韓国で大ヒットしているMusical『天使について〜堕落天使編〜』が日本人キャストによって初上演される。
天才芸術家と歴史的芸術作品の誕生と出会いに隠された秘密に迫る。作品の創作に苦しむレオナルド・ダ・ヴィンチの元に降臨した新米天使のルカと堕天使のヴァレンティノ、そしてダ・ヴィンチを支える弟子のジャコモ。2人の天使と2人の人間が絡み合い巻き起こる騒動を描く。2016年に韓国で初演、その奇抜な発想、絶妙な脚本の構造、インパクトのある楽曲で、開幕後すぐに話題になり、2018年上演、その後2021年11月2日に3度目が開幕、2022年1月30日までロングラン。
堕天使のヴァレンティノは、かつて一番神に愛された美しい天使だった。しかし、人間を愛してしまい、禁じられた恋に落ち、神の怒りをかってしまい、堕天使になってしまった。新米天使のルカは特別な才能を与えられた芸術家たちを管理する任務を務める真面目な天使。意欲に満ちているが、の邪魔に頭を抱えている。
ヴァレンティノ、ルカ、ダ・ヴィンチ、ジャコモ、この4人をたった2人の俳優が演じる。ゲネプロでは堕落天使役はRIKU(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)、新米天使役は鍵本輝(Lead)。前説のアナウンスはヴァレンティノ、ルカが行う。また、リングライトを使った観客参加場面もあるので!丁寧に説明してくれるので、早めに席についておいた方がよいかも。
出だし、新米天使・ルカが「天使を見たことがありますか?」と客席に向かって問いかける。そしてすぐに楽曲、ノリのいいナンバー、「世界彷徨うANGEL」、天使・ルカは探している、神に選ばれた芸術家を。ここはミラノ、時は1495年。祈りの声を聞くルカは早速そこへ降りる、天使につきものの羽がない、ルカ曰く「メンテが大変」、思わずクスリと笑う場面。猫のようにしなやかに地上へと降り立つ。一応、確認、「お前は絵描きか?」と。さらに「助けて欲しいか」とも聞く。2つの問いかけに”Yes”。ついに見つけた、天才画家を!!と喜んだのも束の間、ダ・ヴィンチだと思ってた男は…弟子のジャコモだった。「僕は負けない!」とルカが歌うも、虚空からヴァレンティノの嘲笑い声が(笑)。彼は堕天使、早い話がルカの邪魔をするポジション。ルカの勘違い、早とちり、ここから本格的に物語が動き出す。
とにかくセリフより歌が多い印象、楽曲も多彩、歌い上げる曲もあり、また、ノリノリになれる曲もあり、音楽だけを聴いていても全く飽きないどころか、繰り返し聴いてみたくなるものばかり。ジャコモは驚く、しかも誰も天使は見たことがない、「天使を見た」と言っても当然、誰も信じない、信じないどころか”頭おかしくなった?”と思われる始末。そして当のダ・ヴィンチは…彼も天使を見たと歌う、しかも”イケメン”(笑)と。ただ、二人が見た天使は別々、ジャコモが見たのは新米天使ルカ、ダ・ヴィンチが見たのは堕天使・ヴァレンティノ。この作品、ルカ役はダ・ヴィンチを演じ、ヴァレンティノ役はジャコモを演じる。ジャコモにはヴァレンティノが見えない、ダ・ヴィンチにはルカが見えないという設定、ここはポイント。キャラの演じ分け、ここは稽古の成果か、鮮やか。そして1幕と2幕の違い、1幕は”ルカ”サイド、2幕は”ヴァレンティノ”サイド、ちょうど表裏一体な関係、ヴァレンティノは言う「あいつのことが好きだから」そして初めてルカに会った時、ルカは天使ではなく白い小鳥だったと言う。また堕天使になった理由もここで明かされる。そして絵を描くことについてのダ・ヴィンチの気持ち、ジャコモのことも歌の中で明かされる。最後に第3部、そしてラストは現代の美術館。
ヴァレンティノに邪魔されたくないと肩肘張るルカ、笑いながら、そんなルカの相手をするヴァレンティノ、一応、敵対関係だが、ヴァレンティノはルカのことを”可愛い奴”と思っており、その愛が随所に感じられる。対するルカも心底、ヴァレンティノが嫌い、と言うわけではなさそう(自分で気がついているかどうかは別として)。そんな二人の関係は愛おしく、また微笑ましく、見ている方も気持ちが温かくなれる。また、ご機嫌なダンス!の楽曲、「フレスコ(Fresco)」、ルカとジャコモの二人が歌う。このフレスコ、14世紀から16世紀にかけて流行った技法、ミケランジェロやラファエロなどが好んで使った技法。しかし、途中でジャコモが思い出したように「そういえばフレスコじゃないって。テンペラでいくって」と言う。テンペラとは、ラテン語で”混ぜ合わせる”と言う意味。テンペラ画は保存状態が良ければ現代でも色鮮やか。
レオナルド・ダ・ヴィンチは『最後の晩餐』でテンペラを使用。そして時折、プロジェクション・マッピングでこの絵が出てくる。そしてダ・ヴィンチ、ジャコモのそれぞれの想い、ダ・ヴィンチのあの絵画の”秘密”、彼ら4人の織りなす”愛”、最後の楽曲は最初の曲のリピート、楽曲は全部で23曲。二人で歌うシーンも多く、そこで心情や状況をグッと圧縮して見せる。トリプルキャスト、キャラクターの”のりしろ”部分が大きく、役者のカラーによって少しずつ違った景色も見えてくる。構成も巧み、大ヒットしているのも頷ける。
公開ゲネプロの後、取材会が行われた。登壇したのは、RIKU(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)、古谷大和、鍵本輝(Lead)、中村太郎、石井一彰。皆、衣装を着用、同じ役でも衣装が微妙に違い、それぞれの個性が見える。
ゲネプロで熱演した鍵本輝は「正直初日迎えたくないですね(笑)。2人だけでやるのは僕も20年芸能活動をやっていますが初めてなので、自分にできるのか不安なところもありました。でもやってきたことは間違いないですし、稽古で積み重ねてきたものを信じて初日に挑みたいです」とこのミュージカルの難易度を気にしている発言だが、しょっぱなから4曲熱唱、稽古の成果を見せてくれた。RIKUも「大変な稽古期間でした。(しかし)大きな事故もなく、初日を迎えられます。ゲネプロも皆さんの前で披露できたことで、まず自分自身を褒めてもいいのかなと。初めてを言い訳にせずに皆さんから稽古のときにいただいたものを遺憾なくしっかり発揮したいと思っています」と語る。1ヶ月以上に及ぶ稽古期間、その濃密さが窺える。古谷大和は「魅力だらけ!同じ台本で同じ役なのにまったく違うお話に感じるくらいに違う味に。次の日には違う味になって、またその次の日には違う味に。新鮮な気持ちでやれますし、毎回慣れることなくたゆむことなく刺激のある本番になると。組み替えもあり、そういうところが魅力です」とトリプルキャストならではの見どころを語る。組み合わせも多彩、どの回も魅力的だ。それを受けて中村太郎は「同じ意見です」と言い「アーティストやってる方もいてミュージカル経験者もいていろんな分野で頑張っている人たちがこの時期に集まれて!」とコメント。石井一彰は注目ポイントについて「ルカの登場シーン」と語る。しょっぱなから4曲、一人で歌う。ここはかなりプレッシャーな”時間”。だが、ここで”つかみはOK”。また、舞台、高さが”三重”、その一番高いところでヴァレンティノが歌うシーンがあり、「ヴァレンティノ役のキャストは最初ジャコモでかわいらしい姿を見せて、それからヴァレンティノとしてクールかつセクシーに登場、そこが魅力です」とさらに見どころを石井一彰が言及。
また、リングライトを振る、いわゆる”観客参加”場面についてRIKUは「コロナじゃなければ”Yeah!!”って一緒に楽しめるシーンですが、(コロナ禍なので、お客様と)一緒に作れるかな?と言うアイディアです」と明かす。鍵本輝は「リングライトは経験したことがないです」と言い本番を楽しみにしている様子。さらに「バンダナはお弁当を包んだりもできる便利なアイテムですし、形が残るものですからおうちに帰ったあともどこかに飾っていただけたら嬉しい」と語る。一同「観るだけじゃなくってね!」と観客参加を呼びかけた。RIKUは「作品のメッセージを伝えたい、”愛はどういうものなのか”、”新しい一歩を踏み出すこと”を」とコメント。鍵本輝も「得意不得意はありますが、みんなで一つずつ固めていった稽古、絵画より綺麗なカンパニーです。頑張っていきたいと思います」と語る。ゲネプロで大汗かいての熱演、歌唱シーンごとに客席から拍手もあった稽古。
また、RIKUに”本格ミュージカルといつもの活動との違い”についての質問がでた。ミュージカルはただカッコよく綺麗に歌えればいいというわけではない。「歌には各キャラクターの想いがあり、それを伝えていく。歌う表現、ミュージカルはいつもの活動とは違います。新たなものが生まれました」といい、また、ルカについては「おっちょこちょいなんだな、と想像がつく。ヴァレンティノは優しさの塊」と分析。さらに鍵本輝が「RIKUくんは安定感があって安心していられる、セリフ飛ばない!完璧じゃん!」と大絶賛。さらに中村太郎も「”お芝居、まだまだなんです〜”って言ってて(笑)、熱い!成長がすごい!」と言い、それをさらに石井一彰が「歌、日本一、うまいんじゃないかと」とさらに絶賛、鍵本輝も「お芝居に対する情熱が!”こうしたら楽しい”と実践して教えてくれる」とさらに。RIKU、「始まる前に救心を3粒飲んだ」というが(笑)。仲がよく、チームワークもバッチリのカンパニー。
なお、ticketbook/Huluでの生配信が決定、詳細は公式HPを。
<トーク記事>
https://theatertainment.jp/translated-drama/97255/
<概要>
公演タイトル : Musical『天使について〜堕落天使編〜』
日程・会場 : 2022年2月24日(木)〜3月6日(日) 自由劇場 18回公演
作/作詞:イ・ヒジュン
作曲:イ・アラム
[キャスト(登場人物)]
※二人芝居/トリプルキャスト編成
【堕落天使 : ヴァレンティノ役】
・RIKU (THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)
・古谷大和
・鈴木勝吾
【天使 : ルカ役】
・鍵本 輝 (Lead)
・中村太郎
・石井一彰
[スタッフ]
日本版台本/演出:田尾下 哲
日本語翻訳 / 訳詞:安田佑子
音楽監督:宮﨑 誠
振付:石岡貢二郎(K-Dance Nexus)
歌唱指導 : 今泉りえ
アシスタントプロデューサー : 津幡未来
プロデューサー:石津美奈
エグゼクティブプロデューサー : 家村昌典
主催/企画/制作 : LDH JAPAN
公式HP:http://musical-tenshi.jp