状況ですが、僕らは万全を期して、皆さまに 安全で安心して観に来ていただけるよう、しっかり準備しています。ぜひ劇場にお越しいただき、舞台を楽しんでください。
★篠山輝信
決して分かり易い作品ではないと思うのですが、1部・2部・3部と 舞台が進行していくうちに、最初はハテナだったお客さまが、まず 物語の筋を理解するだけではなく、作品の雰囲気を感じてくださ り、徐々に理解を深めたり楽しんだり……。じわじわと何かが積 み重なっていくように、お客さまの体温が上がっていく様子が伝 わってくる感覚がありました。最後には劇場に一体感が生まれ て、それぞれに感じて楽しんでくださったのだという手応えを得る ことができ、とても嬉しかったです。
それはこのシアタートラムという劇場で、この座組で、お客さまを 信頼したうえで楽しませたいというサービス精神に溢れた小山さ んの演出ならではだと思いました。演劇の楽しさや幸せがいっぱ い詰まっている作品です。是非観に来てもらいたいです。
★岡本夏美
本当に楽しかったです。コロナ禍が続いてきた中で、ようやく観 客席がいっぱいのお客様で埋まっている状態を久々に舞台上 から見て、その光景をすごく幸せに感じました。お客様の存在、 その笑い声も含めてやっと完成したといいますか、お客さんの 反応を受けて私たちも稽古以上に出せるものがあり、相乗効 果でとても楽しかったです。
今日もシアタートラムの外の看板を写真に撮って楽屋に入った のですが、小山さんの『チック』もこの劇場で拝見しましたし、そ のほか数々の作品を観てきて、やっぱりこの舞台に立ちたいな とずっと思ってきました。一つ、自分が目標に掲げていたことが 達成できた喜びもありますし、何より無事に幕が開いたことが とても嬉しいです。
現状、我慢しないといけないこともありますが、その中でも演劇 を観ていただくことで日々の辛いことを忘れたり、一緒に何かを考えたりと、この舞台が皆様の日常のちょっとした刺激になればいいなと思っています。
★山﨑薫
この状況下、満員のお客様と初日を迎えられましたこと、心から 感謝いたします。この作品から溢れ出す言葉と滲み出る音楽に ただただ身を任せて頂けたらと思います。その時に感じた空気や 違和感が、自分の大切な人や物語あるいは世界に想いを馳せる きっかけになれば幸いです。
行き場を失ってしまった「愛」をお客様と共に感じ合えたらと思っ ています。油断できない状況ですが、私共万全の対策で千穐楽まで駆け抜けて参ります。
★高岡早紀
ここまで、客席と舞台とが近い劇場空間で演技をしたのは初めてで す。とても緊張もしましたが、お客様が温かく見守ってくださり、時にはコミュニケーションもしながら、この距離感ならではの反応を肌で感じ、楽しく初日公演を終えることができました。
この戯曲は句読点、ト書きなどがほとんどありません。「決めごとは何もありません」という小山さんの演出のもと、濃密な稽古を重ね、共に試行錯誤して創り上げてきました。決めごとがないだけに、新たな 体験ができていると感じています。私自身も知らない新しい私の一 面をお見せできるのではないかと思います。
この物語に登場するのは、東西にドイツが分断され、抑圧されながら も悲観せず、前向きに強く生きている人々。その姿から私が感じたこ とは、人が生きること、それは「愛」だということです。お客様一人一 人にとっての「愛」を、この物語を通して改めて感じていただければ 幸いです。
<物語>
第1部
東西統一前の東ベルリン。典型的な社会主義国の若者たちの他愛のない日常が描かれる。青 春の悩みは壁のこちら側でもあちら側でも同じ。生きること、愛することの葛藤と悩みはつきない。 そして青春時代は瞬く間に過ぎていく。
第2部
父親が妻とまだ小さな子供たちを残して西側へ逃亡してしまったとある家族。月日は経ち 10 代後半に成長した2人の息子は母親と 3 人で東側で暮らしている。かつての反体制派の英雄ブロイア ーおじさんが刑務所から出てきたが、今となっては「目立つな、英雄を気取るな、列に並んでみんな と一緒に行動しろ」というのが若者たちへの助言だ。昔の輝きはまったく無い。だがブロイアーは母 親と急接近していく。兄弟の間に一人の女性が現れる。弟は彼女に夢中になるが、気づくと彼女は兄 の彼女になっていた。彼らは恋と失恋をたくさん繰り返しながら、ままならない日常の中で大人に近 づいていく。母親とブロイアーの関係はまだ続いていた。そしてある日……。
第3部
妻子ある男は、仕事のためにある土地に移り住み一人暮らしを始めたが、これといってかわ りばえのない日々を過ごしていた。しかし彼は食堂で働く女性と出会ってしまった。男と女はあっと いう間に恋愛関係に陥る。二人は旅行にも行って、喧嘩もして、そして仲直りもする。とうとう男は 妻子と別れる決心をした。だが彼女は……
<公演概要>
『愛するとき 死するとき』
【日程・会場】
2021年11月 14日(日)~12月5日(日) シアタートラム
2021年12月8日(水)日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
2021年12月11日(土)~12月12日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【作】フリッツ・カーター
【翻訳・演出】小山ゆうな
【音楽・演奏】国広和毅 【美術】乘峯雅寛 【照明】佐藤啓 【音響】尾崎弘征 【衣裳】半田悦子 【ヘアメイク】林みゆき 【振付】田井中智子 【演出助手】高嶋柚衣 【舞台監督】澁谷壽久
【宣伝美術】秋澤一彰 【宣伝写真】牧野智晃 【宣伝ヘアメイク】松橋亜紀【宣伝スタイリスト】立山功
【宣伝衣裳】CINOH Room no.8 JUN OKAMOTO EMMA CLOTHES MONO-MART
【出演】 浦井健治 /
前田旺志郎 小柳友 篠山輝信 /
岡本夏美 山﨑薫 /
高岡早紀
▼『愛するとき 死するとき』ホームページ
https://setagaya-pt.jp/performances/202111aisurutoki.html
【主催】公益財団法人せたがや文化財団 【企画制作】世田谷パブリックシアター 【後援】世田谷区
撮影:牧野智晃